『SR サイタマノラッパー』の入江悠監督が、自ら企画を売り込んでスタートした『ビジランテ』は完全オリジナルストーリーの映画となっている。極寒の冬季に入江の地元・埼玉県深谷市であえて夜間に絞った撮影を行い、俳優陣のむき出しの極限状態をスクリーンに晒している。幼い頃に失踪した長男の一郎を大森南朋、市議会議員の次男の二郎を鈴木浩介、デリヘル業雇われ店長の三男の三郎を桐谷健太が演じており、それぞれの個性をぶつけ合った演技のぶつかり合いも見どころとなっている。そんな三人に今作の魅力や共演シーンの撮影エピソードなどを語ってもらった。

【ストーリー】
幼い頃に失踪した長男・一郎(大森南朋)と、市議会議員の次男・二郎(鈴木浩介)、デリヘル業雇われ店長の三男・三郎(桐谷健太)はそれぞれ別々の世界で生きてきた。三兄弟は父親の死をきっかけに再会するが…。
深く刻まれた、逃れられない三兄弟の運命は再び交錯し、欲望、野心、プライドがぶつかり合い、事態は凄惨な方向へ向かっていく――。

オリジナル脚本の今作の現場で三人が感じたこと

ーーそれぞれどんな風に役と向き合っていかれたのでしょうか?
桐谷「僕は最初に台本を読んだ時に、三郎をどう演じたらいいのかわからなかったんです。考えても考えても答えが出ないままクランクインを迎えまして、“もういったれ!”と。今年の1月に‪埼玉県の深谷市というところで一番‬の寒波の中初日を迎えて、ブーツを履いて衣装を着て冷たい風をあびた瞬間に三郎のことが掴めたんですよね。歩き方や彼独特のけだるさがわかったというか。監督もあの空気感を知ってるからこそあの台本を書けたのかなと。だからこそ現場に行くまで掴めないはずやなと思いました」
鈴木「ちょうど三人で川で撮影している時が一番寒くて、雪も降ってたよね」
桐谷「降ってましたね。驚いたのが、一朗兄ちゃんが二郎の顔を何度も川に叩きつけてるのに眼鏡が全然取れないのが凄いなと…(笑)」
鈴木「別に眼鏡に特殊な加工はしてないからね(笑)。話を戻しますけど、僕は台本を読んだ時に重いシーンが結構あったので、“これ、僕にできるのかな?”という不安や緊張を感じました。とは言え、僕が演じた二郎よりも一朗や三郎のほうがハードなシーンが沢山あったので、二郎で良かったなとも思いました(笑)」
桐谷「あと、眼鏡選びにも相当こだわって?」
鈴木「あはははは! そんなに眼鏡選びにはこだわってないから!(笑)。役作りに関しては二人に会ってから決めようと思ってましたね。兄弟の関係性みたいなものは会ってから考えようと。僕はさっき健太が言った川のシーンで一朗兄ちゃんに頭を川の中に突っ込まれるんですけど、その瞬間に寒さで体の機能が全て停止してしまって、カットがかかる前に体が動かなくなってしまったんです。動けなくてフラフラの状態の僕を南朋さんが引っ張り上げてくれて。劇中では一朗が二郎を川に突っ込んでいますけど、実は僕の体を動かして助けてくれていました」
大森「NGだけは避けたかったので(笑)」
鈴木「それで、健太も必死に川の中を歩いて僕らについてきていて」
大森「歩きづらかったですし、川の水もめちゃめちゃ冷たかった」
桐谷「それが劇中の兄弟の関係性ともリンクしていって…」
鈴木「いやいや全然リンクしてないから!(笑)」
大森「(笑)。僕は年明け早々にこういうバイオレンスな撮影は嫌だなと思ってたんですけど(笑)、現場に入ってしまえば全力でやるだけ。みんなで懸命に役を掴みながらお芝居して、僕も現場で役を作っていきました」

画像1: オリジナル脚本の今作の現場で三人が感じたこと
画像2: オリジナル脚本の今作の現場で三人が感じたこと
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ーーお三方がお話しされている様子が和気あいあいとしていて楽しそうなのですが、映画はシリアスな内容になっています。現場はどのような雰囲気で撮影されていたのでしょうか?
大森「良い意味で現場が殺伐としていましたし、寒かったのもあって深谷の街の空気の中にいると自然と気持ちも作れました。ただ、三人一緒の時は二人がもの凄くくだらない話をしていたりするので、僕はそれを聞いてひたすら笑っていました(笑)」
桐谷「南朋さんはこう見えてツッコミ入れてもらいたい願望があるので、たまに僕らが敬語でツッコミを入れると嬉しそうにされてましたよね」
大森「確かに(笑)」
桐谷「現場では入江監督が良い作品を撮るぞという眼差しを持っていてくださったので、その目に奮い立たされましたね。現場で一番ハードなのは監督やし、1日に2、3本栄養ドリンク飲んでましたから」
大森「現場では監督はあまり寝ていなかったみたいですし。久々にこないだ監督にお会いしたら健康的になっていて安心しました(笑)」
鈴木「撮影中は監督は命がけで撮ってるということですよね」

ーー監督の眼差しや現場の空気感が自然と役へと切り替えさせてくれたということでしょうか。
大森「みんな役者なので。本番ではちゃんと役の気持ちに切り替わります」
桐谷「本番でもいま話してるような感じやったらダメですよね(笑)」

画像4: オリジナル脚本の今作の現場で三人が感じたこと
画像5: オリジナル脚本の今作の現場で三人が感じたこと

ーー皆さんはもともとお知り合いだったそうですが、共演は初めてですか?
桐谷「南朋さんとは『KAMACHOP(カマチョップ)』というインディーズ映画で共演しています」
大森「『KAMACHOP(カマチョップ)』は売れない漫才師が出てくる映画でして、当時は目力が凄くて存在感もあって力強い人だなという印象を受けたのを覚えています。今も変わってないですけど」
桐谷「南朋さんは今作でガッツリ共演させて頂きましたけど、一緒にいて安心感があるというか。自然と一朗と三郎の関係性が作れました。ご本人を前にこういう話をするのは恥ずかしいんですけど(笑)。それに南朋さんは一朗兄ちゃんが持つ男の色気や悲哀を醸し出していて素敵やなと。ご一緒できて本当に嬉しかったです…以上!」
鈴木「ちょっと! 僕の話は!?(笑)」
桐谷「あははは! 浩介くんとは『ゲロッパ!』という映画でご一緒したんですけど、主演の西田敏行さんが紹介してくださったんです。でもそれ以来会う機会があまりなくて、今作で10何年ぶりに会って“お久しぶりですね”と話している間に気がついたら鈴木と呼び捨てしてました(笑)。もちろんそれはギャグなので、ちゃんとツッコミ入れてくれたりして待ち時間が楽しかったです。個性的な浩介くんにしかできない役があると思っていますし、お二人ともリスペクトしているので三男として思いっきり甘えることができました」
鈴木「そんな健太は周りの空気を読んでスタッフ含めみんなを盛り上げてくれるので現場の士気があがるんです。大変な現場だけど疲弊しそうなところを楽しさに変えていく強さを持ってる人だなと感じました。南朋さんは現場を引っ張っていってくれているという安心感がありましたし、南朋さんを見て映画の現場でどう居ればいいのかを観察してました(笑)。静かに佇んでらっしゃってカッコいいなと」
大森「それ待ち時間に僕がじっと待ってただけでしょ?(笑)。二人とも昔から知ってるので、初共演なのに全く違和感がなかったです。二人が色んな現場で頑張ってきてるのを見てますから、本当にお兄さんみたいな気持ちで接していました。いや、むしろ二人についていきたいぐらいで…」
鈴木「ほら、ちょっとボケてくれるでしょ?」
大森「さりげなくボケるの好きなんです(笑)」

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ーー(笑)。今作は入江監督オリジナル脚本の映画ですが、最近はオリジナルの作品が少ない中での大きなチャレンジだったと思います。みなさんはオリジナル脚本の作品ということに対してどう思われましたか?
大森「やはり監督ご自身が企画を立ち上げた作品というのは、そういう気概についていきたいと思わされます。もちろん原作がある作品に対しても全力で挑みますが、入江監督が“やりたかったこと”を僕らも現場で体験させて頂いて、作品の世界観に引き込まれました。それは脚本も書ける監督の強みでもあると思います」
鈴木「入江さんの覚悟と背負ってる責任の大きさが見えるというか、その責任の重さに静かに絶え続けながら現場にいらしたのが印象的でした。命を削りながら撮っている監督の作品で僕も120%以上の芝居でやらないと失礼になると思いましたし、気持ちに答えたいという思いも強かったです」
桐谷「監督ご自身が脚本を書いてるというのは、撮りたい画や人物ひとりひとりに対しての思いなんかもそれだけ強いんだなと感じました。その思いを僕ら役者が超えられるかみたいなことも考えましたし。今作に参加したことで、やはりオリジナル脚本の映画が減っているのは寂しいなと感じました。オリジナルだと映画を観るまで内容がわからないので、そこが面白いんですよね。映画を観て、なんかカッコよかったなと思うことって重要で、何を伝えたかったのかというのは観た人が好きなように感じればいいことなので」
大森「確かにオリジナル脚本の映画も凄く良いんです。ただ、最近は脚本を書ける監督が少ないような気がします」
桐谷「入江監督は映画界を引っ張っていく存在になっていくんだろうなと思いますし、監督独自の毒っ気を無くさずにオリジナル脚本の映画を撮り続けて欲しいです」

画像7: オリジナル脚本の今作の現場で三人が感じたこと
画像8: オリジナル脚本の今作の現場で三人が感じたこと

ーーでは最後に、兄弟の関係性を描いた作品で思い出に残っている映画を教えて頂けますか?
大森「『ブルース・ブラザーズ』…は兄弟じゃないか…『インディアン・ランナー』は兄弟の話ですよね。もっと他にも色々ありそうですが」
鈴木「香港映画の『Mr.Boo!ミスター・ブー』とか」
大森「マイケル・ホイの作品で確かサミュエル・ホイを北野武さん、リッキー・ホイをビートきよしさんが吹き替えの声をやっていたかと…確かに兄弟だけど『Mr.Boo!ミスター・ブー』の話でいいの?(笑)」
鈴木「やめましょう(笑)。やっぱり『ゴッドファーザー』じゃないですか?」
桐谷「王道で言えばやっぱり『ゴッドファーザー』ですよね」
鈴木「僕は定期的に見直します。良い映画だしお芝居が素晴らしいですし」
桐谷「僕はゴッドファーザーシリーズの1〜3を一気観したことがあります。3だけちょっと雰囲気が違うんですよね。2から少し時間が経ってるからか空気感も若干変わっているなと感じました」
鈴木「3ではみんなそれぞれ年も取ってるしね」
桐谷「1日かけて一気に観た時の一人暮らしの部屋の感じとかは『ゴッドファーザー』を観ると思い出します。それぐらい暇もあったし(笑)」
鈴木「一気観すると『ゴッドファーザー』の世界から抜けたくないと思いますよね。観終わると寂しくなるぐらいハマるんです」
大森「『ゴッドファーザー』はほんと良い作品。僕も好きです」
桐谷「この三人で『ゴッドファーザー』を推してるってなんかカッコよくないですか?」
大森「劇場で『ビジランテ』をご覧になったあとは家で『ゴッドファーザー』の一気観も是非試してみてください(笑)」

画像9: オリジナル脚本の今作の現場で三人が感じたこと

(文/奥村百恵)

監督・脚本:入江悠
キャスト:大森南朋 鈴木浩介 桐谷健太
     篠田麻里子 嶋田久作 間宮夕貴 
     吉村界人 般若 坂田聡/菅田俊
配給:東京テアトル
12月9日(土)より テアトル新宿ほか全国ロードショー
©2017「ビジランテ」製作委員会

画像: 12/9公開『ビジランテ』予告 youtu.be

12/9公開『ビジランテ』予告

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