2021年にアーティスト活動40周年のアニヴァーサリーを迎えた、布袋寅泰の軌跡を追ったドキュメンタリー映画『Still Dreamin’ ―布袋寅泰 情熱と栄光のギタリズム―』が2月4日(金)より2週間限定で全国公開される。
1988年以降の様々なライブシーンの他、未公開映像も多数フィーチャー。さらに“WITHコロナ”生活における自身の音楽との向き合い方についても告白した本作は、夢を見ている者たちに贈る映像作品でもある。
画像: Photo by Tsukasa Kubota

Photo by Tsukasa Kubota

予期せぬエンディングに繋がったというのは、ドキュメンタリー映画ならではだったと思います

──完成した本作をご覧になっての感想からお聞かせください。

「照れくささもあるし、40周年とはいえ、自分のたどってきた道が皆さんに力を与える作品に仕上がるかどうか、初めは正直、不安なところもありました。でも、石田(雄介)監督の真剣な眼差しが、僕の40年を光だけではなく、いろんな葛藤も含めて描いてくれたので、自分で言うのもなんですけど、映画を観て感動しました。嬉しかったです」

──アーティスト活動40周年の軌跡を追った作品ということで、テーマや内容、切り口などは監督と決めていかれたのですか?

「細かいところは監督にお任せしました。ドキュメンタリーでありながらファンタジーな作品になっていて、こればかりはどういう仕上がりになるのか自分自身も読めなかったんですけど。ただ、時系列にデビュー当時から今に至るまでのトピックを並べただけではない、僕の音楽表現のコンセプトの一つである“時空を旅する”、ここに監督が着眼してくれたので、自分を見ているような自分ではないような不思議な感覚を味わいつつ。同時に紛れもない自分だし、あの頃から全く変わってない自分、それは何かと言うと、『Still Dreamin’』というタイトルに表したように、“今もまだ夢の途中”。現在進行形のドキュメンタリーに仕上がって。ここで終わりじゃないですからね(笑)。終わった人にはなりたくないし。そういうメッセージも含めて、映画ならではの醍醐味に溢れた作品になったと思います」

──『Still Dreamin’』というタイトルは、布袋さんのアイデア?
「スタッフと考えて決めました。タイトルからスタートした映画ではないんだけれども、「Dreamin'」はBOØWYの代表曲の一つであるし、夢を見ること、夢を追いかけること、そしていつもオーディエンスに向かって“夢はあきらめないでほしい”というメッセージを投げかけ続けてきましたから、僕にとっても大事な言葉だし。それは現在進行形であり、そしてなお夢の続きのど真ん中であるということで、満場一致でしたね。“このタイトルにしよう”と決めてから、さらに作品作りにフォーカスが合った。同時に、主題歌(「Still Dreamin’」)を作りながら、そのままアルバムのレコーディングに入った。40周年を“Still”という言葉で繋げたことは晴々しかったです」

──BOØWY、ソロデビュー、COMPLEX、そしてクエンティン・タランティーノ監督からのオファーなどワールドワイドな活動と、40周年のどこをフィーチャーするかというのも大変だったと思います。

「この映画は約2年をかけて作られたものなんだけれど、エンディングが定まらない。なぜなら、コロナ禍という予測もしないことになってしまったから。日本武道館で“よし、40周年がスタート!”というのが当初のエンディングの予定だったんだけれども、その武道館も無観客になり、予測がつかなくなっていったんで。でも、その後に、東京2020パラリンピックの開会式という大きなイベントもあったり、コロナと闘いながら僕の活動の原点であるステージに帰っていく。予期せぬエンディングに繋がったというのは、生々しく、ドキュメンタリー映画ならではだったと思います」

──2021年は特にフィーチャーされています。布袋さんにとって、この2021年は大きな1年だったのでは。

「おっしゃる通りです。2021年は、ファンの皆さんに感謝の気持ちを込めて、隈なく全都道府県を回ろうという計画でいたんです。また、海外での活動も積み重ねてきたので、久しぶりのヨーロッパツアー、アメリカツアーも予定していましたけど、全部飛んでしまって。そこで初めはもがき苦しみましたが、“でも一歩、前に進むしかないだろう。ここで指を咥えて時が経つのを待つのは僕たちらしくない”と。ライブをいろいろな規制がありながら、それでも行えたことは、やっぱり前進できたと思うんです。また、パラリンピックの開会式は、アーティストとしても、僕の人生においても、大きな意味を持つイベントだったし。この映画も作り上げましたし、まだ過程とはいえ、40周年にふさわしい、忘れ難い1年になりました」

──と同時に気づかされた1年でもあった。

「そうですね。コロナによって大切なもの、家族もそうだし、今まで当たり前だったライブもそうだし。当たり前というありがたみに気づかされたし。また、“今ここで何をやりたいのか”という、自分と向き合う時間にもなったし。“憎きコロナのために全部が狂っちゃった”じゃ悔しいしね。そんな中で作品作りと、限られた中でのライブをやり遂げたというのは、今後の自信にもなると思います」

画像: 予期せぬエンディングに繋がったというのは、ドキュメンタリー映画ならではだったと思います

“よし、俺も、私も、今日から頑張ろう!”って観終わった後に思ってもらえる作品に仕上がったと思う

──現在住まわれているロンドンでの映像も収められています。改めて、布袋さんにとってのロンドン、英国とは?

「僕が生まれ育った群馬の高崎は、今は新幹線が通って便利になりましたけど、僕の時代にはグルメなんてネギとこんにゃくしかなかったですからね(笑)。だからこそ、夢を見られたというか。インターネットがない時代、映画館に行って外国の文化に触れる。また、雑誌を読んで、レコードを聴いて、その時々の流行に触れる。そうやってイマジネーションを膨らませた世代ですから。ザ・ビートルズを聴いて、行ったこともないレンガの街並みを想像したり。“ストロベリー・フィールドってどんなところだろう!”とかね。で、群馬からいつかはプロになりたい。デヴィッド・ボウイ、マーク・ボランや憧れのポスターになっているロックスターみたいになりたい。その時から“いつかはロンドンに行ってみたい”と思っていたんです。じゃあ、まずは東京に行こう。そこで腕試しをする仲間と出会って。でも、僕はブリティッシュロックを聴いて育ったので、日本で頂点を目指しながらも、どこか海の向こうの香りがするテイストというのが、常にサウンド作りの肝となっていたんです」

──布袋寅泰というギタリストを形容するに、“カッコいい”が最も最適な言葉だと、個人的に思っているのですが。

「それは嬉しいです。“上手い”と言われると貶されている気がするけど(笑)」

──センスやファッションも含めて“カッコいい”。

「スーツを着てロックするギタリストって、未だに少ないと思いますしね。でも、僕が初めてロックを聴いた頃、ロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーはタキシードを着ていましたから。ロックといえば長髪に汚いジーパン、スーツなんてサラリーマンが着る窮屈なものというイメージとはうらはらの、フォーマルウェアを着てロックンロールするというのは、高校生の僕にはあまりにも衝撃的で。そこからオーディナリーではないものを、僕はずっと選んできたと思うんです。BOØWYというバンドで髪の毛を立てて、だけど黒いジャケットやスーツを着てスタイリッシュに。パンクロックの精神でアートロックを目指したというのは、ロンドンへの憧れからスタートしているんです」

──憧れで終わる方が多い中で、布袋さんは自ら世界に飛び出して行きましたよね。

「外の空気を吸いたかったし、刺激を浴びたかったんです。日本はとても恵まれているけど、日本と世界はどこか分け隔てられている。でも、音の世界にはそれがない。ロンドンのみならず、旅に出ると必ず発見があったり、出会いがあって、それが絶体的に僕の音楽にインスパイアされてきましたから、外の世界に出るというのは不可欠なことでしたよね。コロナになって、それができないのが辛いんですけど」

──本作を観ると、”布袋寅泰は夢を掴み続けている“というのが伝わります。

「振り返ると、当たり前のことばかりじゃない。ボウイとの共演。ザ・ローリング・ストーンズとの共演。本当に夢のような出来事の連続だし。でも、挫折や葛藤も映像の端々から伝わってくる。そこが映画の強さだなと思って。ロックスターのカッコいい成功物語じゃなく、みんなが自分に置き換えて、“よし、俺も、私も、今日から頑張ろう!”って観終わった後に思ってもらえる、そんな作品に仕上がったと思うし。それは僕や監督、全スタッフが込めた想いでもあり、強い約束でもありました」

──個人的には、サックスも加えた現在のバンドメンバーで、「NO. NEW YORK」のリハーサルをするシーン。BOØWY時代から布袋さんをリアルに追いかけていた者としてはグッときました。

「これは時のマジックで、40年後なんて想像もできなかったわけです。40年経った今、自分を受け入れられる。それが歳をとるということかもしれない。まあ、とりたくてとったわけじゃないんだけど(笑)、とったらとったで悪くないじゃない。淋しさはあるけれども、どこか充たされて、努力や上手くいかなかったことも含めて、今の自分がいるんだなっていう。こういう形で自分の人生を振り返ることができて、最初は恥ずかしかったけど、今は胸を張れるどころか、晴々しい。そういう作品をお届けできるのは、本当に良かったなと思います」

──最後に、今の布袋さんにとっての“Dreamin”を聞かせてください。

「〈夢〉という言葉は、少し照れくさい、青くさい、そして口に出してしまうと責任を伴うような強い言葉ではあるけれども、叶えるだけが夢じゃない。追い続けることも大事なんだ。そんな想いを持つ“Dreamin’”が言葉として自分に響くというのは、〈夢〉というのは魔法の言葉であり、自分を動かす大いなる力なんだなって思います。そのことを、僕の人生を通して、若い人に、あきらめそうな40代、50代、もしくは先輩方にも伝えたい。“俺も布袋みたいに頑張っていたよ”っていうお父さん、お母さん方もいると思うんですよね。そして、この作品を気軽に楽しんでもらえたらと思います」

撮影/久保田 司
ヘアメイク/原田 忠(資生堂)
文/辻 幸多郎

画像1: “よし、俺も、私も、今日から頑張ろう!”って観終わった後に思ってもらえる作品に仕上がったと思う

布袋寅泰 TOMOYASU HOTEI
1962年2月1日生まれ、群馬県高崎市出身

日本を代表するギタリスト。
日本のロックシーンに大きな影響を与えた伝説のロックバンドBOØWYのギタリストとして活躍し、1988年にアルバム『GUITARHYTHM』でソロデビューを果たす。
プロデューサー、作詞・作曲家としても才能を高く評価されており、クエンティン・タランティーノ監督からのオファーにより、「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY(新・仁義なき戦いのテーマ)」が映画『KILL BILL』のテーマ曲となり、世界的にも大きな評価を受けた。2012年よりイギリスへ移住し、4度のロンドン公演を成功させる。2014年にはザ・ローリング・ストーンズと東京ドームで共演を果たし、2015年には海外レーベルSpinefarm Recordsと契約。その年の10月にインターナショナルアルバム「Strangers」がUK、ヨーロッパでCDリリースされ、全世界へ向け配信リリースもされた。
アーティスト活動歴40周年を迎えた2021年1月30日、31日には、日本武道館にて「HOTEI 40th ANNIVERSARY Live “Message from Budokan”」を無観客配信にて開催。この日本武道館公演を完全パッケージした映像作品「40th ANNIVERSARY Live “Message from Budokan”」と4曲の新曲を収録したEP「Pegasus」を6月30日にリリース。8月24日には東京2020パラリンピック開会式にて「TSUBASA」「HIKARI」の2曲を制作/出演。圧倒的なパフォーマンスが世界中から高評価を受けた。
2月1日には20枚目のオリジナルアルバム「Still Dreamin’」をリリース。5月7日より8月3日まで全国21公演の全国ツアー「HOTEI the LIVE“Still Dreamin’Tour”」 が開催される。

画像2: “よし、俺も、私も、今日から頑張ろう!”って観終わった後に思ってもらえる作品に仕上がったと思う
画像3: “よし、俺も、私も、今日から頑張ろう!”って観終わった後に思ってもらえる作品に仕上がったと思う
画像4: “よし、俺も、私も、今日から頑張ろう!”って観終わった後に思ってもらえる作品に仕上がったと思う

(作品情報)
2021年にアーティスト活動40周年を迎えた布袋寅泰、初のドキュメンタリー映画。これまでの貴重な未公開映像を多数フィーチャーした軌跡のみならず、2020年以降の“WITHコロナ”生活における音楽との向き合い方についても赤裸々に告白。キャリアにおいてターニングポイントとなる歴史的瞬間、そして当時の貴重なインタビュー映像も収録。さらに全編自らナレーションも務め、過去の視点と現在の視点を通して数々のトピックを振り返っている。
監督を務めたのは、映画『モテキ』(2011年)で第35回日本アカデミー賞優秀編集賞を受賞し、多くの映画やテレビドラマなどを手がけた、石田雄介。

画像: ジャケット写真(撮影:鋤田正義)

ジャケット写真(撮影:鋤田正義)

布袋寅泰 20thアルバム「Still Dreamin’」
2月1日(火)発売

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