約40年にわたってハリウッドを中心に映画記者活動を続けている筆者が、その期間にインタビューしたスターは星の数。現在の大スターも駆け出しのころから知り合いというわけです。ということで、普段はなかなか知ることのできないビッグスターの昔と今の素顔を語ってもらう興味津々のコーナーです。今回は、Amazon Prime Videoにて独占配信中の『愛すべき夫妻の秘密』で第94回アカデミー賞 主演女優賞にノミネートされたニコール・キッドマンに注目です!(文・成田陽子/デジタル編集・スクリーン編集部)

成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて40年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。

10歳で演劇学校に通うようになって役になりきる楽しさを覚えたの

ニコール・キッドマンに初めてインタヴューしたのは「デイズ・オブ・サンダー」(1990)の時。主演のトム・クルーズとのロマンスが芽生えたばかりで、23歳のニコールは頬をほんのりピンクに染めて、始終宙に浮かんでいるようだった。

生まれつきだというクルクルカールのロングヘヤーに青い目の二コールはまるでお人形のお姫様のようで、車のトップレーサーという役を演じ、スーパースターへの一歩を踏み出したトムがニコールを独り占めにしたがったのもよく理解できたし、実際に二人共『スター!』のオーラにあふれていたのである。この年のクリスマスイヴに二人は結婚、ここからニコールはしばらくトムの妻としてプレミアやらイベントで優雅で美しい姿をにこやかに見せていた。

画像: 1992年ころのニコール・キッドマン

1992年ころのニコール・キッドマン

『恥ずかしがり屋でいつもおずおずとした子供だったから母は私が4歳の時バレエを習ったら良いかも、と考えたみたい。さて初めての舞台で、キリスト誕生劇の「羊」の役を凄く張り切って踊ったの。それから10歳で演劇学校へ通うようになって「役」になりきる楽しみを覚えてね。今でも役作りが何よりも好き。「めぐりあう時間たち」(2002)のヴァージニア・ウルフの役は付け鼻をして、私は左利きなのだけれど右手で何でもする練習をし、最後に入水自殺をするシーンでは代役を断って凍りつくような川の中に入って、体中が氷結した感じで、後で解凍するのが大変だったのよ!』

この渾身の役作りで見事にオスカーを受賞したのである。

画像: 10歳で演劇学校に通うようになって役になりきる楽しさを覚えたの

まさか私がルシル・ボールを演じるなんて信じられなかった

翌年の「コールドマウンテン」(2003)でも東ヨーロッパの山奥のロケで大木を扱うシーンでは素手で力仕事をして、両手どころか、体中に湿疹が出て一苦労をしたり、「ムーラン・ルージュ」(2001)では痛い膝を我慢して歌って踊って、後で長い後遺症に悩まされたり、ニコールの執念に限りはないようだ。

トムとは約10年の結婚生活の後、離婚。ニコールは『ああ、これでやっとハイヒールが履ける!』とつぶやいたと言う。2005年の1月に同じ豪州生まれの歌手、キース・アーバンと知り合って、2006年に結婚。彼もニコールより背が低いのだが余り気にしていない様子。

この頃のニコールはオーストラリアの太陽をキースと二人でたっぷり貯蓄したようで、始終にこにことして楽しそうで、『ナッシュビルの家の庭はとっても広くて森のようなのよ。ここで大声で歌いながら散歩をするの。キースのミュージシャン仲間のパーティーが頻繁にあるのだけれど勝手に楽器を弾いて、自由に歌ってそれは愉快なのね。私も積極的に参加してプロの気分になっているのよ』と言っていた。初期の頃はキースのドラッグ依存症の治療をサポートしたり、ニコールは献身的な努力を見せていた。

さて、最近は「ビッグ・リトル・ライズ」(2017~19)やヒュー・グラントの妻役を演じた「フレイザー家の秘密」(2020)などの人気TVシリーズに主演して、お茶の間のスターの座も獲得、そして「愛すべき夫妻の秘密」(2021)で1950年代にアメリカのメガ・テレビスターだったルシル・ボールの役を熱演してオスカー候補の声も高い。

『小さい頃、「アイ・ラブ・ルーシー」(1951~57)が大好きだったけれど、まさか私が彼女を演じるなんて今でも信じられない! コメディーって本当に難しい。彼女がワインを作るためにぶどうを足で踏むシーンが有名でしょう。これを試してみたらぶどうが割れると、思いっきり滑りやすい床になって立っているのも難しい程だったのよ。こういうハードな状況であんなに気楽に笑って見せるルシルのショウビズ根性に改めて敬服してしまった』

新作企画リストに10本もの作品が並んでいるという、相変わらずの人気スターなのである。

画像: ニコールと筆者

ニコールと筆者

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