先月行われた第91回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚本賞を受賞した映画『グリーンブック』。『ジム・キャリーはMr.ダマー』(94)や『メリーに首ったけ』(98)などコメディ作品で知られるピーター・ファレリーが監督を務め、二度アカデミー賞にノミネートされたヴィゴ・モーテンセンが用心棒のトニー・リップを、『ムーンライト』と今作で二度アカデミー賞助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリが天才黒人ピアニストのドクター・シャーリーを演じている。
今作はトニーの実の息子であるニック・バレロンガが脚本を書き上げ、人種差別を扱いながらも実際のエピソードをユーモアタップリに盛り込んだ極上のエンターテイメントムービーとなっている。
初来日を果たしたピーター・ファレリー監督に、『グリーンブック』撮影秘話や大きな影響を受けた映画監督などを語ってもらった。

【ストーリー】
1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ・コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、ガサツで無学だが腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。ある日トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。ピアニストの名前はドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)。彼はカーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才だ。ところがシャーリーは差別が色濃く残る南部での演奏ツアーを目論んでいた。トニーとシャーリーは〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに出発するが……。

画像: 『グリーンブック』
ピーター・ファレリー監督来日インタビュー
影響を受けた映画監督について語った

自分の心が求めていたから映画を作ってきた

ーーアカデミー賞受賞おめでとうございます。まずはオスカー像を手にしたときの心境からお聞かせ頂けますか。
「正直なところ未だに実感が湧かないというか、信じられない気持ちでいっぱいなんです」

ーー先日行われた舞台挨拶に登壇された際に監督が“『グリーンブック』”、観客が“アカデミー賞受賞おめでとう!”という掛け合いをするはずがリハーサルでは監督が『グリーンブック』を『Shoplifters(『万引き家族』の英題)!』と叫んで場内を笑わせてらっしゃいました。『万引き家族』はご覧になられましたか?
「観ました。というのもアカデミー賞受賞式の1〜2ヶ月ほど前に是枝裕和監督とお会いして、その時はまだ『万引き家族』を観てなかったんです。それで翌日、妻と観に行ったら、なんて凄い映画なんだろうと。自分達の見知らぬ東京や日本の側面が描かれていて、ストーリー展開においても誰が誰とどういう関係でどうなってといったことをパズルのピースをはめていくように観ていたんですよね。その感覚が一風変わってて凄く面白かったんです。とても好きな作品でした」

ーー『グリーンブック』の話に戻りますが、ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリがとっても魅力的にそれぞれの役を演じられていて、劇中のエピソードはどれも心を掴むものばかりでした。そしてそれは実際に起きたことだそうですが、あるコンサート会場でボロボロのピアノしか置いてなくて、トニーが“スタインウェイのピアノを用意しろ”と会場のスタッフに言うシーンが好きでした。あれも実話ですか?
「あれも実際に起きたことです。実は僕も大好きなシーンなんです。トニーが初めて自分のやるべき仕事をこなしたシーンでもありますし、初めてドクター・シャーリーのために役立っているシーンでもあります。といってもシャーリー自身はトニーがあの時にしたことを知らないかもしれませんが(笑)。あと、あの段階ではまだトニーは差別主義者的なところが残っているんです。というのも、シャーリーへの無礼に腹を立てたわけではなくて、自分に対して失礼な態度をとられたことに腹が立ったから暴力をふるってしまったわけで。あの時点でトニーはまだ自分のことしか考えてないところが面白い。そしてあのシーンでは“なぜトニーのような男を雇わなければいけなかったのか”ということを改めて思い出して欲しかったんです。そう言う意味でもあのエピソードを入れて良かったなと思います」

画像1: 自分の心が求めていたから映画を作ってきた
画像2: 自分の心が求めていたから映画を作ってきた

ーーアカデミー賞受賞式で「私たちは、みな同じ人間だ」とスピーチされていましたが、そこにはどんなメッセージが込められているのでしょうか?
「僕は、ただ人間が好きなんです。そして物語を作る上で、どんなキャラクターであっても贖罪の余地がなければいけないと思っています。例えば今作ではトニーが黒人が使ったグラスをゴミ箱に捨てるシーンがありますけど、そこから観客にトニーを好きになってもらえるようにキャラクターを作っていくことは大きなチャレンジでもあり大事な部分だと思っていて。人は誰でもどこか欠点があるものですし、どんなに悪い人にも良いところが一つはあるはず。そういったことをこれからも描いていければと思っています」

画像3: 自分の心が求めていたから映画を作ってきた

ーー今作ではトニーとシャーリーが旅を通じて成長し、大きく変化していきますよね。そういった、これから何かを始めようとしている人や旅に出ようとしている人達に向けて伝えたいメッセージはありますか?
「もちろん何をするにも最大の努力はしなければいけませんが、まずは自分の心の声に耳を傾けて、その言葉に導かれるままに生きるといいと思います。僕も他人から何かを言われてやったことは今まで一度もなくて、自分がやりたいから、そして自分の心が求めていたから映画を作ってきました。『ジム・キャリーはMr.ダマー』も『グリーンブック』もそうです。自分の心の声に従っていけば、予想もしてなかったような扉が自然に開いたりすると思いますよ」

画像4: 自分の心が求めていたから映画を作ってきた

ーーでは最後に、監督が今までに大きな影響を受けた映画監督を教えて頂けますか。
「『フライングハイ』を監督したザッカーブラザーズ(兄のデヴィッド・ザッカーと弟ジェリー・ザッカー)とジム・エイブラハムズからは大きな影響を受けています。彼らは『裸の銃を持つ男』の脚本も手掛けていますよね。作品ももちろん好きですが、ある日ザッカー兄弟が「ザ・トゥナイト・ショー」というトーク番組に出ているのを見ていたら、業界人っぽさが全くなくて、自分も映画監督になれるかもしれないと思えるような“普通さ”を二人から感じたんです。それがきっかけで映画監督を目指すようになりました。映画業界に入ってからは『羊たちの沈黙』で有名なジョナサン・デミ監督の作品のルックに影響を受け始めて、中でも『サムシング・ワイルド』は大好きな作品なんです。実は『サムシング・ワイルド』を観てジェフ・ダニエルズを『ジム・キャリーはMr.ダマー』に起用しようと思ったんですよ(笑)。色んな映画監督から影響を受けていますが、私にとって一番大きなインスピレーションを与えてくれたのはデミ監督です」

撮影:Yoshiko Yoda (ピーター・ファレリー監督来日時Photo)

(インタビュアー・文/奥村百恵)

『グリーンブック』
全国公開中
監督:ピーター・ファレリー
出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ
提供:ギャガ、カルチャア・パブリッシャーズ
配給:GAGA
© 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

画像: 【公式】『グリーンブック』3.1(金)公開/本予告 《本年度アカデミー賞作品賞含む3部門受賞!》 youtu.be

【公式】『グリーンブック』3.1(金)公開/本予告 《本年度アカデミー賞作品賞含む3部門受賞!》

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