映画はなんといってもロマンスものに萌える、燃えるという方々も多いでしょう。不朽の名作「ひまわり」のリバイバルにあわせ、見ておくべき大人の恋愛映画を6つのパターンでピックアップ!誰もが一度は通る有名作から味のある通好みの逸品まで、必見作をずらりとご用意しました。今回は前編です。(文・清藤秀人/デジタル編集・スクリーン編集部)

愛で結ばれた二人のはずなのに…?
パターン1:夫婦の愛

愛し合うカップルが結婚し、幾多の苦難を乗り越えて幸せな人生を終える。でも、結婚ってそんな単純なものじゃないはず。近日リバイバル公開される「ひまわり」(1970)は、愛し合いながらも戦争によって引き裂かれる夫婦の道程を描いた名作だ。

戦争が引き裂いた夫婦の愛を謳いあげる巨匠デ・シーカの名編
ひまわり 50周年HDレストア版(近日公開)

画像: ソフィア・ローレン

ソフィア・ローレン

第二次大戦下、運命のいたずらによって引き離されたイタリア人夫婦の愛と哀しみを「靴みがき」「自転車泥棒」などの巨匠ヴィットリオ・デ・シーカが描くヒット作が製作から50年を記念してHDレストア版としてリバイバル公開。

出演はイタリアを代表する大女優ソフィア・ローレンと名優マルチェロ・マストロヤンニ。共演はロシア版「戦争と平和」のリュドミラ・サベーリエワ。そして今も多くのファンを持つ本作の音楽を担当したのは「ピンクパンサー」などのヘンリー・マンシーニ。ちなみに有名なひまわりのシーンが撮影されたのは現在のウクライナ。

ナポリの海岸で出会い恋に落ちたジョバンナ(ソフィア)とアントニオ(マストロヤンニ)は結婚するが、時は第二次大戦中。アントニオは極寒のソ連の前線に送られてしまう。終戦を迎えても帰らない夫がソ連で行方不明という情報を得たジョバンナは一人モスクワへ向かうが、そこでアントニオは記憶を失った彼を救った女性マーシャ(リュドミラ)と新たな生活を送っていた……

CHECK POINT

画像1: 映画ファン必見!観ておきたい恋愛映画 傑作集【前編】

イタリアの名コンビと謳われたソフィアとマストロヤンニは、本作の他にも「昨日・今日・明日」「あゝ結婚」などの名作で何度も共演を果たしている。その数は全部で10作に及ぶが、実際にロマンスには落ちていない。

原題/ひまわり
制作国/イタリア
制作/1970年
時間/1時間47分
配給/アンプラグド

監督/ヴィットリオ・デ・シーカ
出演/ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ、リュドミラ・サベーリエワ

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また、「ある結婚の風景」(1973)では、結婚10年目を迎えて充実した生活を送っていたはずの熟年夫婦が、突然の口論をきっかけに、片方の浮気が発覚し、一気に夫婦関係は崩壊へ。その劇的展開には驚くけれど、離婚して初めてフラットな関係を勝ち取る男女を介して、結婚が人と人とを結び付ける最良の手段じゃないことを教えてくれる。

画像: 一緒に暮らすことの幸福と難しさを知る

一緒に暮らすことの幸福と難しさを知る

「ある結婚の風景」(1973)
監督:イングマール・ベルイマン
出演:エルランド・ヨセフソン/リヴ・ウルマン

結婚はファンタジーだと言い切るのは「髪結いの亭主」(1990)。主人公は子供の頃に抱いた〝セクシーな女理髪師と結婚する〞という夢を実現させ、仕事も子供も友達も作らず、髪結いの亭主としての至福を味わい尽くすも、夢はあっけなく潰えてしまう。そんな美味しい話ある訳ないからこそ、人は信じたいわけで。

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「髪結いの亭主」(1990)
監督:パトリス・ルコント
出演:ジャン・ロシュフォール/アンナ・ガリエナ

夫婦間の亀裂を掘り下げるという意味では、12年間に渡る結婚生活を時間軸を頻繁に前後させながら描くオードリー・ヘプバーン主演の「いつも2人で」(1967)あたりが先駆的作品。出会い、結婚、浮気、そして妥協と展開する物語は、倦怠期真っ只中の2人を描いた直後に、情熱的な青春時代を挿入することで、抗えない時間の重みを痛感させる構成だ。

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「いつも2人で」(1967)
監督:スタンリー・ドーネン
出演:オードリー・ヘプバーン/アルバート・フィニー

ブロンドのノンポリ(政治運動に興味がない)男と、生まれながらの活動家が結婚して、愛情ではカバーできない生き方の違いを露わにしていく「追憶」(1973)。定職に就かず、自分のキャリアに興味がない亭主と、元医学生で看護師を務める妻が、ステイタスと価値観の違いから決裂を深めていく「ブルー・バレンタイン」(2010)。

画像3: 愛で結ばれた二人のはずなのに…? パターン1:夫婦の愛

「追憶」(1973)
監督:シドニー・ポラック
出演:バーブラ・ストライサンド/ロバート・レッドフォード

画像4: 愛で結ばれた二人のはずなのに…? パターン1:夫婦の愛

「ブルー・バレンタイン」(2010)
監督:デレク・シアンフランス
出演:ライアン・ゴスリング/ミシェル・ウィリアムズ

第二次大戦下、カナダ人スパイとフランス人工作員が恋に落ち、結婚するが、妻側に2重スパイ疑惑が浮上したことで、愛と任務の板挟みになる夫の苦悩と決断を描く「マリアンヌ」(2016)。映画が描く夫婦の形は様々だ。

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「マリアンヌ」(2016)
監督:ロバート・ゼメキス
出演:ブラッド・ピット/マリオン・コティヤール

COLD WAR あの歌、2つの心」(2018)の場合は、政治が絡んでいる分、永遠に寄り添えない夫婦の姿が切ない。冷戦下のポーランドで恋に落ち、亡命したピアニストと、母国に残った歌手には所詮終の住処はなく、2人にとっての結婚は、違う世界で愛を全うするための手段だったという結末が、とにかく心に染みるのだ。

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「COLD WAR あの歌、2つの心」(2018)
監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
出演:ヨアンナ・クーリク/トマシュ・コット

ビューティフル・マインド」(2001)では、実在の天才数学者が数学に託した夢を生涯共有し、夫が重度の総合失調症を患っても尚、側に寄り添い続ける妻の存在が潔いし、「愛、アムール」(2012)では、認知症で次第に人格を喪失して行く妻の面倒をみる夫の献身が、普通は省略する介護現場のリアルを包み隠さず映し出すことで、否が応でも観客に伝わる。夫婦の最期はかくも生々しいものだということが。

「ビューティフル・マインド」(2001)
監督:ロン・ハワード
出演:ラッセル・クロウ/ジェニファー・コネリー

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「愛、アムール」(2012)
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:ジャン=ルイ・トランチニャン/エマニュエル・リヴァ

離婚を決意した若夫婦が、愛してないから別れようとしているわけではなく、徹底的に口論する過程で、皮肉にも愛し合っていることを再確認するのが、最新の夫婦ドラマ「マリッジ・ストーリー」(2019)。だから、「離婚物語」ではなく「マリッジ・ストーリー」なのだ。

画像8: 愛で結ばれた二人のはずなのに…? パターン1:夫婦の愛

「マリッジ・ストーリー」(2019)
監督:ノア・バウムバック
出演:アダム・ドライバー/スカーレット・ヨハンソン

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