毎月公開される新作映画は、洋画に限っても平均40本以上!限られた時間の中でどれを見ようか迷ってしまうことが多いかも。そんなときはぜひこのコーナーを参考に。スクリーン編集部が〝最高品質〞の映画を厳選し、今見るべき一本をオススメします。今月の映画はハリウッドでも争奪戦となった感動小説の映画化「ワンダー君は太陽」です。

「ワンダー 君は太陽」
監督/スティーヴン・チョボスキー
出演/ジェイコブ・トレンブレイ、ジュリア・ロバーツ、
オーウェン・ウィルソン
ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーリスト第1位に輝き、全世界800万部を突破した小説『ワンダー』を実写版「美女と野獣」の製作チームが映画化。遺伝子の疾患で、人とは異なる顔で生まれてきた10歳の少年オギー。初めて通う学校で彼を待つ苦難や試練、それを支える人々の絆を感動的に描く。主人公を「ルーム」で天才子役として注目されたジェイコブ・トレンブレイが演じ、その母親役でジュリア・ロバーツが共演。

編集部レビュー

Do the Right Thing

DotheRightThing(正しい行ないをしなさい)。いまの世の中、何が正しい行ないなのか時々わからなくなることがあるけれど、そんな時はこの映画を思い出せばいい。

生まれつき普通と違った顔をした男の子。そんな彼を取り巻く家族、友人、先生たち。誰もがいろんな感情を持っている。本当は正しい行ないをしたくても、妬みとか恐れとか利己心とかが邪魔をして、時に相手を傷つけてしまうこともある。どうしたらいいんだろう?

この映画の底に流れているのは、とっても温かい気持ち。チョボスキー監督の前作「ウォールフラワー」も、高校の目立たない“壁の花”の少年をやはり温かい目線で描いていて、僕は大好きだった。そして俳優陣の素晴らしさも付記したい。J・トレンブレーはじめ子役たちの生き生きとした輝きはもちろんだが、大好きなジュリア・ロバーツのお母さんぶりに☆。

レビュワー:近藤邦彦
編集長。正しい行ない、で心に刻まれているのは伊坂幸太郎「チルドレン」の陣内。“レトリバー”の永瀬とのくだりが好きなんだなぁ。

この物語が教えてくれるものは限りなく大きい

顔に障害を持った主人公に、世界は優しくない。でもそんな世界に立ち向かう主人公の勇敢さに、そんな世界に存在する優しさに、何度も涙があふれた。劇中のこんな言葉がとりわけ印象に残った。『正しいことと親切なこと、どちらかを選ぶなら親切を選べ』

原作の作者がこの物語を書いたのは、同じような障害を持つ女の子と出会ったからだという。作者の息子はその子の顔を見て泣き出してしまい、作者は申し訳なく思いながらも息子を連れてその場を離れた。『あのとき自分はどうするべきだったのか?』という問いが執筆の動機になったという。

本作が特徴的なのは主人公以外の視点からも描かれていること。だから見る側も様々な立場から考えることになる。自分ならどうするか。彼らのように勇敢さや優しさを示せるか。この物語が教えてくれるものは限りなく大きい。

レビュワー:疋田周平
副編集長。もし本作を気に入ったら、原作を読んでみるのもオススメ。映画には存在しないジャスティン目線の物語なんかも楽しめます。

オギーを支える健気なお姉ちゃんに涙腺崩壊

画像: オギーを支える健気なお姉ちゃんに涙腺崩壊

この映画は、オギーだけでなく周りの人たちの目線でも物語が語られるところがよかった。特にオギーのお姉ちゃん、ヴィアのエピソードが泣けるんです。

ヴィアは家族の中で弟が“太陽”なら自分は周りを回る“惑星”だと言って、幼いうちから両親を心配させないようにしてきた健気な女の子。新学期、オギーの初めての登校に興味津々の両親に「私の1日も聞いてよ」と誰に聞こえるともなくつぶやく姿が切ない…

家の中のシーンも多いのですが、オギーの大好きな宇宙のデザインに囲まれた広くてかわいいお部屋に比べて、ヴィアのお部屋はちょっと狭く感じます。勘ぐりすぎかもと思いつつ、そんな細かい演出からもヴィアの控えめな性格が伝わってきました。だけど、おとなしかったヴィアが最後に主人公になる瞬間がくるんですよ~。もう完全に涙腺崩壊でした…。

レビュワー:阿部知佐子
オギーのクラスで(イケメンの)先生が教える格言が、うまくストーリーにリンクしていくところもよかった。ステキな先生なんです。

フツーって何だ?

自分が言われてモヤモヤする言葉、それは「フツー○○なのに」。これを言われるといつも、普通って何なんだろう、それはあなたの人生の中での基準であって、あなたと私は物の見方も考え方も全く違う別の人間なんだけどなぁ…。そんなことを考えたりします。

オギーもそう。生まれつき見た目が他の多数の人と違う。でも、オギーにとってはオギーの顔がフツーだし、それがオギーの人生。フツーって何だろう。LGBT問題にしても、国籍にしてもそう。みんな違うのに。違って当たり前なのに。ただ多数派じゃないってだけでいじめられたり、理解してもらうのに時間がかかったり。

みんなフツーじゃないんだよ、表面だけでは見えない部分にこそ目を向けて。そんなメッセージが、素直でクレバーなオギーの人生を通して伝わってきて、鑑賞後、爽やかで温かな気持ちになりました。

レビュワー:中久喜涼子
最近は多分同じクラスにいたら仲良くなってないよな、っていう個性の強い友達が増えました。そんな変化を幸せに思う今日この頃。

ほっこりしながらも考えさせてくれる映画

実在する難病を扱っているとはいえこの映画はあくまで“寓話”だ。世の中にはどうしたってイヤな奴もいるが、原作者は基本的には性善説を取っている。だから、どのエピソードも最終的には落ち着くところに落ち着いてくれる。安心して観ていられるのだ。

トレンブレイくん演じるオギーの顔もグロテスクというほどではないし、お姉ちゃんのヴィアと一時的に仲違いするミランダだって可愛いところがある。ジュリア・ロバーツ演じる母親イザベルの献身ぶりも、さもありなんという感じ。鑑賞後にほっこりした気分になれる映画なのだ。

ただし、この病気についてはやはり考えさせられるので、作られた意味は大きい。ことこの病気に限らず、“偏見”一般についての映画と考えれば、ほっこりしながらも後を引いて考え続けざるを得ないという、単なる娯楽作にとどまらない部分もあるのだ。

レビュワー:松坂克己
オギーの親友になるジャック役のノア・ジュープは「サバービコン仮面を被った街」でマットの息子役を演じている注目株の子役だよ。

我々一人一人もみんな違う顔を持っている

子供が主人公だし、難病ものだし、感動作という言葉がぴったりの作品だけど、そういうカテゴリーに身構えてしまう人も、一旦その気持ちは置いておいて一見したほうが良い。ロビン・ウィリアムズの「ジャック」みたいな映画かな?と思っていたけれど、大きく違うのは、フォーカスされるのが一人ではないこと。時にお姉さんだったり、時に学校の親友だったり、時にお姉さんの友人だったりに視点が移り、悩んでいるのは当事者一人だけではないという、心配りがまさに今風の映画。

来日したチボスキー監督が言ったように『オギーは人と違う顔を持っているのが特徴ですが、考えを変えれば、我々一人一人もみんな違う顔を持っているので、オギーだけが特別な顔というものではないのです』──そんな姿勢が映画自体の佇まいになっているので、見ていて居心地が良いのだろう。

レビュワー:米崎明宏
「ハン・ソロ…」を見る前に、まさかこの映画でチューバッカに会えるとは思っていなかった……

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