超問題作と評判のポール・ヴァーホーヴェン監督作「エル ELLE」で今年のアカデミー賞で主演女優賞候補になり、ゴールデングローブ賞では(ドラマ映画部門)同賞を受賞したフランスが誇る演技派女優イザベル・ユペールインタビューに答えてくれました。

レイプ・シーンは見ている方が辛いかもしれないですね。演じる方は意外に気楽なんです(笑)

ーー謎の覆面男に暴行されながら通報もせず、平然とその事実を家族や友人に語り、犯人より彼女の方が恐ろしいとさえいわれる主人公ミシェルを演じた感想は?

『まず女性を中心にした脚本は少ないので、その点に惹かれたのと、ミシェルの多面性にも興味を持ちました。彼女の中にはいろんな人間が住んでいるみたい。会社では権力を持っていて、母であり、妻であり、娘であり、父親の起こした恐ろしい事件の影響もあり、こんな人物他にいないでしょう?』

ーーミシェルはただの悪女ではなく、複雑な多面性の上に危険なところもある女性。心掛けた役作りは?

『彼女はシニカルな人。人を操作できる立場にあるという意味では危険だけど、弱々しいところ、逆に強いところもあり、自分は何者なんだろうと理解しようとしている女性です。一方では息子の将来を心配したり。過去に起きた事件も何か影響あるのかもという可能性も残しているけれど、あくまで可能性で、断定はしていません』

ーーそれだけ様々な顔を持つ一人の女性を演じるのを楽しんだ様子だ。こういう破壊的な役を演じることは女優願望の一つ?

『私個人としては、むしろ良い映画に出たいという気持ちの方が強いですね。例えば「未来よ こんにちは」のような。または良い監督と仕事をしたい。時には「ピアニスト」のような混乱した役も演じますけど』

ーーポール・ヴァーホーヴェン監督は昔からファンだったとか。

『彼のオランダ時代の「危険な愛」(日本はビデオ公開)で大好きになったんですけど、ハリウッド時代の「ロボコップ」「氷の微笑」などにしても、挑発的な内容の中にテーマへの批判精神がありますよね。独特のアイロニーもあるし、無意識の部分も描く。普通の監督では行かないところまで挑発を進めるのだけど、それを観客に受け入れられるように作り上げる。でも本当の彼はとても温かくて優しいんですよ』

ーーそんな監督に演出的な意見などを出したりすることは?

『彼も私にこう演技しなさいとか一切言いませんでしたし、私も演出に口は出しません。撮影の前に綿密に計画が立てられているし。カメラは常に二台で、最初のレイプ・シーンもそう。あのシーンは見ている方が辛いかもしれない。演じる方は意外に気楽なんですよ(笑)』

ーー内容が危険すぎてアメリカでは製作NGになり、フランスでOKになった本作。そんなフランス映画の良いところとは?

『まずアメリカでダメになったおかげで、私が出られるようになったのが良かった(笑)。フランスではアメリカよりもテーマを自由に決められるとか、作家主義といった風潮があるかもしれないですね。特色ある映画も尊重する土壌があるかも。時には政府の援助などもありますね。でもフランスで出来るものが、アメリカでは出来ないということでもないと思いますよ』

ーー初めて候補者として出席したアカデミー賞と他の映画祭との印象の違いは?

『特にはないですが、いろんな映画人に会えてよかったですね。授賞式で動揺(作品賞発表を間違えたこと)もあったけど(笑)』

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