最新インタビューを通して編集部が特に注目する一人に光をあてる“今月の顔”。今回取り上げるのは、初ハリウッド監督作「マイティ・ソー バトルロイヤル」で才能を発揮し、瞬く間に売れっ子となったタイカ・ワイティティ。俳優としても活躍する彼が演技について、そして自身の生い立ちと本作の浅からぬ関係などについて語ってくれた。

タイカ・ワイティティ
自身初のハリウッド作品「マイティ・ソー バトルロイヤル」(2017)を大ヒットに導き、その卓越したコメディーセンスとストーリーテリングを武器に業界を席巻中の俊英。今後もスター・ウォーズのスピンオフドラマ『マンダロリアン』(ディズニーデラックスで配信中)、『ソー:ラブ&サンダー(原題)』が控えるなど、これからの映画界を牽引する最注目人物。1975年8月16日、ニュージーランド生まれの44歳。

子供のように振る舞う大人ほどカッコよくて魅力的なものはありません

画像1: 子供のように振る舞う大人ほどカッコよくて魅力的なものはありません

マーベルの人気者マイティ・ソーの世界にコメディー要素を加え、ファンを大熱狂させた「マイティ・ソー バトルロイヤル」。メガホンを取ったのは、当時まだ知る人ぞ知る存在だったニュージーランド出身のタイカ・ワイティティーだった。その評判は瞬く間にハリウッドを駆け巡り、続くシリーズ第4作「ソー:ラブ&サンダー(原題)」の監督、さらにスター・ウォーズ初の実写ドラマ『マンダロリアン』でもエピソードを任されるなど、“エンタメ界の最重要人物”として存在感を高めつつある。

周囲の期待値が否応にも上がる中で公開されるワイティティーの最新作「ジョジョ・ラビット」は、久しぶりに監督、製作、脚本、出演の四役を務めた意欲作。その評価はすでにトロント国際映画祭の観客賞受賞という形で証明されている。元々俳優としてキャリアをスタートさせたワイティティーは、自身の作品にほぼ必ずといっていいほど顔を出す。

今回彼が演じるのは、ナチスへの忠誠を誓う少年ジョジョの空想上の友達アドルフ・ヒトラー。自身もマオリ系ユダヤ人として育ち、ある程度の偏見も経験したというワイティティー。しかも祖父は第二次世界大戦でナチスと戦ったこともあるという彼が本作でヒトラーを演じるのは、決して偶然ではないだろう。

──アドルフ・ヒトラーに対する最 初の記憶を覚えていますか? その時 の印象が本作のアドルフ像への参考 になったのでしょうか。

『ヒトラーについての最初の記憶は 「フォルティ・タワーズ」のようなイギリスのTVコメディーだったはず です。はっきりと思い出せませんが、彼の名前はいつでもそばにあったので認識はしていました。そもそも彼を本物として演じようとは端から思っていないので、その時の印象は何の参考にもなっていません』

──本作のヒトラーは10歳の少年の“友達”として、かわいらしく描かれていますね。

『大事なことですが、あれは本当のヒトラーではありません。自分の映画にヒトラーを出すつもりは全くないし、ヒトラーが少年と遊ぶなんてありえませんよね。僕が演じているのはジョジョが描く将来の自分像で、もしかしたらこうなるかも、もしくはこうありたいという姿です。

ただ僕が演じるヒトラーは10歳の子供なので、子供のように振る舞い、子供のようなことを言っています。この妄想ヒトラー像は歳のジョジョが父親や今までに出会った他の男性、そして遠くから見ていたヒトラーの印象をおおざっぱにミックスして脳内から呼び出したもの。映画が進むにつれ、妄想ヒトラー像を崩壊させることで第三帝国の瓦解をうまく描けると思いました。

終盤でヒトラーは制服の袖が取れ、ボタンはひん曲がり、髪はぐしゃぐしゃになり、落ちぶれてしまいます。この場面によりジョジョが妄信していたナチス主義への忠誠心に疑問を感じ出したことをうまく表現できたと思います。 ここでのヒトラーはいつも怯えていて、いつも嫉妬しています。それもそうでしょう、彼は親友のジョジョを失おうとしているんですから』

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──そんな妄想ヒトラーが、立派な演説をジョジョに浴びせかけるシーンもあります。

『信じられないと思いますが、あれは本物と同じ演説です。準備のためにヒトラーのドキュメンタリー映像を見始めたのですが途中でやめました。ヒトラーの主張を律儀に再現する義理はないので、ちょっとドイツ訛りを入れて素のままで演じることにしました。この妄想上のヒトラーは服装、ちょび髭、髪型以外は本物とは何の共通点もありません。

実際あの演説をするのは悪夢でした。台詞を忘れ、フラストレーションが溜まっていったことを覚えています。でも台詞を忘れる自分に腹を立てたことがかえってリアルな演技になったかもしれないですね。いつもはもっと小さな役柄でプレッシャーも少ないのですが、今回は自分の役が重要であることを忘れてしまい、自分で書いた独白の台詞も覚えられませんでした。

こんな長い台詞を書いた自分に、そしてそれを覚える羽目になった自分にも腹が立ちました。あの場面だけにテイクはかかったはずです。皆がモニターをじっと見ているのを感じ、余計に緊張してやりにくかったです』

──台詞といえば本作は詩的で印象的な台詞が多いですね。

『台詞は意図的に現代風にしています。それは僕が1944年当時の台詞をどう書いたらいいか分からないからです。事実に基づく必要性も感じませんでしたし、若者に分かりやすいものにしたかった。

「あの変な言葉は何?なんで皆あんな変な喋り方なの?」と感じさせてしまうと、物語から引き離すことになります。「ああ、この映画は現代の設定で、テレビも携帯電話もない町が舞台なんだな」というのが物語に入っていく一つのやり方です』

──ジョジョと母親ロージーの関係もすてきです。

『ジョジョと母の関係性については、シングルマザーに育てられた僕自身の生い立ちが影響していると思います。母は自分を犠牲にすると同時にピエロみたいでもありました。困難に直面した時はいつでも僕の世界を明るいものにしてくれたんです。ほかにモデルとなったのは「アリスの恋」(1974年)のエレン・バースティン。彼女は恐らくスクリーン上で最高のシングルマザーだと思います』

──ジョジョを演じたローマン・グリフィン・デイビスを抜擢した理由を教えてください。

『ローマンは信じられないほど聡明 で感受性が強く、周りの役者にも気を遣います。いつも質問してきて、他の役者の芝居の意味をとらえ、それが自分にどう関係してくるかを理解しようとします。これは場数を踏んだ役者でないとできないことですが、10歳のローマンがそれを考えているのには驚きましたね。彼とは最終段階のオーディションで出会い、一目見た瞬間、ジョジョにぴったりだと 思いました』

──あなたの作品では多くの子役を起用していますね。

『はい。しかも父親のいない子供というテーマが多いです。大人になることが一番大事という人もいますが、子供らしさだって讃えられるべきものだと思います。子供のように振る舞う大人ほどかっこ良くて魅力的なものはありません。

子供だった時と同じエネルギーで花の香りをかいだり、雲を見上げたり、踊ったり、遊んだりする年配の方々です。これこそが世界を癒すのだと心から思います。もし全ての大人が子供に戻れたら、今あるような問題はずっと減るはずですからね』

画像: 瞬く間に売れっ子となったタイカ・ワイティティー本人が語る生い立ち【今月の顔】

「ジョジョ・ラビット」
2020年1月17日(金)公開

監督/タイカ・ワイティティー
出演/ローマン・グリフィン・デーヴィス、タイカ・ワイティティー、スカーレット・ヨハンソン

第二次世界大戦中のドイツを舞台に、空想の友人ヒトラーの助けを借りながら立派な兵士を目指す心優しい少年ジョジョの奮闘と成長をユーモアたっぷりに描く。
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