70年の長い歴史を誇るカンヌ国際映画祭。この場に集う映画人の顔ぶれも時代を反映するように、移り変わって行くもののよう。フランス映画界のいまの顔も大きく様変わりしつつある様子。映画ライター岡田光由氏が現地よりレポートする第3弾。
画像: 観客から拍手を受けるマチュー・アマルリックとジャンヌ・バリバール

観客から拍手を受けるマチュー・アマルリックとジャンヌ・バリバール

今年のカンヌ国際映画祭が始まる手前に、アラン・ドロンの引退ニュースが流れ、パトリス・ルコント監督との最後の映画で、来年のカンヌを目指すとかが伝えられているが、70回を迎えた映画祭を彩ってきた地元フランスのスターたちも、すっかり様変わりしたようだ。かつてはブリジット・バルドー、ジャンヌ・モロー、ジャン・ギャバン、ダニエル・ダリュー、ミシェール・モルガン、次いでカトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン・ポール・ベルモンド、アラン・ドロン、その次のイザベル・アジャニー、ジェラール・ドパルデュー、エマニュエル・ベアール、ファニー・アルダン、ソファー・マルソー、それに今も主役をはって活躍中のイザベル・ユペールが話題をにぎわしてきた。
ところが今年の映画祭のオープニングを飾った「イスマエルの幽霊」やある視点部門でオープニング上映された「バルバラ」を鑑賞すると、フランス映画界もすっかり世代交代したなあと思わせる。まず「イスマエルの幽霊」は、アルノー・デプレシャン監督が「そして僕は恋をする」のマチュー・アマルリックを主演に、「マリアンヌ」や「アサシン クリード」のマリオン・コティヤールと「ニンフォマニアック」のシャルロット・ゲンスブールという今や世界的に活躍する女優二人を起用して作ったミステリアスな人間ドラマ。

画像: 観客席から拍手を送るデプレシャン

観客席から拍手を送るデプレシャン

そのマチュー・アマルリックが監督した「バルバラ」は、フランスを代表する異色なシャンソン歌手バルバラの晩年を、“映画オン映画”形式で描いた意欲的な伝記映画。というのも、バルバラの映画を製作する女優と監督ら現場サイドと、作り出される作品そのものを交錯して描いているからである。バルバラを演じる女優に、アマルリックと「そして僕は恋をする」で共演した元妻ジャンヌ・バリバール。アマルリックも監督役で出演している。上映後には観客からスタンディングオーベーションを受け、その中には盟友デプレシャン監督もいた。
アマルリック、デプレシャン、マリオン、シャルロット、ジャンヌらに加えて、今年のカンヌで審査員を務める「ムッシュ・カステラの恋」のアグネス・ジャウイ監督、コンペティション部門出品の「レドウタブル(尊敬)すべき」で若きジャン・リュック・ゴダールを演じているルイ・ギャレルが注目される。さらに「ニューヨークの巴里夫(パリジャン)」のロマン・デュリスとオドレー・トトゥー、「白い帽子の女」のメラニー・ローラン、「スペクター」のレア・セドゥー、「たかが世界の終わり」のギャスパー・ウリエルなど、若手というよりは中堅といっていいスターや監督たちが仏映画界を背負ってきたようだ。

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