毎月公開される新作映画は、洋画に限っても平均40本以上!限られた時間の中でどれを見ようか迷ってしまうことが多いかも。そんなときはぜひこのコーナーを参考に。スクリーン編集部が〝最高品質〞の映画を厳選し、今見るべき一本をオススメします。今月の映画は冤罪の黒人死刑囚のために立ち上がった実在の弁護士の姿を通して〝真の正義〞とは何かを問う感動作「黒い司法 0%からの奇跡」です。

黒い司法 0%からの奇跡
2020年2月28日(金)公開

冤罪で死刑宣告された黒人被告人と彼を救うべく可能性0%からの奇跡の逆転に挑んだ弁護士ブライアン・スティーブンソンの感動の実話を「クリード」シリーズのマイケル・B・ジョーダン主演で映画化。死刑囚役にジェイミー・フォックス、法律事務所で働く女性にブリー・ラーソンという二人のオスカー俳優が脇を固める。監督は「ショート・ターム」で注目され、MCUの新作にも抜擢された俊英デスティン・ダニエル・クレットン。

監督/デスティン・ダニエル・クレットン
出演/マイケル・B・ジョーダン、ジェイミー・フォックス、ブリー・ラーソン、オシェア・ジャクソン・ジュニア
© 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

編集部レビュー

画像: 編集部レビュー

原題Just Mercyに込められた願い

原作の訳者あとがきより──その不寛容こそ“自分たちとは違うもの”を分け隔てして排除しようとする心持ちの元凶である──本作が差別や冤罪を描いた多くの映画と一味違うのは人としての思いやりを訴えているからだろう。原題Just Mercyの意図するところだ。

それにしても、ここに描かれている司法のひどさは言語に絶する。正しい判決かどうかより、一度決めたものは変えません、という頑なな姿勢。そこにあるのは弱者のことを思いやらない強者の論理だ。

マイケル・B・ジョーダンが黙々と汗を流す弁護士を好演。そんな彼を支える形で、ジェイミー・フォックス、ブリー・ラーソンらオスカー俳優が顔を並べるという豪華な布陣。でも僕が最も驚嘆したのはティム・ブレイク・ネルソン。ベテランのバイプレーヤーだが、今回のなりきりぶりは随一。アメリカの俳優は本当に層が厚い。

レビュワー:近藤邦彦
新型ウィルスの流行により世界中で人種差別の嵐が吹き荒れている。黄禍論なんて言葉まで。ほんの少しの思いやりがあればいいのに。

不公正に注意を払ってこそ健全な人間になれる

主人公二人の前に立ちはだかる現実に胸が締めつけられる。少女を殺した罪で死刑宣告されたウォルターと彼の無実を証明しようとする弁護士ブライアン。明らかな冤罪なのに、証拠は何もないのに、彼の死刑は覆らない。そこには根深い差別、偏見がある。法の下の“不”平等。これは実際に起きた、“黒人死刑大国”の現実だ。

だからこそ、そんな悲惨な現実の中でも公正を求めて闘うブライアンの姿に深く胸を打たれずにいられない。本作の原題は“Just Mercy=公正(であることこそ)慈悲”。彼の闘いを通してその言葉の意味が胸に沁みてくる。

ブライアン本人が登場するTEDトークは本作とセットで見てほしい必見の内容だ。『不公正に注意を払ってこそ健全な人間になれる』と彼はいう。不公正・不寛容が広がる時代に、人のあるべき姿勢を教えてくれる一本だ。

レビュワー:疋田周平
副編集長。文中で触れているTEDトークはインターネット上で見ることができます。彼の人生の指針になった幼少期の祖母との逸話も必聴!

マイケル・B・ジョーダンには正義がよく似合う

世界中から熱いラブコールを受けるマイケル・B・ジョーダン。子犬のような瞳からは親しみやすさと同時に強い意志と知性を感じます。「ブラックパンサー」は悪役でこそあったものの、己の正義を貫くその真っ直ぐな姿が印象的でした。

今回ジョーダンが演じるブライアン・スティーブンソンは差別と闘う実在の弁護士で、彼が扱ってきた案件をまとめたものが原作。その中でもロースクールを卒業して間もなく出会う事件に焦点をあて、理想に燃える若き弁護士の姿を描いたのが、ジョーダンの魅力にとてもよくマッチしていました。

目の当たりにする不公正な司法は想像を絶しますが、ブライアンは今もその熱意は変わらず、差別に立ち向かっているといいます。今回製作も兼ねたジョーダンも、映画を通して私たちに正義を訴え続けることができる、素晴らしい俳優になるだろうと思いました。

レビュワー:阿部知佐子
ブライアンは“貧困”の逆は“富”ではなく“正義”だといいます。改めて正義とは何かを深く考えさせられる作品でした。

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