第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にて、最高賞<パルムドール>を受賞し日本中を沸かせた「万引き家族」(2018年6月8日公開)の是枝裕和監督が、5月23日(水)に凱旋帰国!羽田空港内にて記者会見を行なった。

公式上映後に受けた取材では、記者たちから「Touch」と「Love」という言葉が一番多かった

日本人監督の最高賞パルムドール受賞は、1997年の今村昌平監督の『うなぎ』以来、21年ぶりの快挙となり、また、是枝監督作品としては『海街diary』以来3年ぶり5回目のコンペティション部門出品にして、初めてのパルムドール受賞。(カンヌ国際映画祭への出品は、7回目。2004年『誰も知らない』では、主演を務めた柳楽優弥が最優秀男優賞を受賞、2013年『そして父になる』では、審査員賞を受賞)会見場には夜遅い時間にも関わらず、約80名のマスコミが詰めかけ、黄金に輝く“パルムドール”のトロフィーとともに登場した是枝監督に次々と質問が飛び、是枝監督は自身初のパルムドール受賞の感想をはじめ、公開間近の本作に込めた熱い思いを語った。その中で、今回の映画祭で審査員賞を務めた、ケート・ブランシェットが安藤さくらの演技を絶賛していたというエピソードも披露した。

画像: パルムドールのトロフィーを持った是枝監督

パルムドールのトロフィーを持った是枝監督

Q,日本に帰国して、改めて受賞したことに対しての気持ち、そして帰宅したら何をしたいか?

大きな賞であることが、本日このようにお越しいただいたマスコミの方の数をみてわかります。実感が湧くのはこれからだと思います。シャワーを浴びて一息ついたところですが、LINEやメールが山のようにたまっているので、お礼の返信をしたいと思います。

Q,最高賞を受賞したことによって、TVや映画の製作者としての心情の変化はあったりするのか?

変わらないです。スタンディングオベーションをいただいたときも嬉しいけど、TVディレクターの性でつい観察してしまって、純粋に楽しめないんです。それは、僕の強みでもあり、弱点でもありますが、これからも変わらず、TVにも映画にも関わっていきたいと思っています。

Q,『誰も知らない』では柳楽さんが主演男優賞、『そして父になる』では審査員賞は受賞されていますが、今作との反応の違いは?

前のことはあまり覚えていませんが、『誰も知らない』のときも温かったけど、あのときは子供たちの世話で手一杯で、それだけで終わってしまったという印象なんです。、宣伝としては大事だけど、拍手の長さというものは本質的なことではないと思っています。しかし、深夜でも熱い反応だったので、それに対しては前向きに受け止めました。公式上映後に受けた取材では、記者たちから「Touch」と「Love」という言葉が一番多かったんです。それで、届いたなと良い手ごたえは感じました。

Q,本作に出演したことで、城桧吏くんが注目を浴びているが、撮影中、城くんに驚かされたことはあるか?

普段は実年齢よりも幼いぐらい子供っぽいのに、レンズを通すと色っぽいんです。僕の演出上、子供には台本を渡さないので、桧吏も理解していない。でも周りの大人をよく観察していて、撮影が進むごとにカット割りを推測し始めたりしていました。そういう観察力が演技に生かされていたと思います。

ケート・ブランシェットが絶賛した安藤さくらの泣き演技

Q,今後も世界に認められるような映画がつくられていく為に、日本ではどうしていくべきだと思うか?

色んな課題があると思います。現在は、オリジナル脚本で企画が通り映画が製作されることは少ないです。 新たな監督たちを生みだすことは、僕にとっても刺激になるので、映像集団をつくり新しい監督をデビューさせようとその支援を始めています。自分の身の回りからできることはやらないととは思っています。

Q,受賞後、NYに少し滞在されていたそうだが、その理由は?

色々差支えがあって喋れないんですけど、近いうちに情報が発表されるかと思います。でも、打ち合わせは上手くいきました。そのときは、受賞してよかったなと思いましたね(笑)

Q,名だたる監督の作品がある中で自分の作品が受賞された理由について、是枝監督の分析は?

分析というのは、自分で自分の作品を褒めることにもなりますよね?自慢げに聞こえるようで嫌ですが・・・(苦笑)
でも、授賞式のあと映画祭公式のディナーの場で、審査員長を務められたケート・ブランシェットさんに、授賞式後の公式記者会見の際にも仰っていただいたことと同様「演技、監督、撮影などトータルで素晴らしかった」と改めていっていただきました。また、安藤さんの芝居についても熱く語っていて、彼女の泣くシーンがとにかくすごかったと。「今後、私も含め今回の審査員を務めた俳優の中で、今後あの泣き方をしたら、彼女の真似をしたと思って」と仰っていて、その会話から虜にしたんだなとよくわかりました。元々付き合いのあるチャン・チェンは、「家族が見えない花火をみんなで見ているカットが素晴らしかった」といってくれました。他それぞれの方たちとのやりとりが、審査員というよりは、シンプルに作品によって心を動かされたと言ってくれている感じで、良い時間でした。

画像: 『万引き家族』 ©2018『万引き家族』 製作委員会

『万引き家族』 ©2018『万引き家族』 製作委員会

Q,トロフィーは、NYへは持っていかず誰かに預けていたのか?再び自分の手元に返ってきたことへの気持ちは?

NYに持っていくには、筋肉痛が昨日やっとなおってきたくらい重すぎて(苦笑)。スタッフに渡して金庫に預けていたので、今日再会しました。思い出したのが、『誰も知らない』のときは、記者会見で柳楽くんにトロフィーを渡すといった感じのやりとりがあったと思いますが、今回は自分の手元に返ってきたといった感じ。一晩くらいは、抱いて寝ようと思います(笑)。

Q,映画の中で注目してほしいポイントは?

今回役者のアンサンブルがとてもうまくいきました。自分なりの子供への演出と演出も担える樹木さんとリリーさん、安藤さん、松岡さんも相手の演技を受けるのが上手でバランスがよかった。撮影している中で、惚れ惚れするくらいの演技もみせてくれたりと、監督としてはとても恵まれた環境で撮れたと思っています。

Q,映画が出来上がった際に、手ごたえはあったか?

役者が素晴らしかったです。ケートさんも仰っていた安藤さんの泣くシーンは、カメラの脇で立ち会っていても特別な瞬間だと感じましたし、そんなことが他にも何度もありました。いろんな意味で化学反応も起こり、良い映画が出来たと実感はしましたね。

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