今のフランス映画界を代表するスター的存在の一人、圧倒的知名度で人気を博すのが、ロマン・デュリスです。最新作『パパは奮闘中!』では、妻に蒸発されて、思いもかけずにシングル・ファーザーとなってしまい、仕事と家庭の両立に大奮闘する男を演じてみごと。ギョーム・セネズ監督と共に来日の折、インタビューが叶いました。

オファーに応える変幻自在の演技力

その人気が衰えないのは、精力的に間髪おかない出演作が続いてもいるから。セドリック・クラピッシュ監督から始まって、フランスで活躍中の注目の監督のすべてと言っても過言ではない、多くの監督からのオファーに応え、枚挙の暇なく恵まれた作品でキャリアを重ねています。

その才能と魅力は、俳優としてのイメージ、印象が定まらないといっても良いほどの、カメレオン的キャラを演じるというところも、見せどころでしょう。言うなら、演じることのチャレンジャー。

変幻自在さは、活劇小説のスーパーヒーローの怪盗ルパン(『ルパン』ジャン=ポール・サロメ監督/2004)であったり、歴史上の人物モリエール(『モリエール恋こそ喜劇』ローラン・ティラール監督/2010)であったり、はたまた女装する自認女性(『彼は秘密の女ともだち』フランソワ・オゾン監督/2014)にもなり切り、誘拐犯のボス(『ゲティ家の身代金』リドリー・スコット監督/2017)や恐ろしい人身売買の男(『大いなる闇の日々』マキシム・ジルー監督/2018)などなど、語るに尽きぬ、唸らせ、笑わせ、恐がらせ……、まさに俳優としてのプロフェッショナルと讃えないわけにはいかない存在です。

そして、最新作は、シングル・ファーザーと来ましたか!

タッグを組んだ監督は、本作が第2作目という新進気鋭にして、映画界から嘱望と注目を集めている、ベルギーとフランスの二つの国籍を持つという監督、ギョーム・セネズ。

3本の短編が、多くの映画祭で受賞するなどの高い評価を得て、満を持して取り組んだ処女作『Keeper』(15)で、トロント、ロカルノなど70以上の映画祭に招待され、アンジェ映画祭のグランプリをはじめ、20以上の賞に輝く快挙を成し遂げています。

監督の経験から着想されたテーマ

画像1: 監督の経験から着想されたテーマ

そして、2本目に取り組んだのが、2018年度のカンヌ国際映画祭監督週間に出品を果たした本作、『パパは奮闘中!』。

出演依頼にこころよく応じた、ベテランのスター俳優への「注文」は、シチュエーションごとに、主人公になり切っての台詞をデュリス自身が独自に考え演技させるという大胆なものでした。この独創的なメソッドがデュリスにとっても大いに刺激となったようで、今年のセザール賞最優秀男優賞にノミネートを果たしました。

『Keeper』の制作中に、離婚して子供を引き取るという経験を身をもって体験したセネズ監督。離婚に限らず、死別なども含め、バランスが保たれているうちは考えることもない家庭と、自分が続けたい仕事のこと。母親不在になった時、父親としての家庭と仕事の両立という初めて訪れる危機から、それまでになかった人生設計を考えることになり、今の時代においての父性とは?というテーマがもたらされたといいます。

画像2: 監督の経験から着想されたテーマ

シングル・ファーザーというと、一時期は、本作品チラシの謳い文句にも掲げられていますが、あのダスティン・ホフマン演じるところの『クレイマー、クレイマー』(1979)が、未だ記憶によみがえります。「クレイマーやってます」とか、「クレイマーになっちゃって」というやりとりが巷でも飛び交ったその頃は、シングル・ファーザーの代名詞はクレイマーでした。

今回描かれるキャラクターも、ホフマン演じたパパ同様、仕事に夢中で家庭のことは妻任せ。妻がいるから母親がいるから、安心して仕事に没頭出来るとも言えるのですが、耐えられなくなった妻から捨てられるという不運に見舞われます。青天の霹靂とはこのことで、お気の毒の極み。

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