愛と欲望が交差し、誘惑と嫉妬が加速する、セレブたちのヴァカンスの物語「胸騒ぎのシチリア」が1月19日(土)より日本でついに公開された!
今回は、「胸騒ぎのシチリア」を楽しんでいただくために、作品に対する監督の思いや作品が仕上がるに当たっての裏話を特別に教えよう。

“欲望”を追求した、名作『太陽が知っている』の現代版

『ミラノ、愛に生きる』を観て、ルカ・グァダニーノ監督の才能に惚れ込んだ映画製作会社のスタジオカナルは、彼を自社で権利を持っていた1969年の映画『太陽が知っている』のリメイク版の監督に起用する。

画像: ルカ・グァダニーノ監督 © 2015 FRENESY FILM COMPANY. ALL RIGHTS RESERVED

ルカ・グァダニーノ監督
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アラン・ドロン、ロミー・シュナイダー、ジェーン・バーキンといった錚々たる顔ぶれが出演し、ジャック・ドレーが監督したこの映画のどこに興味を引かれたか、グァダニーノ監督はこう語る。

「欲望が、人と人との間にどの様な影響を与え、どんな駆け引きやトラブルを引き起こすのか‥という点に興味が湧いた。欲望は過大評価するか軽視するかによって、破壊的な力にも、実りの多い創意に富んだ力にもなり得るのだ」

グァダニーノ監督の推薦を受けて、脚本はアメリカ人のデヴィッド・カイガニックが担当した。カイガニックと監督は、二つの世代の対立を盛り込みたいと考えた。

「もう存在しない20世紀末のロックンロールの世界と、今日の私たちを支配している新しい保守的な時代の溝を描くことを思いついた。登場人物たちが個人的に衝突するだけでなく、より大きな世代間の対立も描きたかったんだ。人生を強引に楽しもうとするロックンロール世代と、安全に生き延びようとする世代の衝突だ」とグァダニーノ監督は説明する。

多様な価値観の衝突
変わろうとする女と、過去に囚われた男

レイフ・ファインズ演じるハリーは、快楽に浸る男として描かれており、破滅的な振る舞いを繰り返しながら、主人公たちの過去を呼び戻すキーパーソンでもある。

監督は、ハリーとポールの役柄についてこう語る。

「ハリーように人生を大いに楽しもうぜ!と誘いかけてくる人間がいると、ある種の空虚さと憤りを感じる正反対の人物が現れるもの。劇中では、マティアス・スーナールツが演じる、ポールがその役割で、楽しまなければいけないという強迫観念から、その場にいるのが耐え難くなり、やがてハリーに牙を剥くことになる」

一方で、ハリーの娘と名乗るペンは、自分には理解できない価値観を持つ大人たちのやりとりを、距離をおいて観察しながら、せせら笑っている。全く考えの読めない異邦人のようなペンの存在は、やがてマリアンの心を掻き乱してゆく。

マリアンは、ハリーと恋仲だった頃は、彼に近しい刺激的な価値観を持っていたようだが、別れてからは自分自身の変化や再生を切実に願っていた。ところが過去に囚われたハリーは、彼女の自立を受け入れず、むしろ自分のもとへ強引に呼び戻そうとする。

「マリアンが、ラストの衝撃的な事件を乗り越えられたのは、前に進む為にハリーを追い払わなければならないという、彼女の本脳が働いたのではないか」と監督は語る。

画像: 相関図 © 2015 FRENESY FILM COMPANY. ALL RIGHTS RESERVED

相関図
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自ら“声を失くす”というアイディアは、主演女優ティルダが提案したものだった!

グァダニーノ監督とティルダ・スウィントンの親交は20年以上になる。彼女を主役に選んだことについて、グァダニーノ監督はこう説明する。

「ティルダと一緒に仕事をするというのは、役者を演出するということではなく、映画制作者と組むということになる。コラボレーションをする時は、いつもそういったものを求めている」

マリアンが話せないというのは、ティルダのアイデアだ。

「台詞で全てを語るのは好きじゃないわ。伝えようとして失敗したり、言葉のないコミュニケーションこそ、そそられる」とティルダは語る。ハリーが周りの人間を巻き込む“言葉の海”で、マリアンだけは言葉のゲームに参加してはならないというルールが、物語を面白い展開へ導くこととなる。「その発想は、映画制作の中でもレベルの高い一例だと思う」とグァダニーノ監督は称賛する。

また、最初は映画女優だった設定を、ロック・スターに変えたのもティルダのアイディアだ。ティルダはその後、映画では描かれていないマリアンのロック歌手になるまでの人生を考えてから撮影に臨んだ。

監督が発掘したレイフ・ファインズの隠れた資質

ハリー役にレイフ・ファインズを熱望したのは、グァダニーノ監督だった。「自分で映画を撮るずっと前から、レイフ・ファインズと映画を制作するという構想を練っていた。ティルダともね。だから、これはまさにドリームチームなんだ」

レイフは今まで、憂うつで暗いエネルギーを持った、心に葛藤のある人物や、ロマンティックな役柄を演じてきた。しかし、ウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブダペスト・ホテル』の予告編を見た時に、閃いたとグァダニーノ監督は振り返る。

「レイフが、図々しくて皮肉たっぷりで軽い人物を演じているのを見て驚いた。彼にはハリーに近いものがあるのを強く感じた。私にとって役者を選ぶというのは、演技ではなく登場人物の中に役者の要素を見つけ、役者の中に登場人物の要素を見つけることだ」

脚本の説得力に感銘を受けて出演を決めたというレイフは、グァダニーノ監督に「是非この役をやりたい。この人物をよく知っているような気がするんだ」と語ったという。

振付師と創り上げた、魂の自由を表現するダンスシーン

脚本の「ハリーが踊る。彼はダンスがうまい」というト書きを見たレイフは、彼が「偉大な女性」と称賛する、振付師のアン・イーに相談した。

「アンはダンサーではない人間に教えるのがうまい。心と身体を解放して、ダンスに間違いなんてない、どんな動きでも構わないと思わせてくれるんだ。そういう意味で、あのダンスは彼女がいなければできなかったね。今回は実際に現場に隠したスピーカーから「エモーショナル・レスキュー」を流して聴くことができた。それは素晴らしかったよ。太陽が照り付ける家の屋上で、ストーンズを大音量で流しながら、ダンスをしたいと誰しも思うんじゃないかな(笑)」とレイフは振り返る。

ハリーが踊り狂う姿は、一見滑稽に見えるのだが、“手放した女性をもう一度自分のものにしたいが、既に手遅れで、子供のように泣いてやる”という「エモーショナル・レスキュー」の歌詞は、マリアンへの切ない想いを表している。後に彼が事件に巻き込まれた際に、不思議とプールに沈んでいるのも、彼の分身とも言うべき「エモーショナル・レスキュー」のレコードだった。

画像: © 2015 FRENESY FILM COMPANY. ALL RIGHTS RESERVED

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ザ・ローリング・ストーンズの協力

パンテッレリーア島とロックを映画の柱にしようと考えたグァダニーノ監督は、ローマで彼らがコンサートをやっていると聞きつけて会いに行き、ロン・ウッドとチャーリー・ワッツに会うことに成功した。「彼らは洗練されていて感じがよく、私たちに助言をくれた。例えば、ストーンズのアルバム『Voodoo Lounge』からの『Moon is Up』という曲を作るにあたって、ゴミ箱を楽器にして録音したという裏話を教えてくれたんだ。これにより、ハリーをストーンズの歴史の一部に組み込む事ができた」と監督は語る。
こうして、ザ・ローリング・ストーンズの歴史の事実に根差しながら、ハリーのキャラクター像が構築され、物語が肉付けされていった。

世界遺産の島、パンテッレリーアでのロケ撮影

舞台のパンテッレリーア島で、実際に撮影することを強く望んだのは、グァダニーノ監督だ。彼は「ありふれたリゾート地や別荘ではなく、他人同士であることの危険な感覚や、登場人物の衝突をもう一段階進めるような、生まれ持った危機感や本能が剥き出しになるような場所にしたかった」と説明する。

島の市長が全面的な協力を決断し、大々的な撮影が実現した。ユネスコの世界遺産に登録されたこの島は、シチリア島とチュニジアの間にある岩に覆われた火山島で、常にあらゆる方向から風が吹いている。

「暴風が吹き荒れる中での撮影には、しばしば困難がつきまとった。コミュニケーションは途絶えるし、交通は制限された」とレイフは振り返る。

彼らが泊まる別荘は、実物の家だ。少しだけ手を加えて部屋を足し、実際より広く見せている。また、ヴェネチア国際映画祭で完成した映画を観た市長は、その時の感想をこう語る。

「非常に誇らしい気持ちになりました。この映画の話が出た時、リスクを覚悟しました。しかしながら、島の全ての魅力がはっきりと力強く描かれていると、改めて確信しました」

地中海の魂、そして愛と憎しみという色あせない永遠のコントラスト、美と野生、人間の感情、そういったもの全てが、ロケーションとストーリー、キャストによって完璧に描き出された。

監督:ルカ・グァダニーノ『ミラノ、愛に生きる』
ティルダ・スウィントン『フィクサー』/ダコタ・ジョンソン『フィフティ・シェイズ・
オブ・グレイ』/レイフ・ファインズ『グランド・ブダペスト・ホテル』/マティアス・
スーナールツ『リリーのすべて』
2015年/イタリア・フランス/英語/125分/ビスタ/カラー/5.1ch/
原題:A Bigger
Splash/日本語字幕:石田泰子
配給:キノフィルムズ
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画像: sicily honyokoku11月公開HDサイズ youtu.be

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