フランスは初週動員数No.1を記録した、実在するゲイの水球チームを題材に作られた映画『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』が7月9日(金)に全国公開される。今回SCREEN ONLINEでは、実際に“シャイニー・シュリンプス”のメンバーでもあるセドリック・ル・ギャロ監督、そして共同で監督を務めたマキシム・ゴヴァ―ル監督にインタビューを行った。なぜ明るい映画になったのか?そしてなぜ二人で監督を務めたのか?そこには監督たちの強い想いがあった。※続編を除く/2019.5.8~12 BOX OFFICE MOJO調べ

「僕の知っている人たちを題材に、明るくて陽気な映画を撮りたかった」

画像: セドリック・ル・ギャロ監督(左)、マキシム・ゴヴァール監督(右)

セドリック・ル・ギャロ監督(左)、マキシム・ゴヴァール監督(右)

―この映画はどういった経緯で作られることになったんでしょうか?

セドリック・ル・ギャロ(以下、ギャロ):僕はリアルの“シャイニー・シュリンプス”に所属しているんだけど、本当に楽しいんだ。みんな愉快でユーモアもあって、違いも好意的に受け入れてくれる。そんなチームの中での僕の経験を活かしたいという想いが凄く強かったんだ。この映画にも出てくるけれど、外国へのロードトリップとかマジカルな経験をいっぱいしているから、それを観客に届けたいと思ったんだよね。

画像: 「僕の知っている人たちを題材に、明るくて陽気な映画を撮りたかった」

映画やテレビシリーズの中でのLGBTQ+の描かれ方は、ハードでドラマチックなものが多い。エイズであったり、葛藤であったり、家族との不和であったりね。そういうのももちろん大事だと思うけど、僕自身は僕の知っている人たちを題材に明るくて陽気な映画を撮りたかったんだ。

―共同で監督されていることは本作の特徴の一つだと思います。どのような経緯でそうなったのでしょうか。

マキシム・ゴヴァール(以下、ゴヴァール):僕たちはゲイとストレートの人を対立させるような作品には絶対したくなかったんだ。これまでの作品には、ゲイの作り手がゲイの人に向けて作った作品もあったし、ストレートな人がつくってゲイからすると「少し嘘っぽいよね」と思える作品もあった。

画像: 撮影中のゴヴァール監督(左)とギャロ監督(右)

撮影中のゴヴァール監督(左)とギャロ監督(右)

ゲイとストレート両方の視点がうまく合わさった作品が無かったと思うんだよね。僕たちはどちら側の人も一緒に笑えて連帯感が生まれたらいいなと思ったんだ。だから、僕と彼の両側の視点が合わさったほうが適切だなと思って共同で監督することにしたんだ。

―魅力的なキャラクターが多いですが、どこから着想を得たのですか?

ギャロ:実際の“シャイニー・シュリンプス”は結構大きいチームで35人くらいメンバーがいるんだ。だからいろんな人がいて、20歳の学生もいれば、65歳くらいのメンバーもいるし、その間の30代や40代、50代の人たちもいる。職業もバラバラだし、文化的な出自も違うし、社会的階層の違う人たちが集まっているんだ。

画像: 映画のシュリンプス達も一人一人が輝く個性をもっている。

映画のシュリンプス達も一人一人が輝く個性をもっている。

例えば高校時代って同じ世代の人たちとつきあうだろうけども、シャイニー・シュリンプスには本当に色んな人たちがいる。共通項は「水球が好き」そしてゲイであることだけど、「いろんな人たちがいる」ことはすごく映画的だと思う。多様性があると争いも生まれるし、意見の相違も生まれる。それこそが映画なんじゃないかと思っているんだ。

―俳優陣はオーディションで選んだそうですね。選んだ基準は何でしょうか?

ゴヴァール:今回はオーディションだけど、あまり名の知られていない役者たちをキャスティングしたかったんだ。有名な俳優をキャスティングすると真実味が失われてしまう。特に今回はゲイのチームが題材だからね。だけどキャラクターに似た部分がある俳優たちを選んだよ。

画像: 笑いの絶えない撮影現場だったとのこと。

笑いの絶えない撮影現場だったとのこと。

―水球は過酷なスポーツですよね。練習も大変だったのではないでしょうか。

ギャロ:水球は過酷だけど常にアクションがある。止まっている状態がなくて、手も足も常に動かしていないといけない。ぶつかる困難を自分で乗り越えるスポーツなんだ。今回は6か月間、本物のシュリンプスのもとで練習したから俳優たちは相当キツかったんじゃないかなぁ(笑)。

「ゴールよりも途中が大事」

―ロードムービーの側面も強い作品ですね。オープンバスで移動するのが印象的でした。

ギャロ:着いてからのことよりも「旅すること」そのものを楽しむという意味で、オープンバスを移動手段にしたことには意味があるんだ。実在のシュリンプスも映画のシュリンプスも、勝つこと自体にはあまり重きを置いていない。勝ったらもちろん嬉しいけど、それよりも「楽しもう」という人たちなんだ。今までのスポーツ映画では「勝利を目指して」みたいなスポ魂ものが多かったけど、この映画は違う。オープンバスは「ゴールよりも途中が大事だ」という姿勢の比喩でもあるんだ。

画像: 「ゴールよりも途中が大事」

ゴヴァール:屋根が無くてオープンなのは「世界に開かれている」ということ。『プリシラ』(94)というロードムービーでは屋根のあるバスだったから、じゃ僕らはオープンにしようと思ったというのもある(笑)。ちなみに、プライドパレードでもオープンバスが使われているよ。

ギャロ:あと今回のバスは凱旋門とかエッフェル塔を見て回るためのパリ観光用のバスなんだけど、それをゲイゲームズに向かうために使うという所がコメディ的な要素でもあるんだ。

―現実では開催されたことがないですが、映画の中ではクロアチアがゲイゲームズの開催地となっていますね。

ゴヴァール:バスでヨーロッパを横断する物語にしたくて、最初は目的地をブダペストにしようと思っていたんだ。水球をする環境もあるしね。でもブタペストはハンガリーの独裁政権が台頭してきていて、同性愛嫌悪者が増えている。それだと難しいなと思っているときに、クロアチアが話題に出たんだ。

クロアチアではプライドパレードがいろんな都市で行われているし、許容も出てきている。水球のチームもあって、すごく強い。オリンピックにも昔から出ている強豪なんだ。そういう意味で信ぴょう性もあったし、海もある。それに脚本で登場が決まっていたドイツも通ることができる。

画像1: 『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』は、なぜ明るい映画になった?<セドリック・ル・ギャロ&マキシム・ゴヴァール両監督インタビュー>
画像2: 『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』は、なぜ明るい映画になった?<セドリック・ル・ギャロ&マキシム・ゴヴァール両監督インタビュー>

「ちょうどいい!」と思って、パリのゲイゲームズの主催者に「クロアチアでゲイゲームズやるのって嘘っぽくないかな」と聞いたら、「全然大丈夫」って確認も取れたからクロアチアに決めたんだ。ちなみに映画の開会式の部分は、パリで2018年に開催された本物のゲイゲームズのときに撮影したものなんだ。

「続編でも『Hero』は大事なモチーフになるよ」

―劇中でボニー・タイラーの「Holdingout for a hero」が重要な楽曲として使われますね。

ギャロ:ボニー・タイラーのハスキーで叫んでいるような、ハートから出している声に惹かれるんだよね。そしてパーティーのような音楽性。その両方が相まって大事なシーンにはぴったりだと思ったんだ。

ゴヴァール:「Hero」が連呼されることも理由の一つだよ。LGBTQ+の人々は、自分のプライドや勇気といったヒーロー的な要素をすごく大切にするからね。この映画の続編でも「Hero」は大事なモチーフになるよ。

―ちなみにこの楽曲は日本でもカバーされていて、80年代には「スクール・ウォーズ」という学園ドラマの主題歌にもなっています。日本の観客はこの映画を見ると印象が大きく変わると思います(笑)。

ゴヴァール:それは知らなかったよ(笑)。フランスでは「正にこのシーンのために作られた」と思えるような楽曲がいっぱいあるんだ。

―必ず聞く質問なのですが、どんな映画が好きですか?

ギャロ:僕は社会問題も扱っているコメディが好きだね。フランスだとユーモアを出すと「馬鹿にされるかな?」と怖がって、ユーモアのセンスを自制しちゃうことがあるんだ。アメリカやイギリスの映画のように、今回の『シャイニー・シュリンプス!~』は笑われるのを恐れないところがあるけど、そこにメッセージが込められているというのも大事だと思う。世界の問題に笑いを通じて目を向けさせてくれることが大事だよね。たとえば『パレードへようこそ』(14)とか『リトル・ミス・サンシャイン』(06)もそうだし、『ショートバス』(06)、それにケン・ローチ監督の作品。ユーモアもすごくあるんだけど、そこに社会性がちゃんとある作品が好きだよ。

―最後に日本の観客へメッセージをお願いします。

ゴヴァール:もしエビやキラキラしてるものが好きなら、ぜひこの映画を観てください(笑)!

ギャロ:実はフランスではすごく観客層が広くて、LGBTQ+のコミュニティの人々だけでなくたくさんの人たちが作品を気に入ってくれました。みなさんも思い切って映画館のドアを開けてください。自分が場違いだとか思う必要は全くないです!一緒に溶け込んで楽しんでもらえると思いますよ。

画像: (左から)セドリック・ル・ギャロ監督、マキシム・ゴヴァール監督

(左から)セドリック・ル・ギャロ監督、マキシム・ゴヴァール監督

<写真・左>【監督・脚本】セドリック・ル・ギャロ(CÉDRIC LE GALLO)

フランス最古のテレビ局TF1のテレビリポーターとしてキャリアをスタートさせ、世界各国を飛び回り、有名アーティスト、映画監督、ファッションスタイリストなどの取材を経験。30歳で、テレビ番組「50’s inside」の監督を任され、同時期にフランスのドキュメンタリーネットワークSPICEEで現代芸術のドキュメンタリーを監督する。さらに、自身の劇団で俳優としても活躍。2012年、友人の紹介でゲイの水球チーム「シャイニー・シュリンプス」に加入。2015年、フランスのテレビ局Canal+で、名作映画の架空の舞台裏を描いた短編テレビシリーズ「Scene de culte」を製作。20エピソード分の監督・脚本・出演を務める。マキシム・ゴヴァ―ル監督と共同監督した自身初の長編映画となる本作は、ヨーロッパで有数のラルプ・デュエズ国際コメディ映画祭にて審査員賞受賞をはじめ、数々の映画祭でも受賞した。

<写真・右>【監督・脚本】マキシム・ゴヴァ―ル(MAXIME GOVARE)

数々の作家コンテストで入賞後、フランスのメジャーなテレビ番組の放送作家としてキャリアをスタート。2015年『I Kissed a Girl』で、長編映画監督デビュー。コメディ映画の新境地を開拓し、ラルプ・デュエ国際コメディフェスティバルで大賞を受賞。2017年、2作目のコメディ映画『Daddy Cool』を監督。2018年、プロデューサーの紹介により、実在のゲイの水球チーム「シャイニー・シュリンプス」に所属するセドリック・ル・ギャロと出会い、本作の共同監督・脚本を担当。世界30カ国以上で公開され、様々な映画祭にも招待された。

『シャイニー・シュリンプス!愉快で楽しい仲間たち』は
本日7月9日(金)より全国順次公開!

画像: 映画『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』予告編 www.youtube.com

映画『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』予告編

www.youtube.com

『シャイニー・シュリンプス︕愉快で愛しい仲間たち』

7⽉9⽇(⾦)全国順次公開
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ ほか

画像3: 『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』は、なぜ明るい映画になった?<セドリック・ル・ギャロ&マキシム・ゴヴァール両監督インタビュー>

監督・脚本︓セドリック・ル・ギャロ、マキシム・ゴヴァール
出演︓ニコラ・ゴブ、アルバン・ルノワール、ミカエル・アビブル、デイヴィット・バイオット、ロマン・ランクリー、ローランド・メノウ、ジェフリー・クエット、ロマン・ブロー、フェリックス・マルティネス

配給︓ポニーキャニオン、フラッグ
提供︓フラッグ、ポニーキャニオン

原題︓Les Crevettes Pailletees
英題︓The Shiny Shrimps

2019/フランス/カラー/ビスタ/DCP/5.1ch/字幕翻訳︓⾼部義之 【PG-12】

公式サイト︓shinyshrimps.jp
公式Twitter︓@shinyshrimps

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