「君の名前で僕を呼んで」「BPM ビート・パー・ミニット」など最新作が次々公開される“LGBT映画”と呼ばれる一連の作品群。いまでこそオスカーや海外の国際映画祭で大きな賞を受賞する存在ですが、以前はLGBTを扱った映画は暗喩的なものだったり、カルトだったり、メインストリームから少し外れたものでした。しかし時代の流れによって、その立ち位置にも徐々に変化が。ここではそんな時代の変化の中で生まれてきた必見のLGBT映画をご紹介していきましょう。今回は1990年代から!80年代後半から流行したエイズは当時〝ゲイの病〞とさえ蔑まれたが、90年代に入ってそんな誤った知識に立ち向かう作品が登場。世間の偏見を少しずつ変えていきます。(文・熊谷真由子/デジタル編集・スクリーン編集部)

01:「ロングタイム・コンパニオン」

エイズがゲイ・コミュニティーにもたらした悲劇

画像: エイズがゲイ・コミュニティーにもたらした悲劇

1980年代のニューヨークを舞台に、「謎のガン」と呼ばれたエイズが発生し、ゲイコミュニティへ蔓延していく様子を、当時の混乱や偏見、仲間を失った悲しみなど、事実とフィクションを織り交ぜて丁寧に描く。ハリウッドが初めてエイズを取り上げた作品としても話題で、ブルース・デーヴィソンは各映画賞で助演男優賞を受賞。監督のノーマン・ルネはエイズで亡くなっている。

Longtime Companion(1990)
監督:ノーマン・ルネ
出演:キャンベル・スコット、ブルース・デーヴィソン

02:「フィラデルフィア」

エイズに侵され不当解雇された弁護士の闘い

画像: エイズに侵され不当解雇された弁護士の闘い

トム・ハンクスとデンゼル・ワシントンという実力派の二大スター競演で贈るヒューマン・ドラマ。自由と兄弟愛の街フィラデルフィアで、事務所を不当解雇されたエイズ患者の弁護士が周囲の偏見や冷たい視線に臆することなく、訴訟を起こして闘う姿に胸打たれる。次第にやせ細って行くエイズ患者を演じたトムはアカデミー主演男優賞受賞をはじめ、その年の賞レースを席巻。

Philadelphia(1993)
監督:ジョナサン・デミー
出演:トム・ハンクス、デンゼル・ワシントン

03:「プリシラ」

3人のドラァグクィーンたちのロードムービー

画像: 3人のドラァグクィーンたちのロードムービー

3人のドラァグクイーンがショーに参加するため、オーストラリアの広大な砂漠をバスで移動するロードムービー。それぞれ個性的で強烈なのにどこかかわいらしいドラァグクイーンをヒューゴ・ウィーヴィング、ガイ・ピアース、テレンス・スタンプが好演。けばけばしくてきらびやかなファッションも楽しい。奇異の目で見られてきたからであろう彼らの含蓄ある言葉も染みる。

The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert(1994)
監督:ステファン・エリオット
出演:テレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィーヴィング

04:「ブエノスアイレス」

香港の大物俳優二人がゲイカップルの関係を好演

画像: 香港の大物俳優二人がゲイカップルの関係を好演

トニー・レオンと今は亡きレスリー・チャンがゲイカップルを演じたウォン・ガーワイ監督作(カンヌ監督賞)。ガーワイらしく脚本はなくほとんどが即興劇だったけれど、痴話ゲンカやベッドシーンがリアルだったのはふたりの演技力のおかげ。猫のように気まぐれなレスリーの退廃的な雰囲気と妖艶さ、そんなレスリーに振り回されながらも結局は受け入れるトニーの濡れた瞳が印象的。

春光乍洩(Happy Together)(1997)
監督:ウォン・ガーワイ
出演:トニー・レオン、レスリー・チャン

05:「ボーイズ・ドント・クライ」

トランスジェンダーに対する偏見をえぐり出す

画像: トランスジェンダーに対する偏見をえぐり出す

トランスジェンダーのブランドン(身体的には女性だが本人の性自認は男性)が殺害された実話を映画化。ブランドンが女性だとわかったとたん、仲間は態度を一変させて性暴力に走ったり、周囲の無遠慮と無理解によって不当な扱いを受けて屈辱を味わったり。徹底したリアリズムが観る者の覚悟を試す。ブランドンに扮したヒラリー・スワンクがアカデミー主演女優賞を受賞。

Boys Don't Cry(1999)
監督:キンバリー・ピアース
出演:ヒラリー・スワンク、クロエ・セヴィニー

1990年代その他のチェック作

「BPM…」に描かれるように80 ~ 90年代初頭はエイズに対する正確な知識がまだ一般に広がっていなかった時代。次第にその誤解は減少。様々なジャンルのLGBT映画が様々な国で、様々な監督により作られる。ガス・ヴァン・サントの「マイ・プライベート・アイダホ」、アグニェシュカ・ホランドの「太陽と月に背いて」、アン・リーの「ウェディング・バンケット」、ウォシャウスキー姉妹の「バウンド」、ペドロ・アルモドヴァルの「オール・アバウト・マイ・マザー」など必見作多数。

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