薬丸岳の小説「友罪」が『64-ロクヨン-』の瀬々敬久監督によって映画化。W主演に生田斗真と瑛太を迎えた今作は、加害者と被害者、そして少年犯罪といったテーマを扱った衝撃作となっている。ジャーナリストの夢に破れて町工場で働く益田を生田、同じ工場に勤める影のある鈴木を瑛太が演じており、大きな罪に囚われながらも心を通わせていく2人の友情を描いた今作の撮影エピソードや、映画化するにあたり意識したことなどを瀬々監督に聞いた。

【ストーリー】
ある町工場で働き始めた、元週刊誌ジャーナリストの益田(生田斗真)と、他人との交流を頑なに避ける鈴木(瑛太)。共通点は何も無かった二人だが、同じ寮で暮らすうちに少しずつ友情を育ててゆく。そんな折、彼らが住む町の近くで児童殺人事件が起こり、世間では17年前に日本中を震撼させた凶悪事件との類似性が指摘される。当時14歳だった犯人の少年Aはすでに出所しており、その後の行方を知る者は少ない。果たして今回の事件も彼の犯行なのか…。驚きと疑問に突き動かされ、ネットに拡散していた少年Aの写真を見た益田は愕然とする。そこにはまだ幼さの残る鈴木が写っていた――。

画像: 『友罪』
瀬々敬久監督インタビュー

なんでもない瞬間がキラリと光る宝物のようなシーンになる

ーー1997年に神戸で起きた連続児童殺傷事件をモチーフにしたこの小説をなぜ映画化しようと思われたのでしょうか?
「薬丸岳さんの小説は処女作の「天使のナイフ」から読んでいたのですが、「天使のナイフ」も少年犯罪をモデルにしているんです。そして「友罪」でも再び少年犯罪をモチーフにして書かれていたので凄く驚いたというか。10年近く薬丸さんはずっとそこにこだわり続けて描いていたんだなと衝撃を受けたのと同時に、同じ作り手として尊敬の念を抱きました。それから、「友罪」では事件のそのあとを描いていて、罪を犯した人がどうやって償えばいいのかということとや、元少年Aと呼ばれた人と出会い親しくなり、その真実を知ったあとはその人とどう付き合えばいいのかということまで描かれていたので、そこに強く惹かれました」

ーー確かに今作のように少年の時に犯罪を犯してしまった人のその後を描いた作品は日本では珍しいと思いました。
「日本でも実際に毎日のように色んな事件が起きていて、テレビをつければそういうニュースが次々と流れますよね。僕らだって普通に生活を送っていたとしても、今作のようなことに出くわす可能性はゼロではないと思うんです。いざ自分の身にそういったことが起きた場合、どのように向き合えばいいのかということを問うべきなのではないかと。そんなことを考えながら映画化を進めていきました」

画像1: なんでもない瞬間がキラリと光る宝物のようなシーンになる

ーー映画化する際に監督が一番意識されたことを教えて頂けますか。
「小説のモチーフになった事件に当時大きな衝撃を受けたのを覚えていて、そのあとそういう事件を調べたり本を読んだりすることもありました。ただ、「友罪」を映画化する際にはモチーフとなった事件の犯人からは逆に離れようと思ったんです。この映画は事件のその後を描いたものであり、そこはフィクションだと割り切ったほうが物語を考えやすかったというか、僕の中の最終的な終着点が見えやすかったというか。そういったことを意識していましたね」

ーー生田さんと瑛太さんは2009年のドラマ『ヴォイス~命なき者の声~』、2016年に公開された映画『土竜の唄 香港狂騒曲』に続いて3度目の共演になります。瑛太さんとは『64-ロクヨン-』で監督とご一緒されていますが、生田さんと初めてご一緒してみていかがでしたか?
「瑛太くんは一発目から勝負してくるんですけど、生田くんは割と作り上げていくタイプなんだなと感じました。もしかしたら益田という役だからなのかもしれないですけど、とにかく全てが受けのお芝居だったんです。構築していく生田くんに、いきなり直球を投げる瑛太くんというタイプの違う二人のお芝居は見ていて面白かったです。瑛太くんは直球を投げるだけじゃなく、毎回球筋を変えたりするので、そのつど、生田くんの生々しい反応が出て来たのをよく覚えています(笑)」

画像1: Photo by Tsukasa Kubota

Photo by Tsukasa Kubota

ーーちなみに瑛太さんは『64-ロクヨン-』の時も毎回球筋を変えながらお芝居されていたのですか?
「記者クラブの場面では群衆シーンが多かったので記者役の人達が様々な個性的な芝居をしてくるんですけど、彼はその中でもポイントを押さえながら変えてきましたね(笑)。彼は芝居をしながらも空気を感じていて、他の役者達の動きを見ながら毎回違うことを試していました。そうやってベストなものを作品に残そうとしているような印象を『64-ロクヨン-』の時に受けたんです。彼が動きをひとつ変えることで全体が変わることもありますから。それは見ていて凄く面白かったです」

画像2: なんでもない瞬間がキラリと光る宝物のようなシーンになる

ーーそんな瑛太さんのお芝居を今作では生田さんがしっかりと受けてらっしゃって凄く見応えがありました。
「瑛太くんだけじゃなくて坂井真紀さんとのシーンもかなり大変だったので、生田くんに“キツイ?”って訊くと、“キツイっすわ〜…”と。笑ってはいましたけど(笑)。益田を演じるのは精神的に相当キツかったと思います」

ーー女性キャストについても伺いたいのですが、美代子役を演じた夏帆さんに監督が「毎回リミッターを超えてください」とおっしゃったと夏帆さんのコメントに書かれていました。それにはどういった意図があったのでしょうか?
「美代子は元AV女優で壮絶な過去を背負っているので、日常的な芝居の延長にはないキャラクターを演じなければいけない。そう考えると、日常的なお芝居ではなく、自分の芝居の一番ピークだと思ってるところ、つまりはリミッターを超えて欲しいと思って夏帆さんに伝えました。そのぐらいの感じで演じないと美代子という役に説得力を持たすことができませんから。そんなリクエストをうまく読み取って、夏帆さんは見事に演じきってくださいました」

画像3: なんでもない瞬間がキラリと光る宝物のようなシーンになる

ーー辛いシーンが多いなか、鈴木がカラオケで歌うシーンが凄く好きで唯一少しホッとできました。今作では事件のことだけではなく友情を描くことも大事にされていますよね。
「カラオケのシーンもそうですが、僕は益田が鈴木に“公園で飲もうよ”と誘うシーンが好きで、鈴木が振り向いて“じゃあコンビニでつまみでも買って”と半笑いで少しだけ嬉しそうに言うじゃないですか。ああいうのは普通の青年同士の会話にも見えますし、そこには普通の生活の中にある輝きみたいなものが見えてくる。彼らには常に大変なことが起きていますから、カラオケとか公園で飲むといったなんでもない瞬間がキラリと光る宝物のようなシーンになるんです。光と闇のどちらかだけではダメで、両方を見ることでわかるものがあるような気がします」

画像4: なんでもない瞬間がキラリと光る宝物のようなシーンになる

ーーでは最後に、男同士の友情を描いた作品で好きな洋画を1本挙げて頂けますか。
「中学生の頃、日曜洋画劇場で観た『真夜中のカーボーイ』(1969年)が好きです。アメリカン・ニューシネマの代表作とも言われてますけど、男同士の友情だけじゃなくて今で言うゲイっぽいことも描いている作品なんです。当時田舎の中学生だった僕はこの映画にもの凄く衝撃を受けましたし、ラストシーンも凄く印象的でした。主人公の青年と知り合って友情のようなものを築いた男がマイアミへ向かうバスの中で死んでるというね…。悲しい結末だけど最高だなと思いましたよ。『友罪』をご覧になったあとは是非『真夜中のカーボーイ』も観て頂きたいです」

画像2: Photo by Tsukasa Kubota

Photo by Tsukasa Kubota

画像3: Photo by Tsukasa Kubota

Photo by Tsukasa Kubota

(インタビュアー・文/奥村百恵)

監督・脚本:瀬々敬久
原作:薬丸岳(集英社文庫刊)
キャスト:生田斗真 瑛太
     夏帆 山本美月 富田靖子 佐藤浩市他
配給:ギャガ
5月25日(金)より全国ロードショー
ⓒ薬丸 岳/集英社 ⓒ2018映画『友罪』製作委員会

画像: 『友罪』本予告 youtu.be

『友罪』本予告

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