まもなく第90回アカデミー賞授賞式が行なわれる(現地時間2018年3月4日、日本時間3月5日)が、オスカー像を誰が手にするのか、いつも最後までハラハラさせられるもの。もちろん見ている方より、候補者の方がますますドキドキするだろうが、ここで栄冠を得た受賞者も、それを踏み台にさらに上昇する者、その後なぜか足踏みする者、様々なようだ。

いきなり受賞して、大スターに

それまではほとんど無名に近い存在だったのに、たった一本の当り役をつかんだことで、その後の運命が大きく変わった人もいる。例えば、あのオードリー・ヘプバーンもその一人。巨匠ウィリアム・ワイラー監督に発見され、主演の座を得た「ローマの休日」(※1)で、いきなりアカデミー主演女優賞を受賞した彼女は、一躍ハリウッド・トップ女優の座に。それまでは舞台でこそ注目されていたものの、英国映画に脇役で出演したり、名の知れた女優ではなかった。しかしこの可憐なアン王女役で世界的にも人気スターとなり、この後は「麗しのサブリナ」「ティファニーで朝食を」などヒット作を連発していった。

画像: 「ローマの休日」のオードリー・ヘプバーン

「ローマの休日」のオードリー・ヘプバーン

今回のアカデミー賞でもいきなりスポットライトを浴びた俳優がいる。まず「君の名前で僕を呼んで」で主演男優賞候補となったティモシー・シャラメ。年上の青年に憧れる17歳の少年を瑞々しく演じた彼は、まさに彗星のごとく登場した新人。しかも22歳という若さで、もし受賞すれば、この部門で最年少記録を作ることに。同部門ではもう一人、「ゲット・アウト」で候補となったダニエル・カルーヤもそれまではほとんど知られていなかったが、この映画の大ヒットで注目の的に。彼も28歳で、もし受賞すれば主演男優賞の最年少記録を作ることになる。どちらもいきなりスターになる大チャンスを手にした若手だが、結果が楽しみだ。

演技派にイメージ・チェンジ

もちろんそれまでも知られた顔であったものの、アカデミー賞を受賞することで飛躍。演技派俳優への足掛かりとした人も少なくない。「エリン・ブロコビッチ」(※2)のジュリア・ロバーツなども人気女優から演技派へとイメージを一新したスター。巨大企業相手に全米史上最高額の和解金を手にした主婦、という実在の人物を熱演し、外見だけでない実力を開花させた。「プリティ・ウーマン」でアイドルとなった彼女だが、その10年後に本領発揮を見せ、大女優としての地位を確立した。

画像: 「エリン・ブロコビッチ」のジュリア・ロバーツ

「エリン・ブロコビッチ」のジュリア・ロバーツ

今回主演女優賞候補に挙がっている「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のマーゴット・ロビーは、これまで「スーサイド・スクワッド」のハーレイ・クィンなどで知られていたが、演技派と思っていた人はそう多くないはず。単に“美形の新進女優”と考えていた人は、このオスカー・ノミネートでマーゴットへの印象が大きく変わったはずだ。今後彼女の出演オファーにも、これまで以上に幅広い役が提示され、女優人生が変わっていくに違いない。

脇役から主演クラスへ

俳優としてのステータスを上げてくれるのもオスカーの威力。受賞以前は助演、または脇役的な俳優と認知されていたのが、オスカー受賞によって、主演クラスに格上げされることも。「アニー・ホール」(※3)でタイトルロールを名演し、主演女優賞を獲得のダイアン・キートンは、それまでウッディー・アレン映画のヒロイン(といってもお飾り的な印象?)や、「ゴッドファーザー」シリーズの脇役などとして知られていたが、実力派コメディエンヌとして格上げ! アレン作品でも重要なヒロインになり、ほかに単独主演作も作られるように。名前にそれだけの価値が与えられるのがオスカー効果だ。

画像: 「アニー・ホール」のダイアン・キートン(左)

「アニー・ホール」のダイアン・キートン(左)

今度の候補者では「シェイプ・オブ・ウォーター」の主演女優賞候補サリー・ホーキンズや「スリー・ビルボード」の助演男優賞候補サム・ロックウェル、「レディ・バード」の助演女優賞候補ローリー・メトカーフ、同じく「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」で助演女優賞候補のアリソン・ジャネーといった陰の実力派の名前にオスカーという付加価値が加わり、業界内外でのリスペクトの度合いも変化することだろう。

オスカーの重圧に悩む人も

オスカーを受賞してもいいことばかりとは限らない。せっかく受賞したのに、その重圧に耐えられなかったのかも? という悲しい運命をたどった人もいるからだ。
「カポーティ」(※4)で主演男優賞を受賞したフィリップ・シーモア・ホフマンは、天才作家トルーマン・カポーティをなりきり演技で熱演して栄冠を手にしたのだが、それでもドラッグ中毒から抜け出すことはできなかった。受賞後なかなかそれ以上に飛躍できないという俳優も少なくはない。ホフマンは何度でも候補に挙がりそうな名優だっただけに惜しい。今回の受賞者からそんな人が出ないと良いのだが……

画像: 「カポーティ」のフィリップ・シーモア・ホフマン

「カポーティ」のフィリップ・シーモア・ホフマン

なかなかオスカーを取れない人

俳優だけに限らず、実力派として知られ、知名度もありながら、オスカーとは縁遠いという映画人もいる。“アカデミー賞に嫌われた男”という肩書をつけられつつ、「レヴェナント:蘇えりし者」でついに主演男優賞を受賞したレオナルド・ディカプリオも、あの世紀の超大ヒット作「タイタニック」(※5)では、映画史に残るヒーロー、ジャック役を好演したにもかかわらず作品自体は11部門の大量ノミネーションを受けながら、レオだけ候補にも漏れ、5回のノミネート経験の末、ようやく6度目で受賞できた。「タイタニック」から約20年後のことだ。受賞後初の出演作はクェンティン・タランティーノ監督の新作になりそう。

画像: 「タイタニック」のレオナルド・ディカプリオ(左)

「タイタニック」のレオナルド・ディカプリオ(左)

俳優だけでなく「泥棒成金」(※6)などの名匠アルフレッド・ヒッチコック監督や、「モダン・タイムス」(※7)「街の灯」(※8)などの喜劇王チャールズ・チャップリンといった映画史に残る才人たちも、意外だが名誉賞に留まっている。

画像: 「泥棒成金」

「泥棒成金」

今回主演男優賞本命と噂される「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」のゲーリー・オールドマンも英国の名優といわれながら、これまで一回しかノミネート経験はなく、長年無冠の帝王のままだった。その雪辱をついに晴らすのではと注目が集まっている。アカデミー賞から“嫌われていない”ことを証明してほしい。

シネフィルWOWOWでは、『アカデミー賞特集2018』と称して、映画史に残る歴代受賞作を3月4日(日)まで計40本連続放送中。ここに挙げた過去の名演技も再度チェックできる。3月4日(現地時間、日本時間3月5日)の第90回授賞式本番前に見ておくと、今年のセレモニーが何倍も楽しめるはずだ。
【男優賞】【女優賞】特集
※1「ローマの休日」(2月28日放送)
※2「エリン・ブロコビッチ」(2月16日放送)
※3「アニー・ホール」(2月26日、3月4日放送)
※4「カポーティ」(2月21日放送)
【アカデミー賞に嫌われた男たち】特集
※5「タイタニック」(3月3日放送)
※6「泥棒成金」(2月26日放送)
※7「モダン・タイムス」(2月27日放送)
※8「街の灯」(2月27日放送)

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