今回初めて単独主人公として映画化されるジョーカー。バットマンの宿敵として長年人気を誇るこのヴィラン、なかなかつかみどころがありません。新作「ジョーカー」を見る前にそのオリジナルのルーツと様々な映像作品で語られたその正体の変遷を、もう一度おさらいしておきましょう。(解説:紀平照幸/デジタル編集:スクリーン編集部)

バットマン最大の敵がどんな男か知っていますか?

オリジンは泥棒が化学物質のタンクに落ちて異様な姿に変貌したというもの

バットマン=ブルース・ウェインの最大の敵と言えば、誰もがその名を挙げるのが“ジョーカー”。全身黒ずくめのヒーローに対し、白塗りのヴィランと、見た目も正反対。緑色の髪の毛と笑顔の形に吊り上がった真っ赤な唇がトレードマークだ。初登場はバットマン誕生の翌年の1940年、『バットマン』コミックの第1号。戦前の映画「笑う男」のコンラート・ファイトとトランプのジョーカーのビジュアルにヒントを得て、シャーロック・ホームズに対するモリアーティ教授のような存在として生み出された。

もっともアメコミゆえにリブートされるたびに設定や外見は微妙に変わっていくが、ここではその代表的なものを紹介していこう。最も一般的なオリジンは、コソ泥だった男が化学物質のタンクに落ち、現在の姿に変貌したというもの。ここに、“元は売れないコメディアンだった”という要素が加えられたり“妊娠している妻がいたが、胎児と共に亡くなってしまった”となったりもしている。

ジャック・ネイピアという本名が記されているものもあるが(ティム・バートンの映画版はここに準拠)最近では本名はおろか、なぜこの容貌になったのかも不明にしているものが多い。これによって、ライターが自由に想像の翼を広げることができるようになり、ジョーカーの物語の可能性が大きく広がることにもなったのだ。

最新作「ジョーカー」のホアキン・フェニックス

人の死や街の破壊すらジョークにしてしまうサイコパス

性格は徹底したサイコパス。“面白ければ何をやってもいい”をモットーに、大量殺人すら笑いながら成し遂げてしまう。人の死や街の破壊すらジョークにしてしまうのだ。コミック・コードの関係で1950~1960年代は“単なるジョーク好きの変なおじさん”になっていた時期もあったが、1980年代以降は残忍な嗜好が目立つようになった。

バットマンの愛する人たちに危害を加えることで彼を苦しめることに喜びを感じ、凶行に及ぶこともしばしば。

初代のロビンであるディック・グレイソンが“ナイトウィング”として独立した後、二代目ロビンとなったジェイソン・トッドを殺害したのはジョーカーだし、バットガールだったバーバラ・ゴードンを銃撃して下半身不随にしたのも彼なのだ。ゴードン市警本部長の妻サラを殺害したこともある(その後ジェイソンが“レッドフード”として復活したり、バーバラがハッカーの“オラクル”として女性ヒーローチームを結成したりもするが、それはまた別の話)。

作者のコミック・ライターの一人、ジェリー・ロビンソン

刑務所に入ってからもやりたい放題で、その末路もバラエティーに富んでいる?

バットマンに捕らえられた後はアーカム・アサイラムの独房に拘束されることが多い(死刑を免れるために狂気を装っている、という説もある)が、そこでも自らの犯罪哲学を語ったり、担当の精神科医ハーリーン・クインゼルを洗脳してパートナーの“ハーレイ・クイン”にしてしまったりとやりたい放題(ちなみにハーレイには『プリンちゃん』と呼ばれている)。

しかし、その末路としては、自分と関わりのない犯罪の責任を負わされて死刑判決が下されたり、他の多くのヴィランと共に遠くの惑星に追放されたりというものもある。それでもまた、いつの間にか復活してバットマンと対峙しているわけなのだが。

ところで、日本では単に“ジョーカー”と呼ばれているが、原作コミックでの正式表記は“THE JOKER”。定冠詞のTHEが付いていることで唯一無二の存在であることを示している。1975年にはバットマンのヴィランとしては初めて『ジョーカー』という自らの名をタイトルにしたコミック・シリーズを持った、まさに破格の存在でもあるのだ。バットマンの永遠のライバルとして、その姿はこれからも形を変えて描かれていくことだろう。

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