主人公は母の葬儀で踊りだした不器用で憎めない男!?
本作は、妻と別居中、仕事も空回りでトラブル続きの警察官ジムが、親権争いの渦中にいる幼い娘との距離感に苦しみながらも、親子の関係を築いていく感動作。不器用で憎めない男と、おてんば盛りな娘の不揃いな愛に泣ける、切なくも心温まる作品だ。
テキサス州の警官ジム・アルノーの愛する母親が亡くなるところから物語は始まる。私生活では妻と別居し、仕事も空回りでトラブル続きのジムは、親権争いの渦中にいる小学四年生のひとり娘クリスタルとは週3回だけ会う生活。
葬儀では遺族を代表してスピーチを任されたジムだったがうまく話せず、娘のピンクのラジカセで母が好んだブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダーロード」に合わせて踊ろうとするが、あえなく故障で失敗。無音のなか涙ながらに踊り出す。バレエ教室を主宰していた母への想いを込めた踊りだったが…。
そんななか親権をめぐる調停で、母の葬儀で踊る映像が奇行の証拠として提出されると、相棒の黒人警官ネイトに八つ当たりし、ついには警官を解雇されてしまう。そんなジムに振りかかった涙の結末とは…。
本作の基となった短編『ThunderRoad』は、愛する母の葬儀で悲しみに暮れる警察官ジムが、娘のラジカセで母の敬愛したブルース・スプリングスティーンの名曲“涙のサンダーロード”を流しながら踊るという、たった1テイクで撮られたコメディタッチの12分の作品。2016年サンダンス映画祭で短編グランプリを獲得し、たちまち複数の映画制作会社の目にとまった。
監督・脚本・編集・音楽・主演を務めたジム・カミングスはその後6本の短編を立て続けに発表し、アメリカのインディー映画界を中心に一躍その名が知られるようになった新鋭。その後資金を集め、自身の原点である短編『ThunderRoad』を長編化。2018年SXSW映画祭ではグランプリを受賞した。
またドーヴィル・アメリカン映画祭では『ブラインドスポッティング』『アメリカン・アニマルズ』を打ち破ってグランプリを受賞するなど、世界中の映画祭で13冠を獲得。全米映画批評サイト・ロッテントマトでも異例の高評価を記録している。
アメリカを代表するロック・ミュージシャン、ブルース・スプリングスティーンのアルバム『明日なき暴走』の冒頭を飾る名曲「涙のサンダーロード」がストーリーの起点となり、映画タイトルの由縁となっている。
また『ブルー・リベンジ』『ローガン・ラッキー』のメイコン・ブレアや、『6才のボクが、大人になるまで。』のビル・ワイズをはじめ、アメリカインディーズ映画の名脇役たちが、監督主演はじめ5役を務めるジム・カミングスを支えているのにも注目だ。
サンダーロード
2020年6月19日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給:ブロードウェイ