台湾・アカデミー賞(金馬奨)受賞監督のグオ・チェンディ(郭珍弟)が、愛に生きた作家・岡本かの子が紡いだ傑作小説をもとに、素直になれずにこじれた恋心たちを描いた『越年 Lovers』が、1月15日に全国公開された。日本、台湾、マレーシアの年越しの風景を舞台に、不器用な3組が織りなす物語。スクリーンオンラインでは、日本パートの主演を務めた峯田和伸にインタビュー。本作への想いから2021年への希望までを語ってもらった。
画像: Photo by Tsukasa Kubota

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嘘のない感じが出せたと思います

──本作をご覧になっての感想はいかがでしたか?

「山形のことをなんにも知らない、触れたこともない台湾の方が、どういう風に撮るんだろうな。最初、そこにすごく興味ありました。出来上がったのを観たら、山形が山形に見えないというか。自分の生まれ育った町が、北欧映画みたいに綺麗で。台湾パートとマレーシアパートに挟まれたから、かえってそう見えたのかもしれないけど、それがすごく新鮮でした」

──他のパートなど色彩豊かでしたけれども、日本パートは本当に、基本、白っていう感じの映像で。

「向こうの人はビックリするんじゃないですかね。台湾のスタッフの人も、山形に来て、雪を初めて見て、みんなテンション上がってましたから」

──今回の寛一という役を演じるにあたり、意識されたことは?

「寛一って、本当に朴訥としてて。地元の友達でいるんですよ。心当たりあるのが。アライくんっていう友達で(笑)」

──勝手なイメージなので、間違ってたらごめんなさいなんですけども、寛一って、東北人らしいなって思いました。口べたで、野暮ったくて。

「僕もそういうのが出ればいいなとは思いました。それにどう動こうとかを意図しなくても、ネイティヴな山形弁を出してる限り、そういう風に体が勝手になるような気がして。普段は東京で暮らしてて、こうやって標準語でしゃべりますけど、スタッフは山形の同級生で。だから東京にいても、普段は山形弁でしゃべってる。そっちのほうが、気持ちが乗るというか。フィルターがかかってないんですよね。標準語に直す、変換の作業をしなくていいので。今回は、地で動けたというか、嘘のない感じが出せたと思います」

──という意味では、同郷の橋本マナミさんはやりやすかった?

「はい。でも、彼女はもう、高校生の時には東京に来てて、東京にいる時間のほうが全然長いから、「山形弁、結構忘れてる」って言ってて。台本はもちろん、標準語で書いてあるじゃないですか。それを山形弁に砕いてしゃべるんですけど、「峯田さん、この台詞って、山形弁でなんて言うんですか」みたいな。そういうやりとりもありました」

画像1: 嘘のない感じが出せたと思います
画像2: 嘘のない感じが出せたと思います

ヤオ・アイニンと思わぬ形で、一緒の作品で共演できて、嬉しかったです

──寛一の想いを伝えられないもどかしさ、言葉にするのが下手なところって、男性は“あぁ、わかるわぁ”って思うかもしれませんね。

「女性からしたら、本当、何考えてるかわかんないでしょうね。男って。はっきり言わないし。僕ね、さっきも言いましたけど、アライくんをずっと意識してたんです。“アライくんはこういう感じだな”とか。アライくんのこと、すごく好きなので。もう20年、会ってないんですよ。本当、気持ちを伝えるのが下手で。口数も少なくて。でも実は、青い炎、めらめらとあるみたいな」

──アライさんが観たら、この映画、どういう風に受け取りますかね?

「どうですかね。“峯田、カッコつけてんな”とかね(笑)」

──台湾とマレーシアのパートに関しては、どういう感想を持たれましたか?

「風景は、もちろん違うじゃないですか。こっちは雪景色で。風景も言葉も違うんですけど、中心にいる人間たちは結局、一緒だなっていうか。どの国にも、上手く、器用に生きられる人もいれば、そうでもない人たちもいて。それが面白いなと思いました。一幕(台湾パート)に出てる主演の女の子。これ、たまたまなんですけど、ずっと銀杏BOYZのジャケットになってる女の子なんです。もう、ビックリして。企画書に〈主演:ヤオ・アイニン(姚愛寗)〉と書いてあって、”えっ!”と思って。思わぬ形で、一緒の作品で共演できて。すごい偶然だなって。嬉しかったです」

──本作を観た方に感じてもらいたいことはありますか?

「山形って、結構面白いところだよ。結構、綺麗な町ですよって。山形の街をプレゼンするわけじゃないけど。でも、山形の景色は観てほしいです。あとは、映画だからといっても、スクリーンに映ってるのは観てる人と違わなくて。お客さんと全然変わんない寛一という人間が、ただ映ってる。寛一だけじゃなく、観てる人と変わんない背丈の人が、台北にもマレーシアにもいる。どの国でも、もどかしくて。そういう年末年始を迎えてる3組を“なんだかなぁ”みたいな感じで。本当、お風呂に浸かる感じで観てほしいです。“こういうやつもいるんだな”みたいな」

画像: ヤオ・アイニンと思わぬ形で、一緒の作品で共演できて、嬉しかったです

我慢した分あると思うので、自分はその日を目指したいなと思います

──映画のタイトルに“越年”とありますが。2021年、どんな年になったらいいなという希望を聞かせていただけますか。(インタビューは2020年12月)

「2020年は本当に、どこにも行けなかったし、友達にも会えなかった。でも、それは僕だけじゃなくて、みんなもそう。お店を経営してる人とか、大変だと思うんです。そういうのが報われる年になればいいなって」

──吐き出したいものはいっぱいあります?

「うん。お客さん入れてライブもできないし。こういう時期がもうちょっとかかるわけじゃないですか。お客さんを入れてやり始めたアーティストもいらっしゃいますけど、僕はまだ我慢したいんです。でも、こういう時期を通過した上での表現というか、作り手はたぶん、いろいろ変わってくると思うので。こういう時期をきっかけに、新しい光みたいなものが見えてる人はいっぱいいると思うので。それが実際の形になればいいなと思います。そして、ギュウギュウに入れてライブをやった時の喜びって、我慢した分あると思うんで、自分はその日を目指したいなと思います」

──最後にメッセージをお願いします。

「こういうの、一番難しいですよね。今は、映画館へ足を運んで映画を観るっていうのも、なかなか……。そういう日常の中で、やっぱり映画館って、きっつい現実から逃れられる場所であってほしいし。つかの間の90分、120分間だけは、その現実を忘れられて、“あぁ”って没頭できる。映画を観て、“なんかやってみようかな”とか“もう一回考えてみよう”とか、そういう気持ちになってもらえたら嬉しいなと思います」

画像: 我慢した分あると思うので、自分はその日を目指したいなと思います

『越年 Lovers』
監督・脚本:グオ・チェンディ
原作:岡本かの子「越年 岡本かの子恋愛小説集」(角川文庫)/「老妓抄」(新潮文庫)
出演:峯田和伸 橋本マナミ
   ヤオ・アイニン オスカー・チュウ
   ユー・ペイチェン ウー・ホンシュウ
配給:ギグリーボックス
2021年1月15日(金)新宿バルト9ほか全国公開
© 2020映画「越年」パートナーズ

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