今年のカンヌ映画祭は期間が少し短縮されたせいか、とにかくスケジュールがタイトだ。(岡田光由)

ギリアム監督が本領発揮の「ドン・キホーテを殺した男」

明日にパルムドールの発表を控えた5月18日は、朝8時半からのプレス試写はヴァネッサ・パラディが主演するラブスリラー「ナイフ・アンド・ハート」。ゲイポルノ監督役のパラディがポルノスター連続殺人犯の魔手に脅かされていくもので、お話といい、作りや演出といい、どれもイマイチの出来。こんなのがコンペ作?と疑う。11時からはロシアのセルゲイ・ロズニッツア監督のコンペティション作品「アイカ」と短編コンペティション部門エントリー作8本の上映がバッティング。日本の川村元気と佐藤雅彦ら5人が監督した「どちらを選んだのかわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」が出品されているので、短編をチョイス。出演した黒木華も上映会場に現れ、大いに注目された。

画像: 黒木華と短編の5人の監督

黒木華と短編の5人の監督

次いで13時半からはアウト・オブ・コンペティションとなるテリー・ギリアム監督の「ドン・キホーテを殺した男」のプレス試写。割と小さな会場での上映で満席となったが、大分ジャーナリストたちが帰ったことを実感する。映画はギリアムの本領を発揮したかのように、実に賑やかで華やか、ウィットに富んで楽しく面白い。ここではアダム・ドライバーが主役だが、ジョナサン・プライスが最高にうまくてこの映画の物語を支えている。またステラン・ステルガルトも強烈な持ち味を発揮して好演。

ある視点部門の大賞は「ボーダー」に

その後、16時半から「ある視点」部門のクロージングセレモニーに。
例年通り、始まる前に映画祭をサポートしてくれた市民ボランティアの皆さんがステージにあがり、観客の大喝采を浴びた。ティエリー・フレモーの司会で審査員たちが登壇し、ベニチオ・デル・トロ審査員長から賞が次々と発表された。大賞は、レポート2弾にも紹介した北欧ホラーと言える「ボーダー」。顔の醜い女性入国管理官が嗅覚で犯罪者を取り締まる話で、同じ種族?の男性との出会いで出生の秘密を探り出す後半もいい。

画像: 大賞の「ボーダー」のアッバシ監督と審査員長ベニチオ・デル・トロー

大賞の「ボーダー」のアッバシ監督と審査員長ベニチオ・デル・トロー

また演技賞に輝いた「ガール」のビクトール・ポルスターは欠席だったが、代わりに監督のルーカス・ドントが受賞。男の子ながら女性としてバレリーナを目指す話で、女性と見間違うほどの美青年ポルスターのバレリーナぶりにも感心させられた。この「ガール」と「ボーダー」には、日本の配給会社が買いに殺到したと聞く。

そしてこの夜の締めは、「雪の轍」の監督フリ・ビルゲ・シェイランの新作「ワイルド・ペアー・トリー」のプレス試写が20時から。コンペ部門作品だから見逃せないが、相変わらず3時間8分の長編。作家志望の青年が主人公で、親子や兄妹など家族や友人たちとの関わり合いを正攻法でじっくり描いていく。昔ながらのいい映画なのだが、も少しコンパクトにできるのではと思うが、それだと監督の持ち味が失われるのかもしれない。ともかく長い、長い一日だった。明日19日はいよいよ授賞式。フランスのテレビは、どこもかしこもヘンリー&ミーガンの結婚式に関した番組で溢れている。

画像: 「ボーダー」Meta Spark&Kärnfilm AB 2018

「ボーダー」Meta Spark&Kärnfilm AB 2018

■受賞一覧
大賞 「ボーダー」(アリ・アッバシ監督)
脚本賞 メリエム・ベンバレク(「ソフィア」)
演技賞 ビクトール・ポルスター(ルーカス・ドント監督「ガール」)
監督賞 セルゲイ・ロズニッツア(「ドンバス」)
審査員特別賞 「ザ・デッド・アンド・ジ・アザーズ」(ジョアン・サラヴィサ&ルネー・ナデル・メソラ監督)

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