カンヌ・レポート第7弾は日本人女性監督の平柳敦子をクローズアップ。ジョッシュ・ハートネット、寺島しのぶが共演した「オー・ルーシー!」を完成させ、カメラ・ドール(新人監督賞)に挑んでいる。今後注目すべき新たな才能かも知れない。
画像: 舞台挨拶するジョッシュ・ハートネット、左は寺島しのぶ

舞台挨拶するジョッシュ・ハートネット、左は寺島しのぶ

河瀬監督が「光」でパルムドールを、平柳敦子監督は「オー・ルーシー!」でカメラドール(新人監督賞)をそれぞれ狙って、ここカンヌ映画祭は後半戦にかけて、日本の女性監督による賞取りが熱を帯びてきた。

その平柳監督の「オー・ルーシー!」が批評家週間で5月22日に上映され、舞台挨拶に平柳監督と主演の寺島しのぶと共に壇上にジョッシュ・ハートネットが現れた。ハートネットといえば戦争ロマン大作「パール・ハーバー」で大スターとなり、「ブラックホーク・ダウン」やハリソン・フォードと共演した「ハリウッド的殺人事件」などでトップスター街道を歩んできた俳優。それが近年は第一線を退いた感じがしていた。なぜかなと考えると、元々彼は大手ハリウッドの娯楽作品より、インディーズのアート系などの個性的作品が好きなようで、現にそのような出演作が多い。そのハートネットがなぜ「オー・ルーシー!」に出演したのか。実はアメリカを拠点に活動する平柳監督が所属するプロダクションATAと同じだったためで、そこを通して脚本を読んでもらい出演の許諾を得たと監督が明かす。

画像: フランス語であいさつした寺島しのぶ、左は平柳監督

フランス語であいさつした寺島しのぶ、左は平柳監督

ハートネットの役は、43歳の独身OL役の寺島しのぶが通う英会話スクールの講師。寺島の姪役の忽那汐里と恋仲になり、彼の故郷であるロサンジェルスへ彼女と駆け落ちするのだ。そこへ会社を辞めた寺島が、好きになったハートネットに会いに、忽那の母で寺島の姉役の南果歩と一緒にやって来る。南&寺島姉妹が見つけたハートネットは別れた妻子がいたことがバレ、すでに忽那と別れ、家賃も払えずフーテンの毎日。そんな情けない男を演じているハートネットが、ある夜、お酒とドラッグの勢いで寺島と車中セックスしてしまうから大変。

画像: 平柳敦子監督

平柳敦子監督

この「オー・ルーシー!」は、3年前のカンヌのシネフォンダシオン部門で2位に輝いた短編「Oh Lucy!」の長編化というが、平柳監督にとっては元々長編のつもりだったのを短編に切り替えてスタートしたのだという。43歳の独身女性が英会話スクールで金髪のカツラを被り、ルーシーと名付けられて勉強していくうちに、次第に閉じ込めていた本心を解放していく姿を描いたもので、出来栄えがとてもいい。一瞬の希望に賭ける年増ヒロインを寺島が自然に演じているのだ。舞台挨拶では仏語で「平柳敦子監督の名前を憶えておいたほうがいい。彼女には素晴らしい未来と才能があるから」と監督を持ち上げた。ハートネットは「僕は仏語がしゃべれないので、英語で話します。観客の皆さんに観てもらえてうれしい。批評も楽しみにしています」と素直な挨拶に、彼の控えめな人柄を感じた。(岡田光由)

※前回のレポート掲載で同じ文章を重複してしまう間違いがありましたことをお詫びいたします。現在は修正したものが掲載されています。

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