「スーツは現代の紳士の鎧」──『キングスマン』(2014)でコリン・ファース演じる主人公ハリーはこんな言葉を残しました。スーツとは文字通り、現代の勝負服。映画の中でもその勝負服が数々の名場面を生んできました。伝説として語り継がれる、名キャラクターたちの傑作スーツ・スタイル15選です。(文・清藤秀人/デジタル編集・スクリーン編集部)

『007/ゴールドフィンガー』(1964)のジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)と『007 スペクター』(2015)のジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)

アイコニックなボンドスーツの典型

Photo by Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

『007』シリーズ
映画史上最長の人気スパイ・シリーズ。初代ボンドをショーン・コネリーが演じ、現在のダニエル・クレイグが6代目。最新作『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』が2021年公開。

スーツと言えばジェームズ・ボンド。『ゴールドフィンガー』でショーン・コネリーが袖を通した3ピーススーツは、籠細工織りの細かいグレンチェックと6つボタンのベストがアイコニックなボンドスーツの典型。

冒頭で登場するアイボリーホワイトのディナー・ジャケット&襟に薔薇という着こなしも粋だ。デザインしたのはアンソニー・シンクレア。

鍛え上げたボディに張り付く2ピース

画像: SPECTRE © 2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.,Danjaq, LLC and Columbia Pictures Industries, Inc. Allrights reserved
SPECTRE © 2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.,Danjaq, LLC and Columbia Pictures Industries, Inc. Allrights reserved

時は移ろい、トム・フォードは数えてコラボ3作目になる『スペクター』では、ダニエル・クレイグの鍛え上げられたボディに張り付くよりスリムなウィンドウペイン・チェック(生地の上で1色のラインが交差)の2ピースを用意。

冒頭のメキシコでのアクションシーケンスで光沢のあるウール素材が動きながら徐々に捻れていくところがとてもリアルだ。

『TENET テネット』(2020)の名もなき男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)とニール(ロバート・パティンソン)

シルバーのシャークスキンが艶かしい

『TENET テネット』
『インセプション』(2010)などの鬼才クリストファー・ノーラン監督によるタイムサスペンス超大作。名もなき男とその相棒ニールが“時間のルール”を脱し、第三次世界大戦の阻止に挑む。

マイケル・ケイン演じるクロスビー卿から、「ブルックスブラザーズのスーツを着てちゃダメだ」と忠告された名もなき男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、早速シルバーのシャークスキンが艶かしいヨーロピアン・タイプのスーツに着替えて登場する。腰の位置を高く見せるスラックスのラインに注目してほしい。

画像: シルバーのシャークスキンが艶かしい

一方、ロバート・パティンソン演じるニールはよれたスーツにくしゃくしゃのストールを首に巻いて現れる。時空を行き来する彼ならではの自由な装いだ。

© 2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『黒い司法 0%からの奇跡』(2019)のブライアン・スティーブンソン(マイケル・B・ジョーダン)

定番スーツに見えて細部に高級感も

『黒い司法 0%からの奇跡』
冤罪の死刑囚たちのために闘う弁護士ブライアン・スティーブンソンが起こした奇跡の実話を映画化。『クリード』(2015)シリーズや『ブラックパンサー』(2018)のジョーダンが主人公を熱演。

定番で個性のないグレーのスーツも、新米弁護士を演じるマイケル・B・ジョーダンの透明感で新鮮に見える。

若いサラリーマンのお手本になりそうなこのスーツは、ノッチラペルカラー(下襟の先が下がった形)とボタン留めが特徴で、よく見ると細部に高級感がある。ボタンダウンのシャツがマイケル・Bのスポーツマンっぽい雰囲気にジャストフィット。

© 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

『華麗なるギャツビー』(1974)のジェイ・ギャツビー(ロバート・レッドフォード)

主人公のライフスタイルを端的に表現

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『華麗なるギャツビー』
米文学を代表する小説『グレート・ギャツビー』が原作。映像化作品は多く、1974年のレッドフォード版はアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞。2013年にディカプリオ主演でリメイク。

ラルフ・ローレンがロバート・レッドフォード演じる富豪、ギャツビーのスーツ類をデザインした74年版。

シングルブレストのジャケット、ワイドラペルのダブルブレスト・ベスト、プリーツパンツを組み合わせた茶色の3ピーススーツは、ギャツビーのライフスタイルを端的に表したもの。1920年代のブルジョワジーにとってスーツは普段着なのだ。

『華麗なるギャツビー』(2013)のジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)

品のいいパステルカラーが目を引く

レオナルド・ディカプリオがギャツビーを演じたリメイク版では、原作者のスコット・フィッツジェラルドが常顧客だったアメリカントラッドの老舗、ブルックスブラザーズが20年代のアーカイブを提供。

完成したスーツはどれも品のいいパステルカラーでまとめられ、多くの場合ピンホールシャツなのが旧作と異なる点。今ピンホールシャツはブームらしい。

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『北北西に進路を取れ』(1959)のロジャー・ソーンヒル(ケイリー・グラント)

“スーツ王”はサヴィル・ロウ仕立てで

画像: “スーツ王”はサヴィル・ロウ仕立てで

『北北西に進路を取れ』
サスペンスの神様アルフレッド・ヒッチコック監督の名作。勘違いでトラブルに巻き込まれた広告マンが大冒険を繰り広げる。主人公が軽飛行機に襲われるシーンはあまりに有名。

映画史最強のシャレ男、ケイリー・グラントはスーツ王でもあったわけだが、特に、『北北西に進路を取れ』では設定上着た切り雀状態の彼は、サヴィル・ロウで仕立てたというライトグレーでノーベントの3ピーススーツを着て逃げまくる。

白いドレスシャツ、ソリッドタイプのタイのチョイスが完璧で、トム・クルーズ等これを真似した後輩たちもいる。

Photo by Metro-Goldwyn-Mayer/Getty Images

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