LA在住の映画ジャーナリストとして活躍中の筆者が、“SCREEN”のインタビューなどで毎月たくさんのスターに会っている時に、彼らの思わぬ素顔を垣間見ることがあります。誰もが知りたい人気者たちの意外な面を毎月一人ずつお教えする興味シンシンのコーナーです。今回は、「ジュディ 虹の彼方に」で晴れてオスカー主演女優賞を受賞したレネー・ゼルウィガー。

成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて38年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。

ジュディのように使い捨てになるのを避けるため自分でノーと言える状況を作ってきたわ

「ジュディ 虹の彼方に」で晴れてオスカー主演女優賞を受賞したレネー・ゼルウェガー。女主人公のジュディ・ガーランドは非常に背が低いのに、のっぽのレネーが違和感なく演じたのも凄いが、もっと仰天なのは、あの強い美声で知られるジュディの歌を全部自分で歌ってしまったという肝っ玉の役作りである。

『おかしなことに私は一度もジュディを小さいと思ったことがないのよ。人間として大きな尊敬を抱いていること、歌っている時のユニークな動作、威厳、そういう資質を見ていると体の小ささなんて見えてこないもの。映画、動画、色々なニュースの資料、そういうものをじっくりとリサーチして私なりのジュディを作り上げてみたのよ。ノンストップで煙草を吸う彼女のアルトの声、独特なマイクの使い方を練習し、ほっぺたにプラスチックの脂肪を貼り付ける毎日2時間余りのメーク、などなど、私の努力とスタッフの高等な技術でジュディが出来上がったと言えるでしょう。

少女の時の「オズの魔法使」(1939)やセクシーで成熟した時の「スタア誕生」(1954)の彼女ではなく、あまり知られていない、売れなくなってからのロンドン暮らし、心身ともに疲れ果てたジュディだからこそ、50歳になった私が演じることが出来たの。

当時のスターたちはスタジオに何から何までコントロールされていた。少女の頃からジュディは痩せる薬、眠くならないようにする薬、睡眠薬などを処方されて結局はドラッグ中毒になり、アルコールに溺れるようになってしまった。マリリン・モンローも同様、より美しく、スレンダーで「売れる商品」に仕立て上げられて使い物にならなくなるとポイと捨てられてしまうシステムに耐えられなくなって、自殺という悲劇になってしまったでしょう。

今でも程度こそ違っても似たような状況で、私はそういうプレッシャーを避けてきたのよ。自分の健康は自分で守らなくてはと最初からノーと言える状況を作ってきたから』と毅然とした表情で話してくれた。

画像: 「ジュディ 虹の彼方に」

「ジュディ 虹の彼方に」

親指にはめてもてあそんでいる大きな指輪の由来とは?

画像: 90年代の筆者とレネー

90年代の筆者とレネー

『ジュディは生の聴衆を前にしてのパフォーマンスを天才的にやってのけてきたでしょう。私はまず舞台に出ていないので立場が違うけれど映画の仕事は大好き。やり直しがきかないというライブの舞台ではパニックになりそうだけれど、映画の現場は監督とクルーとのチームワークでそれぞれがベストを尽くして良い場面を作り出していく。それが映画の醍醐味でしょうね。生まれついての女優とは言えないけれど女優業が生活の中で最も大事だし、私の拙い人生のゴールであることには間違いないわ』

親指にはめた大きな指輪をいつももてあそんでいるので指輪の由来を聞くと、『これは20年ぐらい前、ニューヨークで衝動買いをしたリングなの。私って何かを触っていないと落ち着かないのね。だからこの石を触っているとちょっとばかり気が落ち着くみたいなの』と少女のようなあどけない表情を浮かべて説明してくれた。

『私の両親は結婚63年目を迎えるのよ!素晴らしいでしょう。父はスイス人、母はノルウェー生まれで移民してきたアメリカという異国で兄と私を大事に育ててくれた。クリスマスになるとそれぞれの母国のお料理を出して楽しい異文化を教えてくれて、いつも想像力を養う努力を見せていたので、私は退屈するという経験を味わったことのないまま今に至っているのよ。とってもラッキーな家族に恵まれているわ』

ミュージシャンのドイル・ブラムホール二世と2012年から交際して、既に8年、安定した生活がレネー復帰の原動力とも言われているが、彼との生活については一切コメントなし。次は『ヘフト』という映画で息子を助ける母親役を演じるそう。息子役を演じるのは「IT/イット」シリーズに出ているオーウェン・ティーグである。

Photo by Rachel Luna/Getty Images

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