ワーナー・ブラザースより発売中の海外TVシリーズ「トゥルー・ディテクティブ 猟奇犯罪捜査」。そのリリースを記念して行なわれた映画評論家・町山智浩氏によるトークイベントの様子をお届けする。

マハーシャラ・アリは科学的に演技を分析している役者の一人

「トゥルー・ディテクティブ 猟奇犯罪捜査」は、事件当時の1980年、再捜査が行なわれる1990年、そしてウェイン刑事が記憶を辿りながら事件に向き合う2015 年と3つの年代が交差しながら進むハイクオリティーなアンソロジードラマだ。何度も見返したくなる緊迫のクライムサスペンスで本国での放送時から大きな話題となり、辛口レビューサイトでも高評価を叩き出している。そんな本作をより楽しむためのポイントを町山氏ならではの視点で語った。

画像: 映画評論家の町山智浩氏

映画評論家の町山智浩氏

主演を務めるのはアカデミー賞を2度受賞したマハーシャラ・アリ。本作では、ベトナム戦争で索敵特殊部隊に所属していたのち、アーカンソー州で刑事となった主人公ウェインを演じている。

画像: 3つの年代を演じるマハ―シャラ・アリ

3つの年代を演じるマハ―シャラ・アリ

町山氏は「アリは大学で演劇理論を学んでおり、科学的に演技を分析している役者の一人。その他にも『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』でアカデミー賞を受賞したオクタヴィア・スペンサーはニューヨーク大学で演技を学んでいるし、『それでも夜は明ける』『アス』『ブラックパンサー』に出演しているルピタ・ニョンゴもそうです。アメリカでは演技は大学で研究されるもので、育ちや教養、立ち振る舞いなど、科学的に分析して演技をする潮流があります」と、アメリカで主流となっている驚きの演技法を紹介。さらに「意外にも彼にとって本作は初主演作品ということで、かなり気合も入っていますね」とアリの演技に注目してほしいと力説した。

物語のベースは実際に起きた2つの冤罪事件

本編では1980年に森の中で祈るような姿の少年が遺体で見つかる。その近くには謎の藁人形が置いてあり、悪魔的儀式らしいという疑惑がささやかれるが、その一方で、少年と一緒に行方不明になった妹のジュリーは発見されず、彼女の行方が1つのサスペンスになっている。

画像: 事件の標的となる幼い兄妹

事件の標的となる幼い兄妹

本作はアメリカで最も貧しいと言われている南部のアーカンソー州が舞台。町山氏によると実際にあった2つの事件が基になっているという。1つはフランクリン信用銀行が関与したとされた幼児売春斡旋疑惑。1988年から1990年にかけてネブラスカにあったフランクリン連邦信用金庫が幼児の誘拐拉致売春に関与していたという疑惑が蔓延したことがあったそう。「その信用金庫は潰れてしまいましたが、実際に捜査をしたら実は信用組合をクビになった男が流した噂だったそうです。恐ろしいものですね」と衝撃の事件の真相を解説した。

もう1つは1994 年にアーカンソー州で起きたウェスト・メンフィス3という冤罪事件。森の中で3人の子供が全裸で性器を切り取られた状態で発見され、悪魔教による儀式で殺されたのではと、証拠がないにも関わらず3人の少年が逮捕された。町山氏は「アーカンソー州はキリスト教原理主義の厳しいところで、彼らはメタリカ(アメリカのバンド名)やメタル系音楽を聴いていたという理由だけで逮捕され、その後死刑判決が出ました。それが報道された時、当のメタリカは驚き、ヘビーメタルのミュージシャンや俳優のジョニー・デップらもこの判決は不当だと署名運動を起こし、10年以上かけて2011年にようやく彼らは釈放されました」と話し「どちらも冤罪ですが、その2つの事件がベースにあります」と、実際の事件がモデルとなったことを明かした。

物語の軸は2つのラブストーリー⁉

町山氏によると本作は2つのラブストーリーを描いているという。1つは主人公のウェインと妻アメリアの物語。2人は結婚して子供にも恵まれるが、ストーリーの中ではいつの間にか妻は時間軸から消えている。3つの時間軸が並行するため、どこで消えたかわからないのだ。町山氏は「この愛がどうなるのかというラブストーリーが、1番の軸なのです」と2人の関係が物語のカギとなることを匂わせた。

画像: いつの間にか時間軸から消えるウェインの妻アメリア

いつの間にか時間軸から消えるウェインの妻アメリア

もう1つのラブストーリーはウェインの相棒で白人刑事のローランドとの愛(?)。『ブレイド』で悪役をやっていたスティーブン・ドーフが相棒ローランドを見事に演じている。「黒人と白人のコンビなんですが、人種を超えた友情があっていわゆるBLですよ。相棒同士の秘めたる愛の物語でそこも結構泣かせるんです」と 町山氏ならではの視点で2人のコンビ愛を表現した。

画像: 相棒役のスティーヴン・ドーフ

相棒役のスティーヴン・ドーフ

最後に「主人公のウェインは事件の真相を探らないといけないのに、記憶がどんどん消える状況と闘っていきます。どこまでが現在で、どこまで過去かわからなくなっていく。人は歳をとると嫌なことを忘れようとしますよね。ウェイン自身も最初は正義の刑事だと思っているのですが、彼自身が罪を犯しているんです。それもだんだん分かっていく。様々なテーマを持ち合わせた作品。重たいけれど、大きな感動が待っています。複雑だけど何度も観たくなる作品です!」と締めくくった。

画像: 「トゥルー・ディテクティブ 猟奇犯罪捜査」 ブルーレイ発売中、DVDレンタル中 ■ブルーレイ コンプリート・ボックス(3 枚組)¥11,818+税 ■DVD レンタル Vol.1~Vol.5 各 2 話収録 ※Vol.1.5 のみ 1 話収録 【映像特典】(約 130 分 ※予定) ●30 年の時を超えたデザイン ●企画/製作総指揮ニック・ピゾラットと音楽T=ボーン・バーネットの対談 ●第8話 墓標 エクステンデッド版 販売:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント © 2019 Home Box Office, Inc. All rights reserved.HBO® and related channels and service marks are the property of HomeBox Office, Inc.

「トゥルー・ディテクティブ 猟奇犯罪捜査」
ブルーレイ発売中、DVDレンタル中
■ブルーレイ コンプリート・ボックス(3 枚組)¥11,818+税
■DVD レンタル Vol.1~Vol.5 各 2 話収録 ※Vol.1.5 のみ 1 話収録
【映像特典】(約 130 分 ※予定) ●30 年の時を超えたデザイン ●企画/製作総指揮ニック・ピゾラットと音楽T=ボーン・バーネットの対談 ●第8話 墓標 エクステンデッド版
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