12人の映画監督による12本の短編映画製作プロジェクト『DIVOC-12(デイボック-トゥエルブ)』が始動。これは株式会社ソニー・ピクチャーズ・エンタテイメントが新型コロナウイルス感染症の影響を受けているクリエイター、制作スタッフ、俳優が継続的に創作活動に取り組めるようにという粋な計らいで開始し、12作品は今年全国公開される。今回は『幼な子われらに生まれ』(17年)など数々の代表作を持つ三島有紀子監督と、『のさりの島』(主演・21年)等、今最も勢いのある若手俳優の藤原季節をインタビュー。2人がタッグを組んだ『よろこびのうた Ode to Joy(オードトゥジョイ)』について話を聞いた。本記事には公開されていないオリジナルエピソードは、ぜひ本誌(SCREEN+Plus vol.74)にてチェックを。
撮影/奥田耕平(THE96) スタイリスト/[三島]谷崎 彩、[藤原]Shohei Kashima (W) ヘアメイク/[三島]市橋由莉香、[藤原]須賀元子 文/内埜さくら
衣裳/[三島]トップ¥42,900、パンツ¥44,000共に132 5. ISSEY MIYAKE(03-5454-1705)、[藤原]ジャケット ¥97,900、pants¥52,800共にAPOCRYPHA.(Sakas PR 03-6447-2762)、Tシャツ ¥13,200/SEVEN BY SEVEN(Sakas PR 03-6447-2762)、その他スタイリスト私物 ※すべて税込み価格

――最初は三島監督に質問です。本作の脚本の着想はどのように?

三島「昨年8月もコロナ禍ではありましたが海が見たいと思い、千葉県の九十九里浜へ行ったんです。その時、富司純子さんが演じてくださった主人公と同じぐらいの年齢の女性が転倒されまして。抱き起こしたことが、1つのきっかけです。2つ目は、ある食堂で偶然聞いた70歳ぐらいの女性たちの会話です。“寿命が100歳なら、あと30年も生きなければいけないのよ。どうしよう”という言葉が胸に残りました。3つ目は、インドで行われているボランティア団体のエピソードです。インドでは、路上で亡くなりかけている路上生活者を室内へ運び、最期を見守るボランティアが存在するそうです。人が死を迎える時に、誰かに見守られることでかけがえのない安心感を得られる、コロナ禍であらためて強く思いました。この3本柱が集まった時に、この作品の脚本を書こうと思いました」

――富司純子さんとともに主演を務める、ある意味富司さんとバディを組む藤原季節さんを起用した経緯も教えていただけますか。

画像: © 2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

© 2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

三島「藤原さんって何か裏があるように見えませんか? 彼が演じた役は、抱えている不安や悲しみを最初は見せない男です。それが、母性と欲望を併せ持つ女性(富司さん)と接触したことで、不安や怒り、悲しみといった感情がむき出しにされていく。同じ熱量で作品に向き合ってくれて、役の裏側を表現してくれる方は? と考えた時、自然と藤原さん心に浮かびました。藤原さんと最初にお会いしたのは……」

藤原「僕が出演した短編映画(『中村屋酒店の兄弟』)が出品された、『東京学生映画祭』です。審査員が三島監督でした。打ち上げが初対面で、ご挨拶させていただいたんです。“三島監督の映画は何作も拝見しています。僕は役者をしているので、いつかご一緒させていただけたら嬉しいです”と。これほど早くご一緒できるとは思っていなかったので、驚きと同時に喜びました。これほどの速度で作品に呼んでくださる監督とは、過去にあまりお会いしたことがなかったので」

画像1: 三島有紀子監督×藤原季節『DIVOC-12』よろこびのうた Ode to Joy インタビュー

三島「今までも藤原さんが出演されている別作品を拝見してはいましたが、『中村屋――』のファーストカットを観て感じたんです。“藤原さんはカメラにとても愛されていて、映画的な色気がある方だな”と。同時にとても繊細な部分を感じたので、この俳優さんが、全力で自分の感情をむき出しにした時の表情が見てみたいと強く思い、オファーしました」

藤原「三島監督ってお会いする方々に言われませんか? “すべてを見透かされているような気がして緊張する”と。個人的には、三島監督にしか見えていない“何か”があると感じています」

三島「“見透かされている”と言われることはありますね。でもそれって、好きな人を見ているような感覚に近いです。好きな人のことは、なんでも知りたいじゃないですか。だから藤原さんを見ている時も、目の二重の感じ、左側と右側から見た時の表情の違い、手の動き、クセ。監督として、全部誰よりも知りたいから、すごく見ていました。それらを役で演じる時に、使ってもらうかどうかも含めて」

画像2: 三島有紀子監督×藤原季節『DIVOC-12』よろこびのうた Ode to Joy インタビュー

藤原「たしかに、初めてお打ち合わせした時に言われました。“緊張するとまばたきの回数が少し多くなるね”と」

三島「一般的に人は緊張するとまばたきの回数が増えるんですが、藤原さんは多かったですね。映画の中でのまばたきには大きな意味がありますし。今回は、回数を減らしてもらいました」

――ほかに藤原さんは、どのような事前準備をしましたか。

藤原「作品内では宮城県仙台市の方言で話すので、クランクイン前、実際に現地も訪問させていただいたんです。東日本大震災が起きて今年3月で10年経ちましたが、クレーンが置かれたままになっている場所があり、現地を見なければわからなかった復興の現実を学びました。作中でも同じような光景が反映されています。東北弁の練習もかなり重ねてから撮影に入りました。見た目の役づくりとしては自前のメガネを持参しました。髪の毛もカットしたんです。あとは、見た目を気遣うほどお金を持っていない青年なので、クランクイン前の10日間ぐらいは、準備していただいたくたびれた衣裳とすり切れたスニーカーを履き続けて、ひたすら歩いて過ごしました」

三島「役者さんには、役として背景となる現場を実際に感じてほしいという思いがあります。今回、富司純子さんも演じる役の生活圏を見て回られたりとそういう準備をしてくださいましたが、藤原さんも役の青年が生まれ育った場所でリアルに感じたものを全部、役として出してくれました。土地や人生を知る時間をきちんと積み上げて、役の人間そのものになってくれたことは監督として心から幸せだと思いますね」

画像3: 三島有紀子監督×藤原季節『DIVOC-12』よろこびのうた Ode to Joy インタビュー

――10分間強の映像に、そこまで注力していたとは驚きです。

三島「尺の長短は関係ないですよね?」

藤原「もちろんです。クランクインした時に役になっていないと、ウソがバレるという覚悟で臨みました。衣裳を着て生活するという選択肢しか浮かばなかったというのが正直な気持ちです」

――続けて藤原さんに質問です。印象に残っているシーンはありますか。

藤原「完成作を観た時、富司さんが電話ボックスで電話をかけるシーンに鳥肌が立ちました。ご一緒していないシーンで、あそこまで軽やかなお芝居をされているとは想像もしていなかったんです。富司さんが演じた女性は世界の片隅で生きている人だと思いますが、本気で懸命に生きている人は、実はつらい部分はひた隠しにして、朗らかに生息しているという真実味が強く伝わってきて、感動したんです。撮影は2日間と短い期間でしたが、僕にとっては忘れられない日になりました。三島組に参加させていただき、頭が真っ白になるほど夢中になれる喜びを味わいました」

――頭が真っ白の、具体的な意味とは。

藤原「僕、撮影当時は余計なばかり生きていたんです(笑)。スマートフォンの中にある情報の中に溺れて、何を信じていいのかわからない、生きた心地がしない日々を送っていました。欲しいものはネットですぐ買えますが、簡単には手に入らない本当に欲しいものが、あの現場にはあったような気がして、頭が真っ白なまま演じました。ある意味、解放的な自分でもいられました」

三島「そうですね。たしかに、スマートフォンで簡単に手に入れられるようなものは、ここ(この作品)にはありません。この作品では、今目の前をどう生きるか、人間にどう向き合うか……その中で何が“よろこび”か、を感じてもらえたらいいなと思います」

――最後に本作を含め、短編映画ならではの魅力をお願いします。

藤原「短編映画は、最もピークとなるシーンばかりが凝縮されているのが魅力だと思います。この作品を含め12作品が上映されますが、似通っている作品は1つもなく、描き方がすべての監督によって違うので、笑える瞬間もあれば、感動する場面もありました。僕自身は完成作を観て、それぞれの作品が世界をどう捉えているかという眼差しを12個観られるという意味では、とても充実した時間を過ごさせていただきました」

三島「12個の眼差し、いい言葉ですね。私は、短編作品は凝縮した形でお見せする作品だと捉えていますが、凝縮といっても1つの物語を短くして全部詰め込むというよりは、象徴的なシーンを描いて、いかにその前後を想像していただけるか……削ぎ落としていくことで魅力が増すと思っています。今回の作品でいえば、病院であることが行われている時間は描いていません。そうやって削ぎ落としながら、藤原さんと富司さんのお芝居の力で、観客のみなさんの想像力をいかに刺激して観ていただけるかを大事にして撮ったので、ぜひ劇場でご覧いただけたら嬉しいです」

PROFILE

三島有紀子 YUKIKO MISHIMA
大阪府出身。

18歳からインディーズ映画を撮り始め、大学卒業後NHKに入局。「NHKスペシャル」「ETV特集」、震災特集など市井の人々を追う人間ドキュメンタリーを数多く企画・監督。03年に劇映画を撮るために独立し、フリーの助監督として活動後、多数の作品を監督。『幼な子われらに生まれ』(2017年)で、第41回モントリオール世界映画祭 審査員特別大賞、第41回山路ふみ子賞作品賞、第42回報知映画賞 監督賞 他を受賞。2017年キネマ旬報日本映画ベストテン 第4位。

〈主な映画監督・脚本作〉
『しあわせのパン』(2012年) 監督・脚本
『ぶどうのなみだ』(2014年) 監督・脚本
『繕い裁つ人』(2015年) 企画・監督
『短編集 破れたハートを売り物に』(2015年)「オヤジファイト」監督・脚本
『少女』(2016年) 監督・脚本
『幼な子われらに生まれ』(2017年) 監督
『Red』(2020年)監督・脚本

画像4: 三島有紀子監督×藤原季節『DIVOC-12』よろこびのうた Ode to Joy インタビュー

藤原季節 KISETSU FUJIWARA
1993年1月18日生まれ、北海道出身。
第42回ヨコハマ映画祭 最優秀新人賞受賞

〈近年の主な出演作〉
ドラマ「歪んだ波紋」(2019年)
ドラマ「監察医 朝顔」(2019・20-21年)
ドラマ「西荻窪 三ツ星洋酒堂」(2021年)
大河ドラマ「青天を衝け」(2021年)
舞台「サンソン -ルイ16世の首を刎ねた男-」(2021年)
映画『his』(2020年公開)
映画『佐々木、イン、マイマイン』(2020年公開)
映画『くれなずめ』(2021年)
映画『明日の食卓』(2021年)
映画『のさりの島』(2021年)
映画『空白』(2021年9月23日公開)

〈待機作〉
舞台「ぽに」(2021年10月28日~11月7日KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ)

画像5: 三島有紀子監督×藤原季節『DIVOC-12』よろこびのうた Ode to Joy インタビュー

12人の映画監督による12本の短編映画製作プロジェクト『DIVOC-12(デイボック・トゥエルブ)』

「DIVOC」は COVID を反対に並べた言葉。「12人の映画監督と共に、COVID-19をひっくり返したい。」という想いが込められており、DIVOC の それぞれの文字が表す下記の意味を軸にプロジェクトを進めていく。

Diversity(多様性)/Innovation(革新)/Value(新しい価値)/ Originality(個性)/Creativity(創造)

〈CAST/STAFF〉

出演:
横浜流星 /松本穂香 小関裕太 / 富司純子 藤原季節
石橋静河 /小野翔平 窪塚洋介 / 安藤ニコ おーちゃん / 清野菜名 高橋文哉
蒔田彩珠 中村守里/ 中村ゆり 髙田万作
笠松将 / 小川紗良 横田真悠 / 前田敦子

監督:
藤井道人 上田慎一郎 三島有紀子
志自岐希生 林田浩川 ふくだみゆき 中元雄 山嵜晋平 齋藤栄美
廣賢一郎 エバンズ未夜子 加藤拓人

主題歌:yama「希望論」(MASTERSIX FOUNDATION)

【DIVOC-12公式サイト】https://www.divoc-12.jp
【公式Twitter】@divoc_12
【公式インスタグラム】@divoc_12

『よろこびのうた Ode to Joy』

〈STORY〉
ポスティングのパートと年金で、ひとり細々と生きる75歳の冬海。ある日、海での散歩の途 中、東北弁を話す優しい青年・歩と出会い、とある仕事に誘われる。もし100歳まで死ななかったらあと25年・・・生活の不安、ちょっとした贅沢をしたいという小さな欲望。怪しいと理解しつつも報酬に惹かれ、引き受けることに決める冬海。お金と安心を得るため、二人は背徳的な仕事へと車を走らせる。

〈CAST/STAFF〉
出演:富司純子 藤原季節
監督・脚本:三島有紀子
製作・配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

10月1日(金)全国ロードショー

© 2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

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