R・J・パラシオの児童小説「ワンダー」を『ウォールフラワー』(12)のスティーブン・チョボスキー監督が映画化。『ワンダー 君は太陽』は遺伝子の疾患を持って生まれた少年が、様々な困難に立ち向かいながら周りの人をも変えていく様を描いている。主人公のオギーを『ルーム』で天才子役と称されたジェイコブ・トレンブレイ、彼を愛情深く支える両親をジュリア・ロバーツとオーウェン・ウィルソンが演じている。今作のプロモーションで来日したスティーブン・チョボスキー監督に、今作への想いや撮影秘話などを語ってもらった。

【ストーリー】
10歳のオギー・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)は遺伝子の疾患で人とは違う顔で生まれ、27回もの手術を受けたせいで一度も学校へ通わずに自宅学習を続けてきた。母親のイザベル(ジュリア・ロバーツ)は夫のネート(オーウェン・ウィルソン)の「まだ早い」という反対を押し切って、オギーを5年生の初日から学校に行かせようと決意する。夏休みの間に、オギーはイザベルに連れられて校長先生に会いに行くと、トゥシュマン先生(マンディ・パティンキン)から「おケツ校長だ」と自己紹介されて、少し緊張がほぐれるオギー。校長先生から「生徒が学校を案内するよ」と言われたオギーは動揺しつつも、紹介された3人の子供達とコミュニケーションをとっていくが…。

画像: 少年オギーの小さな一歩が勇気をくれる
『ワンダー 君は太陽』
スティーブン・チョボスキー監督来日インタビュー

本来の自分であればあるほどこの世界はより良くなっていく

ーー原作「ワンダー」を映画化するにあたり、どんなところに惹かれたのか教えて頂けますか。
「僕の息子が生まれたばかりのときに、娘と息子がこれから飛びだって行く世界について色々と考えました。どの親御さんも、子供のためにこれからの世界をより良い場所にしたいと願うと思うんです。そういう意味でこの原作にとても惹かれましたし、自分の子供達のために作った映画でもあります」

ーー鑑賞前はオギーだけに焦点を当てて描いているのかと思いましたが、オギーのお姉さんのヴィアやミランダ、ジャックなどオギー以外の視点からも描かれていてとても面白かったです。
「原作も映画と同じようにそれぞれの視点で描かれているのですが、僕も最初に読んだとき、オギーの視点からヴィアの視点に変わった瞬間に凄く良い本だなと感じました。例えば登場人物の最初の印象から偏見や先入観をそれぞれのキャラクターに対して抱いてしまうこともありますよね。だからこそ各キャラクターにちゃんと光を当てていくことはとても良い描き方なのではないかと。それぞれの視点で描くと物事がひっくり返るというか、観客が思い込んでいたことが実は違ったんだと知ることができますから」

画像1: 本来の自分であればあるほどこの世界はより良くなっていく
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ーーまさにそれぞれの視点から描かれたエピソードを観ることによって、各キャラクターに共感できましたし、全員が愛おしくなりました。
「僕も今作を撮ったことで、エンパシー(共感力や思いやり)の大切さを改めて感じることができました。それと、先ほどお話しした“物事がひっくり返る”というのは、黒澤明監督の『羅生門』(50)から大きな影響を受けていて、それを反映させたと言ってもいいかもしれません。日本で『羅生門』の話ができて凄く嬉しいです。この話ができるような質問をふってもらえて良かった(笑)。アリガトウゴザイマス!」

ーーちなみに『羅生門』以外で監督が影響を受けた日本映画があれば教えて頂けますか。
「むかし映画学校に通っていたときに観たのはやはり黒澤明監督の作品で、映画史における最も偉大な監督だと思っています。それから小津安二郎監督の『東京物語』(53)。凄くエレガントで静かな感じが素晴らしいですよね。本当に大好きな映画です。あと宮崎駿監督の『もののけ姫』(97)と、最近観た是枝裕和監督の『三度目の殺人』(17)もとても素晴らしかったです」

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ーーありがとうございます。今作の話に戻りますが、主人公のオギーは知恵とユーモアを活かして少しずつ周りに影響を与えていき、『ウォールフラワー』では目立たない男の子のチャーリーがある日出会った兄妹に影響されてどんどん変わっていきますよね。監督は“人は変われるんだ”ということを大事にされていて、それを少しでも多くの人に映画を通して伝えようとされているのではないかと思ったのですが。
「僕は間違いなく人は変われると思っていて、例えば『ウォールフラワー』ではチャーリーやチャーリーが出会ったパトリックとサムの兄妹、そして今作ではオギーや周りの人達みんなが本来の自分であればあるほどこの世界はより良くなっていくんだということを描いています。そういったことをメッセージとして観客の皆さんが受け取ってくださったら嬉しいです」

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ーー個人的に好きだったのがオーウェン演じるお父さんのネートで、彼のユーモアがオギーや観客の心を明るくしてくれるので最後までに深刻にならずに観ることができました。オーウェンにはどんな演出をされましたか?
「まず、僕が思うのはユーモラスな人は明るいだけじゃない別の側面を持っているということ。人によっては怒りを抱えていたり、もの凄く悲しいことを背負っているかもしれない。だからこそその人に深みでるように思うんです。オーウェン自身も凄くユーモラスな人なので、間違いなく別の側面を持っているだろうと確信していました。それで実際にお会いしてみたら“やっぱりな!”と。きっと今までに色んなことを経験されて、それが彼の人間としての深みとなっていると思うし、もの凄く素敵なネートになったと思います」

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ーーオギーとネートのシーンの撮影で印象に残ったことがあれば教えて頂けますか。
「とあるシーンで父親の背中をポンポンと叩くオギーのシーンを撮ったんですけど、実はそのシーンは最初母親とオギーで撮っていたんです。でも撮り終わってから母親より父親のほうがこのシーンにはふさわしいのではないかと思って、ネートとオギーが会話せずとも寄り添っているシーンを後日撮り直してみたら、それはそれはパーフェクトな瞬間でした。男同士というのは気持ちを言葉に出さないことが多いですから(笑)、あのシーンはとても良い場面になったと思っています」

画像6: 本来の自分であればあるほどこの世界はより良くなっていく

ーーでは最後に、小説を映画化する楽しさをどんなところに感じますか?
「一人称で書かれた小説は、主人公の思考がある意味読み手の想像力の限界になってしまうことがありますよね。でも、映画なら映像で見せると同時に心の声も台詞とは別に画にかぶせることができるので、観客によりシンパシーを感じてもらえるんです。主観的な思考と客観的な視覚的情報を並列して見せることができるのが映画の良いところ。そういったことを楽しみながら作ったので、是非映画館で今作を楽しんで頂けたら嬉しいです」

画像7: 本来の自分であればあるほどこの世界はより良くなっていく
画像8: 本来の自分であればあるほどこの世界はより良くなっていく

(取材・文:奥村百恵)

ワンダー 君は太陽
原題:『Wonder』 原作:R・J・パラシオ『ワンダー』ほるぷ出版刊
監督・脚本:スティーブン・チョボスキー 『ウォールフラワー』
製作:トッド・リーバーマン デヴィッド・ホバーマン
出演: ジュリア・ロバーツ『プリティーウーマン』『エリン・ブロコビッチ』オーウェン・ウィルソン『ミッドナイト・イン・パリ』『マイ・ファニー・レディ』ジェイコブ・トレンブレイ『ルーム』ほか
配給:キノフィルムズ/木下グループ
6月15日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
© Motion Picture Artwork © 2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

画像: 映画『ワンダー 君は太陽』本予告60秒 6.15(金)公開 www.youtube.com

映画『ワンダー 君は太陽』本予告60秒 6.15(金)公開

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