5月8日から開催された第71回カンヌ国際映画祭は、19日の授賞式でパルムドールほか数々の賞を発表して閉幕した。(岡田光由)

クロージングでアーシア・アルジェントが衝撃の告白を!

そのクロージングセレモニーの最初、プレゼンターのアーシア・アルジェントが21歳の時にカンヌでハーヴィー・ワインスタインにレープされたことを告白して、会場は一瞬黙りこくってしまった。審査員長のケート・ブランシェットも、衝撃の告白に一瞬言葉を失いながらも受賞者の発表を始めた次第。この授賞式の模様はムービープラスで5月24日から4回ほど再放送するから、ご覧くだされ。ちょうど時を同じくしてフランスでは、リュック・ベッソンが女優からセクハラで訴えられたことがニュースになっていた。

さて今回の受賞結果だが、何といっても是枝裕和監督の「万引き家族」がパルムドールに輝いたことだ。97年の今村昌平監督の「うなぎ」以来の快挙。都会のビルの合間のボロい一軒家で、血の繋がらない一家が年金をごまかし、生活用品を万引きして暮らす中で、血の繋がった家族より強い絆で結ばれていく異色のファミリードラマだが、審査員のケートは「テーマといい、演出や撮影といい、すべてにおいて素晴らしい出来栄え」と絶賛。審査員の一人でもある「ブレードランナー2049」のドニ・ヴィルヌーヴ監督も「上品で味わい深くて、とにかく恋に落ちてしまった」と告白する。

『見えない人々』がコンペ部門の大きなテーマに

考えてみれば、今回は言いたいテーマをストレートに描き訴える作品が多かったように思う。中年ハンセン病患者が孤児の少年をつれて、自分を棄てた家族を探しに行くエジプト作品「ヨメディン」にせよ、ISに拉致された幼い息子を救出するクルド人女性兵士を描いた「ガールズ・オブ・ザ・サン」にせよ、感動的だがストレートすぎる嫌いがあった。ケートがインビジブル・ピープル(見えない人々)が大きなテーマだと言っていたが、それについて是枝監督は「僕が映画を作るスタンスは、社会から見過ごされてしまったり、目を背けがちになる人々をどう可視化するかという意味で当てはまるのかもしれません。彼女の言葉をうれしく聞いた」と。

スパイク・リーとジャン・リュック・ゴダールに大きな賞が

画像: グランプリ受賞のスパイク・リー

グランプリ受賞のスパイク・リー

さて他の受賞で注目されたのが、何かしらの受賞が噂されていたスパイク・リーとジャン・リュック・ゴダールの二大監督。スパイク・リーのグランプリとゴダールのスペシャル・パルムドールは彼らの功績をも含めて妥当な受賞とみた。また前半から人気の「コールド・ウォー」は、パベウ・パブリコフスキの監督賞に落ち着き、脚本賞に女性脚本家二人、審査員賞にレバノン出身の女優で監督のナディーン・ラバキーが描いた幼い少年の両親告発ドラマ「カベナウム」に贈られた。特に「カベナウム」に主演したザイン・アルラフィーア少年の、怒りを静かに訴えるつぶらな瞳が印象的で、授賞式でも監督と一緒にステージに上がっていたので要チェックを。

そして映画祭は、テリー・ギリアム監督の「ドン・キホーテを殺した男」の世界プレミア上映で最後の夜を華やかに締めくくった。

第71回カンヌ国際映画祭 主な受賞結果

画像: パルムドールの『万引き家族」: 2018 FUJI TELEVISION NETWORK/GAGA CORPORATION/AOI PRO. INC. ALL RIGHTS RESERVED

パルムドールの『万引き家族」: 2018 FUJI TELEVISION NETWORK/GAGA CORPORATION/AOI PRO. INC. ALL RIGHTS RESERVED

<長編>
パルムドール 「万引き家族」(是枝裕和監督)
グランプリ 「ブラッククランスマン」(スパイク・リー監督)
監督賞 パヴェウ・パヴリコフスキ(コールド・ウォー)
審査員賞 「カペナウム」(ナディーン・ラバキー監督)
脚本賞 アリーチェ・ルバルケル(「ハッピー・アズ・ラザロ」)、ナディア・サイバー(「スリー・フェイシズ」)
女優演技賞 サマル・イェスリャーモア(「アイカ」)
男優演技賞 マルチェッロ・フォンテ(「ドッグマン」)
スペシャル・パルムドール 「イメージ・ブック」(ジャン・リュック・ゴダール監督)
<短編>
パルムドール 「オール・ゼーズ・クリーチャーズ」(チャールズ・ウィリアムズ監督)
審査員特別賞 「オン・ザ・ボーダー」(ウェイ・シュジュン監督)

カメラドール 新人監督賞 「ガール」(ルーカス・ドント監督)

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