ロサンゼルス在住の日本人アートディレクターChikako Suzukiは、2014年にドン・チードル主演のドラマ「ハウス・オブ・ライズ」でエミー賞の美術賞を受賞している。その後もドラマ「エージェント・カーター」のセットデザインや「ニュースルーム」、マーベルドラマ「マーベル ランナウェイズ」、J・J・エイブラムス製作の映画『Overlord(原題)』などの美術監督を務めてきた。そんな彼女が日本の映画製作者や役者、脚本家などの素晴らしい才能を直接ハリウッドに紹介することを目的としたJapan Cuts Hollywoodという映画祭を今年開催するという。スクリーンオンラインではChikako Suzukiに独占取材を敢行し、ハリウッドで仕事をすることになったきっかけや、アートディレクターの仕事について、映画祭の詳細等興味深い話をタップリと聞くことができた。
まずはその一部をインタビュー第一弾としてお届けする。

最初は“アシスタントで雇ってくれませんか?”と電話をかけまくりました(笑)

ーーアメリカの大学に通われていたそうですね。
「アメリカのサンフランシスコにあるサンフランシスコ州立大学で報道の勉強をしていました。ただ、もう少し娯楽性のあるものを学びたくなって、演劇学部に移って演劇の勉強を始めたんです。そこでは照明や舞台美術、コスチュームなど様々なことを学びました。舞台美術のクラスの先生がとても素晴らしい方でその方の影響でブロードウェイのセットデザイナーを目指すようになり、結局大学院まで行きました。
修士号を取ったカーネギーメロン大学は演劇の分野で全世界でもトップを争うレベルの学校だけあって、周りはミュージカルが好きな人ばかり。もちろん私も好きではありますけど、会話をしている最中に誰かが歌い出したりするとちょっとついていけないなと(笑)。それで、卒業式の次の日に古いトヨタカローラに荷物を詰め込んでアメリカを横断してロサンゼルスへ向かったんです」

ーーロスでは仕事はすぐに見つかったのでしょうか?
「いま思うとよくそんなことしたなと思いますけど(笑)、色んな知り合いに“アシスタントで雇ってくれませんか?”と電話をかけまくりました(笑)。そしたらリチャード・フーバー(『エドウッド』や『ノースカントリー』『Twin Peaks』などのデザインを手がけ、第53回トニー賞で演劇装置デザイン賞を穫っているプロダクションデザイナー)とアポが取れて会いに行くことになって。いつもならお会いする方がどんな人か事前に勉強していくんですけど、たまたまこの時は何も調べずに行ってしまったんです。それで、どうしようかと思って『デッドマン・ウォーキング』のオペラ版の卒論を見せたら彼が“僕は『デッドマン・ウォーキング』の映画版のデザインを担当したんだよ”とおっしゃって。凄く運命的な出会いを感じたのか“今日働ける?”とその場で聞かれてそのまま彼の家で模型みたいなものを作るお手伝いをして(笑)、翌日からアシスタントとして働くことになりました」

画像: 映画「デッドマン・ウォーキング」日本版劇場予告 youtu.be

映画「デッドマン・ウォーキング」日本版劇場予告

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ーーそこからChikakoさんのハリウッドでのキャリアがスタートしたんですね。
「そうですね。アシスタントを経てコーディネーターという美術部の秘書のようなポジションになりました。仕事の内容はバジェットの計算をしたりデザイナーやアートディレクターのスケジュール調整など様々。向こうはユニオン(組合)に入ってないと組合の仕事ができないので、とりあえずコーディネーターの組合に入りました。コーディネーターを4年ほど経験して、「アグリー・ベティ」(2006年〜2010年)に関わっていたときに、デザイナーとして参加していた同じ大学院の卒業生の方やアートディレクターのプッシュもあって、今度はアシスタントアートディレクターに昇格しました」

ーー良いご縁が繋がっていますね。
「本当に。ご縁って大事だなと思いました」

ーーそして最終的にアートディレクターというポジションに昇格されたChikakoさんですが、アートディレクターとはどういったお仕事なのでしょうか?
「まずプロダクションデザイナーが作品全体のイメージを考えて、そのイメージに近づくように持っていくのがアートディレクターの仕事です。スケッチを見せてくださる方もいれば、雑誌の切り抜きを見せて“こんなのが欲しい”とリクエストされる方など、デザイナーさんによってイメージの伝えかたが違います。そこからイメージに合うものを作り上げていくというのがアートディレクターの仕事です」

ーー製図をひいたりすることも?
「それはセットデザイナーの仕事で、そのセットデザイナーや大道具さん、小道具さん、装飾さんなどの面倒を見るのがアートディレクターの仕事というか、いわゆるまとめ役ですね」

ーーこれは凄くこだわって作ったという作品の美術セットを教えて頂けますか。 
「どの作品もこだわって作っているので“この作品の”というのは挙げられないのですが、タイルや水道の蛇口、ドアノブなど細部までじっくり見て頂けると嬉しいです」

画像: 最初は“アシスタントで雇ってくれませんか?”と電話をかけまくりました(笑)

ーー今まで手掛けてこられた作品の中でも印象的だったのは?
「映画『ソーシャル・ネットワーク』の脚本を書いたア−ロン・ソーキンが企画&脚本を担当したドラマ「ニュースルーム」(2012年〜2014年までHBOで放映)は凄く印象に残っています。まず脚本が素晴らしいですし、やっていて本当に面白かったです。あと「カリフォルニケーション」(2007年〜2014年まで放送)というドラマも参加しているのですが、通常のドラマは脚本家のクリエイターがいて、その下にスタッフライターが何人かつくんです。でもこの番組は全て一人の方が脚本を書いていて。その方が音楽好きだったこともあって音楽に関わる話が多かったですし、ラッパーや濃いめのロックスターとか色んな面白いキャラが登場して凄く面白かったです(笑)。私自身も中学と高校でバンドを組んでいたので、自分のエレメントというか、好きなことが重なってかなり楽しませて頂きました。例えばローリングストーン誌のような偽の音楽雑誌を作ったり嘘のレコードを作ったり(笑)。それからミュージシャンならいつかあのステージに立ちたいと言うぐらいのシアターがロサンゼルスにあるんですけど、そこでロケ撮影をやらせて頂いたときは感激しました」

画像: The Newsroom Official Trailer [HD]: Aaron Sorkin, Jeff Daniels Newest HBO Series: ENTV youtu.be

The Newsroom Official Trailer [HD]: Aaron Sorkin, Jeff Daniels Newest HBO Series: ENTV

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画像: Californication | Official Trailer (Season 1) | David Duchovny SHOWTIME Series youtu.be

Californication | Official Trailer (Season 1) | David Duchovny SHOWTIME Series

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ーー今では様々な作品のアートディレクターをされているChikakoさんですが、LAで映画祭を開催されるそうですね。
「“Japan Cuts Hollywood”という映画祭をやります。ハリウッドで仕事をしていると日本人って周りに本当にいないなと感じるんです。日本で活躍されている方で才能のある人もいるので、もっとハリウッドに挑戦してもらいたいなと思ったのがきっかけで映画祭を立ち上げました。私がハリウッドにいる理由を考えたときに、日本の才能ある人や日本の素敵な文化をハリウッドの人達にももっと知ってもらいたいと思ったんですね。映画を通じて日本の文化をアメリカに、日本で映画を撮っている人達をハリウッドに紹介できるような橋渡しの役割がしたいと思って。映画祭はワーナーの副社長と一緒に進めているんですけど、奥様が日本人で日米協会にも深く関わりのある方なんです。去年わたしがプロデュースした映画祭にたまたまその方が来ていて、一緒に映画祭をやりましょうという話になり実現に至りました」

ーーLAで開催される映画祭に参加することでハリウッドで活躍するチャンスも掴めるかもしれないですよね。
「そうですね。ハリウッドの映画業界にいる方も作品を観にきてくれると思いますし、実際にチャンスも舞い込んでくると思います。真剣に映画を作っている人達のお手伝いができれば嬉しいなと。私は生まれも育ちも名古屋なんですけど、今ではこうやってハリウッドで生きていますから、誰にだって可能性はあるはずなんです。もし英語に自信がなければ英語字幕を製作してくれる会社に頼んで作ってもらい、ユニジャパンという公益財団法人が海外の映画祭に参加する日本映画・日本の映画製作者に対して支援を行っているので、そこに申し込んで審査が通れば資金を補助してくれます。それに映画製作者への海外渡航支援なども行っていますから、是非そういったところを活用して応募して頂けたらと思います」

インタビュー第二弾ではJ・J・エイブラムス製作の映画や、マーベルのドラマ「マーベル ランナウェイズ」に参加したときの話、またハリウッド女優との交流秘話などをお届けします。
 

(インタビュアー・文/奥村百恵)

Japan Cuts Hollywood 映画祭
ハリウッドの第一線で活躍する業界人の手によって立ち上げられ、
南カリフォルニア日米協会によって開催される日本映画祭。
アメリカに住む人々はもちろんのこと、
ハリウッドの映画業界人にアプローチするチャンスが与えられる。
[日時] 2019年 11月を予定
[会場] アメリカ ロサンゼルス
[対象作品] 日本人映画制作者の作品、 又は外国人映画制作者による日本をテーマにした作品。
短編:3分から25分
長編:26分から120分以内
ジャンルはフィクション、ドキュメンタリー、アニメーション、ミュージックビデオなど
※英語字幕付きであること
[エントリー費] 短編:30USドル、長編:50USドル
[主催] 日米協会南カリフォルニア
応募締め切り:2019年7月25日

[応募手続はコチラから]
https://filmfreeway.com/Japan_Cuts_Hollywood

[問い合わせ先]
info@japancutshollywood.com

(Chikako Suzukiプロフィール)
日本生まれの日本育ち。現在はアメリカ国籍で、カリフォルニア州ロサンゼルス在住。
カーネギーメロン大学、演劇学部で修士号を取得。卒業後はハリウッドで美術監督として活躍。
2014年に”ハウスオブライズ”でエミー賞を受賞。英語と日本語のバイリンガル。現在古文書の勉強中。将来の夢は時代劇の美術を担当する事と日米合作映画を作る事。
H.P:http://chikakosuzuki.com
ブログ:https://ameblo.jp/chikakoart/entry-12436107694.html

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