「007は二度死ぬ」のロケで日本を訪れたショーン・コネリー。
当時「SCREEN」では撮影の3日前より彼に密着! 予定日よりも早く来日し、マスコミ、ファンを欺くように羽田空港に夫人と共に降り立った姿をキャッチ! 素顔が見られる記者会見の模様と共に当時の記事を一部抜粋で掲載します。

007深夜の奇襲上陸

七月二七日、午後十一時三五分、深夜の羽田国際空港にジェット機の矗音を響かせながら、"ジェームズ・ボンド"ははじめて日本の土地に舞い降りた。
縞のシャツにノー・ネクタイ。紺のブレザー・コートを無造作にはおり、靴のかわりにサンダルをつっかけただけという、およそボンドのイメージとかけはなれたラフなスタイルのショーン・コネリーは、グリーンのワンピースに身を包んだ小柄で美しい夫人ダイアン・シレントーの腕をとって急ぎ足で税関へ。
出迎えたのは、007を製作するイオン・プロのプロデューサー、アルバート・ブロッコリーとスタッフ二名だけ。
空港のロビーに現われたコネリーは、ブロッコリーと目でサインし合うと、夫人と共に脇のドアからすり抜けるように外に出てそこに待つイオン・プロさし回しのツートン・カラーのポンティアックに乗り込む。
車は超スピードでスタート、都心へ向かって風のように消えて行った。まさにあっという間の出来事。
予定された日よりまる一日早く、報道陣も、ファンも、いや関係者すらほとんど知らない、まるで007の映画を地で行くような、あざやかな奇襲戦法ぶりであった。

画像: 取材陣に囲まれるコネリー、丹波哲郎、若林映子

取材陣に囲まれるコネリー、丹波哲郎、若林映子

コネリーの素顔

七月二八日の昼過ぎ、ヒルトン・ホテルの十階にある最高級の部屋"インペリアル・スイート”(一泊四万七〇〇〇円もするという)で目を覚したショー・ンコネリーは、十二時間近い睡眠でやっと旅の疲れをいやし、夫人ダイアンといっしょにロビーに降りて来た。
ところがロビーには前夜の秘密作戦ですっかりおかんむりになった日本の報道陣が集まっていたから大変だ。
ワッと取りまかれ、大嫌いなフラッシュをたかれて、二人はたちまち部屋に逆もどり。
その時ロビーでは押しかけた記者やキャメラマン達がブロッコリーやカーライルを囲んで、『写真をとらせろ』『いや今日はそっとして置いてやってくれ』と激しい押問答の最中だったのだ。
やがて二時後、強硬な報道陣の申し入れに根負けしたブロッコリーがコネリーをくどき、五分間だけの撮影OKとなった。前夜同様、くだけたスタイルのコネリーは、夫人と手をつなぎ合って近くの赤坂日枝神社の階段を上ったり下りたり。
『朝めしもまだなんだ。おなかがへってかなわないよ』とぼやきながら、それでもキャメラマンの注文にせいいっぱいの笑顔を見せ、約束の五分が過ぎるとホテルへ帰って行った。

翌二九日の十時半きっかり、ヒルトン・ホテルの真珠の間に公式記者会見のためあらわれたコネリーは、今日こそはボンド・ルックで颯爽と登場するだろうとの期待を裏切って、来日以来そのままのスポーツ・シャツにサンダルばき。
おまけにシャツのボタンをつもはずして胸毛が顔を出すという略装。マイクにつかつかと歩みより『グッド・モーニング』とひとこと。
こうして約四五分にわたる記者会見は始められた。

―映画の中のベスト・ドレッサーぶりとは大分違うが…
『(苦笑して)正式なドレス・アップは好きでない。私生活ではいつもこんな格好だ』
―予定より一日早い来日はマスコミをまく戦術か?
『(極めてあっさりと)そんなことはない。香港に泊る予定を中止しただけだ』
―日本についてどの位知っているか?
『正直いってあまり研究していない。しかし黒沢氏の作品は好きだから、見ているよ』
―二人の子供さんは? 特に育児法といったことをやっているか?
『子供はロンドンに置いて来た』とニヤリ。
―こんどの『007は二度死ぬ』を最後にボンド役はやめるそうだが本当か?
『自分としてははっきりやめたいと思っている。007がはじまってから働き通しだからね。かなわないよ』
―ジェームズ・ボンドと同一視されることが嫌いとか…
『私の名前はショーン・コネリーだ』

この間、上機嫌で笑顔を見せながらも、答えは常にあっさりとしていて、ボンド・ルックに対する質問にもたいした反応を示さず、『モッズ・ルックなんて聞いたこともない』と手を広げるなど、およそ流行の元締めみたいに思われていたボンドのイメージは見当たらないショーン・コネリーだった。

※SCREEN1966年10月号より抜粋

ショーン・コネリー オリジナル・ポートレートセット

ショーン・コネリーさんを偲び、SCREENのアーカイブより「007は二度死ぬ」のロケの合間に見せた素顔のショットの数々をポートレート化。日本で行われたこのロケに密着したSCREENが撮った数々の貴重なシーンをお届けします。

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