今年のアカデミー賞で作品賞、監督賞など最多13部門でノミネートされた「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督が1月24日に来日。映画ファンを魅了してやまない独特の世界観についてたっぷり語ってくれました。

この映画は今の時代にこそ見てもらいたいおとぎ話なんです

ギレルモ・デル・トロ監督の来日記者会見が行なわれたのは東京・赤坂プリンスクラシックハウス。1930年に建設され、2011年には都の有形文化財に指定されたチューダー様式の洋館。クラシカルなファンタジー作品でおなじみデル・トロ監督にはぴったりの場所だ。巨体を揺らしながら、やさしそうな目をキラキラと輝かせて監督が話し始める。

画像: 再開した菊地凛子から花束を送られるを贈られる監督 Photo by Shigeo Sugita

再開した菊地凛子から花束を送られるを贈られる監督
Photo by Shigeo Sugita

『この映画はとても美しいおとぎ話、愛と感動の物語です。私は今の時代にこそ、この作品を見てもらいたいと思うのです。他人を信用するのではなく恐れている今だからこそ、です。時代設定を1962年にしたのは状況が現在と似ているから。アメリカは強くて裕福でとても幸福そうでした。でも実際は冷戦の最中で、人種差別や性差別問題を抱えていたのです』

アカデミー賞主演女優賞の最有力候補といわれているサリー・ホーキンズをはじめ、俳優たちの名演技にも唸らされる。『サリー・ホーキンズはアテ書きでした。以前「サブマリン」という映画を見て目が離せなくなったんです。いい役者はセリフ回しが上手いというのは間違いです。だってサリーは喋れない役でこれだけの演技を見せてくれたのだから。本当にいい役者はよく聞きよく見る人なんです』

クリーチャーを演じたダグ・ジョーンズはデル・トロ監督作の常連俳優。

『文楽の名人は人形を上手く操る人。でも達人は人形になりきる人。ダグはまさにそれでした。どんなにカメラワークがよくても、SFXが素晴らしくても、彼が川の神だと信じてもらえなければ、この映画は成立し得なかったですからね』

そのカメラ、あるいは美術、衣装デザインなどもことごとくアカデミー賞候補に挙げられるほどの素晴らしさだ。
『おとぎ話をリアルに感じてもらうため、彼らの力はどうしても必要でした。あのクリーチャーが現実的なセットにいたら変ですもんね(笑)。彼が存在できる世界を作ること、それが私の仕事でした』

その世界を作るにあたって、〝色〞が大きな役割を果たしていると語った監督。
『基本はブルー、水の色です。彼女のアパートもブルーです。壁紙は鱗をイメージしました。実はこれ、北斎の絵からインスピレーションを受けたんです。対照的に、他の人のイメージカラーはオレンジなどの暖色系。赤は愛の色で、二人が結ばれた後は赤色が多くなります。そして緑は未来を象徴しています』

映画作りの裏側をオープンに、そして楽しそうに語り尽くす監督は、映画に込めた熱い〝愛情〞を話してくれた。

『私の創作の原動力は映画への愛。それは巨匠の偉大な作品ではありません。人生のどん底でふと見た喜劇やメロドラマに心を揺さぶられることがあるでしょう? そういう映画は、観客を楽しませる、観客とつながるという意図しか持っていません。そんな映画が私は大好きなんです』 最後にこの作品がアカデミー賞最多ノミネートを受けたことについて尋ねると、『私にとっては、この作品でノミネートされたことが何より嬉しいです。「パンズ・ラビリンス」に次いで二回目ですが、どちらも自分が一番表現したかった作品です。ファンタジーでしか表現できない美しさを私は描いていきたいのです』

「シェイプ・オブ・ウォーター」
2018年3月1日公開
原作『水の形』2017年度作品。2時間4分。アメリカ映画。20世紀フォックス映画配給

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