第70回カンヌ国際映画祭が終幕。記念すべき年のパルムドールにはスウェーデン映画の「スクエア」が選ばれた。審査員長のペドロ・アルモドヴァル監督はほかに、ダイアン・クルーガー、ホアキン・フェニックス、ニコール・キッドマンといった人気スターに賞を贈り、華やかな夜を閉じた。
画像: パルムドールを受けた「スクエア」のリューベン・オストルンド監督

パルムドールを受けた「スクエア」のリューベン・オストルンド監督

5月17日から開催された第70回カンヌ国際映画祭は、28日の授賞式でパルムドールほか数々の賞を発表して閉幕した。今回の審査員長はスペインの異才ペドロ・アルモドバル監督で、ネットフリックス問題で対立をみせたウィル・スミスをはじめ、フランスの監督で女優のアグニス・ジャウイや韓国のパク・チャヌク監督ら一癖も二癖もある8人の審査員が、どう意見を交わし、パルムドールを選び出すのか大いに注目された。

その結果、パルムドールを受賞したのはスウェーデンのリューベン・オストルンド監督の「スクエア」だった。現代美術館の学芸員がケータイを紛失したことから始まるコメディーで、彼が企画するユニークでおかしな展示が見もの。そんな彼を通して現代アート界に生きるお高くとまった人たちを、辛辣にしかもユーモアを交えて描いたところがポイント。懸命に何事も取り組んでいるのに、どこかネジがゆるんでうまくいかないというゆるーいキャラクターも面白い。オストルンド監督にとっては長編4作目。14年のカンヌのある視点部門では「フレンチアルプスで起きたこと」で審査員賞を受賞している有望株。早くもパルムドールとは。しかも前評判の高かった「BMP(Beats Per Minute)」を押しのけての受賞に、ジャーナリストたちも驚いていた。

だがよく考えてみれば、いかにもアルモドバル・テイストの作品ではないかと思う。皮肉さ、ユーモア、辛辣さ。まさにアルモドバル好み。授賞式後の記者会見で、「とても現代性に富んでいる作品。イマジネーションに溢れ、面白くておぞましい」とアルモドバルが絶賛。さらになぜ「BMP…」がパルムドールではなくてグランプリだったことには、「この作品もみんな大好きだったが、民主的な投票で決めた」ときっぱり。

画像: 女優演技賞を受けたダイアン・クルーガー

女優演技賞を受けたダイアン・クルーガー

みんながパルムドールだと思っていた「BMP(Beats Per Minute)」は、90年代初めのエイズが猛威をふるっていたフランスで、対エイズの活動グループ“ACT UPパリ”で闘う同性愛者を含む若者たちを描いた青春群像劇。エイズに負けない、社会の偏見や権力に負けない若者たちの勇気ある行動が感動を呼んだ。

パルムドール、グランプリに続く賞の華は、女優演技賞。ファティ・アキン監督と組んだ「イン・ザ・フェイド」で、夫と子供を爆死させたナチグループに復讐するヒロインを体当たりで演じたダイアン・クルーガーが受賞。そして男優演技賞は、脚本賞も同時受賞したリン・ラムジー監督作「ユー・ワー・ネバー・リアリー・ヒア」のホアキン・フェニックス。湾岸戦争出征の傷跡を残し、FBI捜査官時代のトラウマもあり、今は闇世界で何でも請け負う男を繊細かつパワフルに演じて、納得の受賞だった。授賞式ではラムジー監督が脚本賞を受賞したため、自分はステージにあがることはないと踏んで、スニーカーに履き替えていたフェニックス。突然名前を呼ばれて、しばらく唖然とした表情を見せていた。いかにもやんちゃな彼らしいではないか。

最後に、河瀨直美監督の「光」は賞を逸した。それと先のレポートで今回の映画祭のミューズはニコール・キッドマンだと伝えたとおり、第70回記念賞が彼女に贈られたことは当然か。そしてすべてが終わった0時過ぎ、カンヌでは花火が賑やかに打ち上げられた。マンチェスターでのテロ事件を受けて中日の花火は中止だったが、最後の夜は華やかに締めくくった。(岡田光由)

画像: 脚本賞のリン・ラムジーと男優演技賞のホアキン・フェニックス

脚本賞のリン・ラムジーと男優演技賞のホアキン・フェニックス

■主な受賞一覧
<長編>
パルムドール 「スクエア」(リューベン・オストルンド監督)
グランプリ 「BMP(Beats Per Minute)」(ロバン・カンピョ監督)
監督賞 ソフィア・コッポラ(「ビガイルド」)
審査員賞 「ラブレス」(アンドレイ・ズビャギンツェフ)
脚本賞 ヨゴス・ランティモスほか(「キリング・オブ・ザ・セイクリッド・ディア」)、リン・ラムジー(「ユー・ワー・ネバー・リアリー・ヒア」)
女優演技賞 ダイアン・クルーガー(「イン・ザ・フェイド」)
男優演技賞 ホアキン・フェニックス(「ユー・ワー・ネバー・リアリー・ヒア」)
第70回記念賞 ニコール・キッドマン
<短編>
パルムドール 「ア・ジェントル・ナイト」(キー・ヤン)
審査員特別賞 「シーリング」(テッポ・アイラクシネン)
カメラドール 新人監督賞 「ジュウヌ・フェム」(レオノール・セレイル)

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