アメコミライターとして活躍する杉山すぴ豊さんの連載コラムです。アメコミ関連の映画について、縦横無尽に楽しい知識、お得な情報などをみなさんにお届け。今月は嬉しくなるような快作だった「デッドプール2」の(ネタバレを含む)感想&解説で行きます。

杉山すぴ豊
アメコミ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。

ミュータント・キャラも増えてX-MEN映画色が強くなった「デッドプール2」

いまだ「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」の興奮冷めやらぬ状態です。早くも心は来年の「アベンジャーズ4」ですが、そこにちょっと待った!とデッドプール登場。この「デッドプール2」も嬉しくなるような快作!前作はヒーロー映画というよりアクション映画でした。というのもデッドプール自身の、個人の復讐が戦いの動機になっていましたから。

しかし今回はミュータントの少年を守るために戦います。なのでデッドプールがヒーローらしい活躍をする。さらにミュータント・キャラも増えてX-MEN映画色も強まっています。児童虐待や人生は変えられるといったテーマも盛り込んでいるかと思いきや、前作から引き継がれたお子様厳禁の過激セリフ、バイオレンス、ブラック・ジョークも健在!デッドプール映画として面白く、X-MEN映画として楽しめて、ヒーロー映画として見応えあるエンタテイメントでした。

そして今回も映画ネタ、アメコミ・ネタがいっぱい。まずデッドプールに戦いを挑むケーブル役のジョシュ・ブローリンは「インフィニティ・ウォー」のサノスを演じています。原作コミックではサノスとデッドプールは恋敵みたいな設定があり、ジョシュ・ブローリンがデッドプールと戦う役というのはナイスなキャスティングなわけですね。

画像: ミュータント・キャラも増えてX-MEN映画色が強くなった「デッドプール2」

またデッドプールがケーブルのことを“片目のウィリー”と言いますが、これはジョシュ・ブローリンが「グーニーズ」という映画に出ていて、そこに登場する海賊の名。なお「グーニーズ」の監督はリチャード・ドナーで、彼の奥さんローレン・シュラー・ドナーが「デッドプール2」のプロデューサー。

昨年のウルヴァリン映画「LOGAN/ローガン」では西部劇の名作「シェーン」へのオマージュがありましたが、今回はマカロニ・ウエスタン(イタリアで作られた西部劇)の代表作「荒野の1ドル銀貨」のネタがあります。胸のコインで一命をとりとめる、ところです。下着を付けない状態で足を組み替え“見えそうで見えない”のは「氷の微笑」でシャロン・ストーンが演じた有名なシーンのパロディです。

ラストクレジットのおまけは大爆笑もの

アメコミ映画ネタではブラックパンサー、ホークアイ、ウィンター・ソルジャー、「バットマン vs スーパーマンジャスティスの誕生」の母親の名前ネタが出てきます。ブラック・ウィドウにふれたセリフもありますが、映画でブラック・ウィドウを演じたスカヨハはライアン・レイノルズの元妻なのです。デッドプールご用達のタクシーの看板に“アルファ・フライト”とありますが、これは原作コミックでウルヴァリンも所属していたカナダのヒーロー・チームの名。

そして大爆笑なのは、クレジットの途中のおまけシーン。タイムトラベル装置を使って不幸な過去を修正しまくるわけですが、ウルヴァリンとの対面シーンが登場!実はライアン・レイノルズはデッドプールことウェイド・ウィルソンを映画「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」で一度演じています。ただこの作品のデッドプールといまのデッドプールはあまりに違うので、「ウルヴァリン」版のデッドプールはこういう形で“なかったこと”にされたのです。

さらに“グリーン・ランタン”と書かれた脚本を読もうとしていたら、それを阻止されてしまいます。ライアン・レイノルズは「グリーン・ランタン」というヒーロー映画に出演したのですがこの作品はいまひとつの評価だったので、これまた“なかったこと”に(僕は「グリーン・ランタン」好きですが)。

最後まで楽しめる「デッドプール2」ですが、タイムトラベルを使えば死んでいる人も生き返らせることができる。ならば「インフィニティ・ウォー」だってデッドプールみたいな手を使えば消えていったヒーローたちを復活させられるかも(笑)。なお当初のアイデアではクリス・エヴァンスを、あのファンタスティック・フォーのヒューマン・トーチ役!!で出す、というプランもあったそうです(笑)。

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