90年代には名匠ウォン・カーウァイとタッグを組み、香港映画ブームの火付け役となって以来ガス・ヴァン・サントやジム・ジャームッシュ、アレハンドロ・ホドロフスキーといった数々の著名な映画監督と仕事をともにしてきた撮影監督クリストファー・ドイル。彼がジェニー・シュンと共同で監督を務めた『宵闇真珠』は、時代に取り残されたような香港の漁村をフォトジェニックな風景として捉え、香港の片隅にある漁村を舞台に村を訪れた異邦人と出会ったことで世界を知っていく少女の物語を描いている。
日光を浴びるとやせ細ってしまう奇病に侵された少女を演じるのは、次世代を担う若手女優アンジェラ・ユン、そして少女と出会う異邦人役を国内外の作品で長年活躍し続けているオダギリジョーが演じている。プロモーションのために来日したアンジェラ・ユンに、今作の撮影秘話やロケ地について、更にオススメの映画などを聞いた。

【ストーリー】
香港最後の漁村、珠明村。
幼少時から日光にあたるとやせ細って死んでしまう病気だと言い聞かせられ、太陽から肌を隠して生活する16歳の少女(アンジェラ・ユン)は、透き通るような白い肌の持ち主。村人たちからは「幽霊」と呼ばれ気味悪がられている。日没後、肌を露出しお気に入りの音楽をお気に入りの場所で楽しむことが、少女にとって唯一孤独を癒やす手段だった。ある日、どこからともなくやってきた異邦の男(オダギリジョー)と出会った少女は、今まで知ることのなかった自身のルーツに触れていくことになるのだが・・・・。

Photo by Tsukasa Kubota

街や村の開発が進むと共に色んなものが消え去ってしまうけど、
人の心の中にある郷愁は消えない

ーーアンジェラさんは“少女”をどんな風に捉えて演じられたのでしょうか?
「この子は太陽を浴びるとやせ細って死んでしまう奇病のせいで非常に孤独な、そして世界から隔離されたような環境で育ってきました。どこか人生に対して無気力な部分もあるんですよね。それは脚本を読んで私が少女に抱いたイメージですが、現場では脚本を手掛けられたジェニー・シュンさんと役作りについて細かく話し合うようにしていました。というもの、この作品はジェニーさんの実体験をもとに綴られているので、彼女の思いが凄く込められているんです。ジェニーさんと話していく中で様々なヒントを貰いながら演じていきました」

画像2: Photo by Tsukasa Kubota

Photo by Tsukasa Kubota

ーーどのようなヒントを得ましたか?
「クリストファー・ドイル監督が撮影を担当した浅野忠信さん主演の『地球で最後のふたり』という映画があるんですけど、浅野さん演じる主人公は自殺願望を持っているんです。その主人公はある種の“無力感”を抱えながら生きているので、ジェニーさんと “この映画を参考に演じてみよう”と話して、少女を演じるヒントにしていました」

ーー異邦人の男を演じたオダギリさんとの撮影はいかがでしたか?
「大先輩で、とてもカッコ良い方です(日本語で話してくださいました)。オダギリさんに対してクールで無口なイメージを持っている方も多いかもしれませんが、静かな佇まいでありながらも現場で興味を持ったことをすぐにスタッフさんに質問されたりして、とても好奇心旺盛な方だなと思いました」

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ーーオダギリさんとはどんなお話をされましたか?
「みんなで食事をしたり待ち時間も色々とお話したんですけど……何を話したかは忘れてしまいました(笑)。とにかくとても素敵な方です」

ーー作品の内容に関してもお聞きしたいのですが、この映画はファンタジックな要素もありつつ、社会問題もしっかりと盛り込まれていますね。
「環境保護やエコといった問題は今の香港にとって凄く大きな課題になっています。街や村の開発が進むと共に色んなものが消え去ってしまいますよね。でも、人の心の中にある郷愁は消えるわけではないですし、現実と理想の矛盾の間でいかに知恵を絞って生き残るかということが求められている時代ではないかなと、今作を通して考えさせられました。今回は漁村が舞台になっていますけど、イギリスの植民地になる100年前までは香港は小さな漁村だったんです。なので今作のロケ地となった大澳は現在の香港の縮図とも言えるかもしれません」

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ーー撮影で使った水上家屋は周りにも沢山あるのでしょうか?
「映画に登場する場所は全て実在していて、家として使用している水上家屋はごく一部なんです。実際は長屋みたいに何十軒と連なっていて、撮影中に郵便屋さんが手紙を運んでくるのを見たんですけど、一番奥の家に届けるまでに凄く時間がかかって大変そうでした(笑)。実際に行ってみるととても面白い場所なので興味深いと思いますよ」

ーー水上家屋もそうですが、望遠鏡のようなカメラ・オブスクラのある屋敷もとても印象的な場所で面白かったです。
「あのカメラはあとから屋敷につけたそうです。普通のカメラとは違って逆さまに映るようになっているので、撮影では工夫して逆さまの画をひっくり返して壁に投影できるようにしていました。オダギリさん演じる異邦人の目に映る香港の現実があの風景として壁に投影されているとドイル監督はおっしゃっていました」

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ーーロケ地ツアーがあったら行きたいぐらい素敵でした。ロケーションだけじゃなく、カセットテープのウォークマンが重要なアイテムとして登場するのも面白いです。アンジェラさんはお若いので、カセットのウォークマンは新鮮だったのではありませんか?
「それが、小学生の頃に英語の先生から“家で英語の発音を録音して学校に持ってくるように”という指示があって、幸い家にカセットデッキがあったのでそれを使用していたんです。なので昔からカセットには馴染みがありました。ただ、それはウォークマンではなかったので、街を歩くときはCDウォークマンで音楽を聴いていました」

ーー普段はデジタル配信の音楽も聴いたりされますか?
「聴きます。デジタル配信の良いところは聴きたいと思ったらすぐに探せるところですよね。でも、私はコレクションとして形のあるものが欲しいので、好きなアーティストはCDで買うようにしています」

Photo by Tsukasa Kubota

ーー劇中にはパソコンも携帯電話も登場しませんが、それにも理由があるのでしょうか?
「おそらく、どの時代の話なのか、どういう場所で起きているのかを曖昧にさせたかったのではないかなと思います。監督は“古き良き香港”というイメージでこの映画を見せたかったんじゃないかなと」

ーーでは最後に、アンジェラさんオススメの映画を紹介して頂けますか。
「アスガル・ファルハーディー監督の作品がとても好きで、『別離』や『ある過去の行方』、『セールスマン』がオススメです。あと、マット・デイモンとロビン・ウィリアムスが共演している『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』も好きです。心の扉を閉ざした主人公の複雑な感情表現がしっかりと伝わってきますし、悩んで落ち込んだり、先が見えなくなったときに自分とどう向き合うかといったことも描かれているので凄く勉強になるというか。勇気を持って目の前の現実を受け入れることで人はより強くなれるんだと、私自身もそれを実践しながら日々生きています。この映画には名言が沢山出てくるので、人生に迷ったら是非ご覧になってみてください」

画像5: 街や村の開発が進むと共に色んなものが消え去ってしまうけど、 人の心の中にある郷愁は消えない

(インタビュー後記)
ひとつひとつの質問に丁寧に答えてくれたアンジェラ。よくプライベートで日本を訪れるそうで、「下北沢と原宿によく行きます。ラーメンが大好き! とても美味しいですよね。日本に来たときはいつもラーメンを食べに行きます」とチャーミングな笑顔と共に日本とラーメンへの思いを語ってくれた。
(インタビュアー・文/奥村百恵)

『宵闇真珠』
12月15日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
監督:クリストファー・ドイル、ジェニー・シュン
脚本:クリストファー・ドイル、ジェニー・シュン
撮影監督:クリストファー・ドイル
出演:オダギリジョー 、アンジェラ・ユン
配給:キノフィルムズ
©Pica Pica Media

画像: C・ドイル×オダギリジョー『宵闇真珠』予告編12月15日よりシアター・イメージフォーラムほかにて公開 youtu.be

C・ドイル×オダギリジョー『宵闇真珠』予告編12月15日よりシアター・イメージフォーラムほかにて公開

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