アメリカではいまだ新型コロナウイルス禍が収まりを見せず、映画界も大きなダメージを受け続けています。大型作品の公開延期や公開形態の変更、再オープンできない劇場側や、止まっている新作の製作にも新たな動きが見え始めました。そんな映画界の近況を再びハリウッド現地からレポートします。(文・LA在住 荻原 順子/デジタル編集・スクリーン編集部)
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止まらないウイルス
感染者拡大状況は東部から西部や南部へ

米国におけるコロナウイルス感染者数増加のピークは過ぎたとして、2020年6月より全米各地で感染予防のための規制が緩められ、映画館も南部の州などで営業を再開するところが見られた。

ところが、パンデミック初期に深刻な状況を呈していたニューヨークやニュージャージーなどでは感染拡大が鎮静化している一方で、カリフォルニアやアリゾナなど西部の州やフロリダやテキサスなどの南部の州で感染者数が増加。人口が全米一のカリフォルニアでは、7月31日の時点で感染者数は50万人を超え、死者数も9000人を超えた。

画像: 南カリフォルニアのドライブインで行なわれた催しを楽しみに来た住民たちは一様にマスクをつけている Photos by Getty Images

南カリフォルニアのドライブインで行なわれた催しを楽しみに来た住民たちは一様にマスクをつけている

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ハリウッドを擁するロサンゼルスでも、5月中旬にいったん規制が緩和され、レストランや一般の商店が営業を再開させたが、その後のカリフォルニア州感染拡大を受けて、7月中旬、生活に不可欠な食料品や日用品を扱うスーパーやドラッグストア以外の商店は再び休業状態に逆戻りする結果となった。

延期以外にもこれまでになかった形態でリリースの方針を探り始めた超大作

異例の公開形式を発表した「TENET テネット」(日本版ポスター)

このような状況下、7月17日に公開されることによって全米の映画館の営業再開につながることが期待されていたクリストファー・ノーランの新作「TENETテネット」は、公開を7月31日、8月12日と2回延期。7月31日の時点では、カナダ、オーストラリアや欧州国といった米国外で8月下旬に、米国内では限定的に9月3日にそれぞれ公開予定と報じられている。

画像: 「ムーラン」は全米ではディズニー・プラスでプレミア公開されることに © 2020 Disney Enterprises Inc, All Rights Reserved.

「ムーラン」は全米ではディズニー・プラスでプレミア公開されることに

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それに伴い、7月1日に公開を予定していたラッセル・クロウ主演のサスペンス映画「Unhinged」は、公開日を8月21日に延期。「TENETテネット」公開の翌週、7月24日に公開を予定していた「ムーラン」に至っては、結局ディズニー・プラスでの別料金配信(9月4日から全米ほか各国。ただし日本は未定)という状態。

当初、春から初夏にかけて公開される予定だったもののコロナウイルス禍のために、9月から10月にかけて公開日を延期させた作品には他に「007ノー・タイム・トゥ・ダイ」(4月から11月20日に延期)や「ブラック・ウィドウ」(5月1日→11月6日)、「ワンダーウーマン1984」(6月5日→10月2日)などがあるが、3月20日公開予定だった「クワイエット・プレイスPARTII」は2021年4月23日と1年以上公開時期を延期。

画像: 「トップガン マーヴェリック」は2021年夏まで公開延期となった

「トップガン マーヴェリック」は2021年夏まで公開延期となった

他にも、「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」(2020年5月22日→2021年4月2日)や「トップガンマーヴェリック」(2020年6月24日→2021年7月2日)、「ジャングル・クルーズ」(2020年7月24日→2021年7月30日)など、当初の公開の季節をそのままキープする意向の作品もある。

ただ、このような作品公開スケジュールも、今後のコロナウイルス感染状況によっては再びスクランブルされる可能性も大きく、映画会社としても公開日を変更するたびにマーケティングのコストがかかるゆえ、頭の痛いところだろう。

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