突然ホームレスたちの命の避難所となった公共図書館を舞台に、ひとりの図書館員の奮闘を描く感動作「パブリック 図書館の奇跡」が2020年7月17日(金)より公開中。主演・監督を務め、10年をかけた念願のプロジェクトを実現させたエミリオ・エステベス監督に話を聞きました。(インタビュー・文/奥村百恵)
画像: 7/17(金)公開『パブリック 図書館の奇跡』/予告編 www.youtube.com

7/17(金)公開『パブリック 図書館の奇跡』/予告編

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——『ブレックファスト・クラブ』で図書室に居残りさせられていた役から、今では自ら図書館に居残りをしているのが感慨深い、という声あがっています。監督にとって、図書館はやはり思い入れのある場所でしょうか?

親が図書館に連れて行って、遊んでいなさいと言われていました。だから、図書館がベビーシッターみたいなところがあるんです。覚えているのは、当時は図書カードみたいな、本がそれぞれカード式になっていて、そういったカタログを調べたり、あとは昔、日本も一緒だと思うけど、図書館のソートのシステムに数字がいっぱいあって、SFはここ…みたいな。そういうシステムをまず学ばないと図書館のどこにどの本があるのかわからなくて。小学校で確かそういう授業があった気がするんです。ちょっとおたくっぽい子供で、この月のSF一冊、みたいな読むクラブに入っていました。新しいSFが入るたびに直ぐに読んでいて、マイケル・クライトンの「アンドロメダ病原体」も、まさに5、6回読んだんですよね。だから、自分の学校に通い始めた頃の思い出と、図書館で過ごした思い出というのは、ほぼ同じような感じですね。

——劇中に「声を上げろ」という印象的な台詞が出てきますが、監督は本作にどのようなメッセージを込められたのでしょうか?
「自分たちの声をどんな風に使い、どう届けたらいいのかがいまようやく見えてきたのではないかなと僕は思っているんです。アラブの春や香港のデモなんかを見ても若い人が大勢声をあげていますよね。沈黙することに疲弊していたり、本物の変化を求めるのであれば自分たちが声をあげなければいけない。より厳しくなってきている経済格差問題もあるし、若い人たちは自分たちの未来のために声をあげなければという危機感を感じているんじゃないかな。その声は環境問題や政治に関して、あるいは市民の権利を奪うような反民主的政府に対して向けられたものかもしれないけど、どんどん恐れずに声をあげていってほしいというメッセージのようなものを本作に込めています」

——図書館にちなんで、監督にとっての「人生を変えた一冊」を教えて頂けますか。
「いま自宅なのでちょっと本棚の前に行ってみますね(今回は自宅からの電話インタビュー)。どれか一冊というよりもエドガー・アラン・ポーの本すべてから大きな影響を受けていると言えます。10歳ぐらいの頃にポーの本が大好きになり読んでいたのですが、想像力を掻き立てるような世界観や人間のダークサイドを描いた物語に惹きつけられていましたね。短編集なんかは本がボロボロになるくらい何度も読みましたよ(笑)。他にもフランツ・カフカの「変身」、リチャード・バックの「イリュージョン」、J・D・サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」とか様々な本から影響を受けています。子供の頃に読んだ本は今も本棚に沢山並んでいるので、たまに読み返してみるのもいいかもしれませんね」

Profile
俳優マーティン・シーンと女優ジャネット・シーンの長男で、弟は俳優チャーリー・シーンという芸能一家。俳優だけでなく監督、脚本家などとしても活躍し、監督作「ボビー」はゴールデングローブ賞作品賞候補に。1962年5月12日生まれの58歳。

画像: 名匠エミリオ・エステべス監督が語る「人生を変えた一冊」

About Movie
パブリック 図書館の奇跡
The Public
監督:エミリオ・エステベス
出演:エミリオ・エステベス、アレック・ボールドウィン、テーラー・シリング、クリスチャン・スレーター
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公共図書館の元副理事のエッセイに着想を得て、「星の旅人たち」のエミリオ・エステベス監督が10年をかけて完成させた感動作。記録的な大寒波でホームレスによる図書館占拠事件が勃発。大騒動に巻き込まれた図書館員の奮闘を笑いと涙をまじえて描く。

2020年7/17(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

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