今年の春は、何やらフランス映画の界隈が賑やか。カンヌ国際映画祭で話題をさらった新作から名匠たちの特集上映まで、毎週のように新作&名作と出合えます。まずはレオス・カラックスの8年ぶりの新作からご紹介。春の訪れはフランス映画とともにやって来るようです。

\初英語映画&初ミュージカル/
寡作な鬼才レオス・カラックスの新作『アネット』いよいよ公開

息すらも止めて鑑賞したい、ダークでファンタジックなミュージカル

画像1: 息すらも止めて鑑賞したい、ダークでファンタジックなミュージカル

ヘンリー(アダム・ドライバー)
攻撃的なユーモアセンスを持つスタンダップ・コメディアン

『ボーイ・ミーツ・ガール』(1984)で鮮烈なデビューを飾り、寡作ながら唯一無二の世界を構築するレオス・カラックス。8年ぶり7本目の新作は、カラックス自身も10代からファンだというキャリア50年超の兄弟バンド・スパークス原案のロックオペラ。

冒頭からとにかく歌いまくりの本作、スパークスの楽曲を主演のアダム・ドライバーとマリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバーグの美声でたっぷりと堪能できる。「レオスの映画でスパークスが作曲したから」という理由から、アダムが初めて製作を務めている点も見逃せない。

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アン(マリオン・コティヤール)
国際的に知られるオペラ歌手。ヘンリーとの間にアネットを授かる

ロサンゼルス。挑発的な芸風で人気のスタンダップ・コメディアン、ヘンリー(ドライバー)と悲劇的な死のオペラを歌う国際的歌手アン(マリオン)。“美女と野獣”のセレブ・カップルとして注目を集めるが、ミステリアスな娘アネットが生まれたことにより、彼らの人生が狂い始める。

(インタビュー)レオス・カラックス監督が明かす過去作とのつながり

レオス・カラックス監督

──『ホーリー・モーターズ』(2012)に続き、本作でも冒頭に出演されていますね。

今度もまた娘と一緒だ。このシーンは僕と娘と愛犬のために考えた(犬はLAまで連れていけなかったけれど)。『ホーリー・モーターズ』では冒頭で娘と一緒に出ることが重要だった。たぶん自分に自信を持たせるために。何年も映画を撮っていなかったから、小さくて実験的なホーム・ムービーを作ろうとした。僕の中でこの2本は実験映画なんだ。『アネット』は大きな映画、『ホーリー・モーターズ』は小さい映画。この2本は“僕が父親になってからの映画”だと思っているよ。

画像: オープニングシーンに登場するレオス・カラックスと娘のナスチャ(右上)

オープニングシーンに登場するレオス・カラックスと娘のナスチャ(右上)

── ヘンリーが舞台に上がる時に羽織るガウンと革ジャンが『TOKYO!』(2008)のメルド氏と同じ色なのは偶然ですか?

いや、僕はあの緑色が大好きなんだ。特に夜とか、暗い劇場で撮るとものすごく強烈だ。自宅は全体が濃淡の違うあの緑色なんだ。『汚れた血』(1986)は全部が赤と黒と青で、『TOKYO!』(2008)を撮る前は緑を使うことはなかった。理由はわからないけれど、今は緑と黄色の気分なんだ。ヘンリーが緑でアンが黄色だ。

── あなたの映画にはいつもバイクが登場します。直観で取り入れているのでしょうか?

バイクに乗ると夢を見ることができるからね。ただ僕はバイクに乗る人を撮るのが好きなんだ。特に夜がいい。恋に落ちた男か女、もしくはカップル。パワフルなエンジンの上の儚い存在。スピードと無重力の探求。フランスの偉大な歌手レオ・フェレが“le sourire de la vitesse(スピードのほほ笑み)”と呼んだものだ。

画像: (インタビュー)レオス・カラックス監督が明かす過去作とのつながり

アネット
2022年4月1日(金)公開

仏=独=ベルギー=日/ 2021/2時間20分/ユーロスペース
監督:レオス・カラックス
出演:アダム・ドライバー、マリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバーグ
©2020 CG Cinéma International / Théo Films / Tribus P Films International / ARTE France Cinéma / UGC Images / DETAiLFILM / Eurospace / Scope Pictures / Wrong men / Rtbf (Télévisions belge) / Piano

\パルムドール受賞の“怪作”も公開/
第74回カンヌ国際映画祭受賞作が次々上陸!

頭にチタンプレートを埋め込まれた女性と駆け抜ける108分の旅!

画像1: 頭にチタンプレートを埋め込まれた女性と駆け抜ける108分の旅!

アレクシア(アガト・ルセル)
幼い頃の交通事故により頭にチタンプレートを埋め込まれている。異常なまでに車に執着するのはある理由があり…

2年ぶりに開催された第74回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いたのは、“肉食”女子の姿を描いた衝撃のデビュー作『RAW ~少女の目覚め~』(2016)を手掛けたジュリア・デュクルノー監督の長編2作目『TITANE /チタン』。

車に異常なまでの執着心を持つ女性を主人公に据えた本作は、その独創的な展開にポール・トーマス・アンダーソンやエドガー・ライトら個性派監督たちも大絶賛。カンヌ史上最も奇天烈な最高賞といわれる“怪作”が間もなく日本に上陸する。出演は『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』(1986)のヴァンサン・ランドン、インスタグラムで発掘されたアガト・ルセルは本作で長編映画デビューを果たした。

事故により頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア(アガト)は、車に執着心を抱くあまり、危険な衝動に駆られる日々。自ら罪を犯し行き場を失った彼女は、消防士のヴィンセント(ランドン)と出会い、共同生活を始める。

画像2: 頭にチタンプレートを埋め込まれた女性と駆け抜ける108分の旅!

ヴィンセント(ヴァンサン・ランドン)
息子が行方不明になってから10年が経つ消防士

(インタビュー)ジュリア・デュクルノー監督が明かすキャスティングの裏側

ジュリア・デュクルノー監督

©Philippe Quaisse

── アレクシア役にアガト・ルセルを選んだ選んだ経緯を教えてください。

アレクシアは顔を知られていてはいけませんでした。なぜならアレクシアが“突然変異”する時、見たことのある女優の変化を見ていると思ってほしくなかったのです。あいまいな輪郭の女性らしさを体現する、観客が先入観を持たない無名の俳優が必要でした。私の頭には中性的な体つきで、角度によって変化する顔を求めていたのです。

画像1: (インタビュー)ジュリア・デュクルノー監督が明かすキャスティングの裏側

キャスティングは漠然だけれど緻密でもありました。初めてアガト・ルセルを見た時、彼女は本当に目立っていました。理想の体つきと魅力的な顔、存在感も持ち合わせていて、スクリーンを支配していたのです。それこそ私が望んでいたものでした。

画像2: (インタビュー)ジュリア・デュクルノー監督が明かすキャスティングの裏側

── ヴァンサン・ランドンが演じるキャラクターはいかがでしたか?

私たちの付き合いは長く、ヴァンサンに当て書きしました。彼のキャラクターは子供のようで腹黒くて、人間的なのに怪物のようで…ヴァンサンにしかできない幅広い演技を必要としていたのです。彼は準備のために1年間重量挙げをやり、あの大きな体を作ってくれました。私たちは撮影中とてもうまくやれて、ヴァンサンは私を信頼してくれました。彼は役柄と私に対して、惜しみない力を尽くしてくれたのです。

TITANE/チタン
2022年4月1日(金)公開

フランス/ 2021/1時間48分/ギャガ
監督:ジュリア・デュクルノー
出演:ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル
© KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020 (c)Carole_Bethuel

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グランプリ受賞
『英雄の証明』2022年4月1日(金)公開

画像1: 【2022春】いま観たい! 最新フランス映画まとめガイド(前編)

『別離』(2011)『セールスマン』(2016)に続くアスガー・ファルハディの新たな代表作との呼び声高い本作。服役囚のある選択が人生を狂わせていく様をサスペンスフルに描く。

最優秀男優賞受賞
『ニトラム/NITRAM』公開中

画像2: 【2022春】いま観たい! 最新フランス映画まとめガイド(前編)

オーストラリア史上最悪の無差別銃乱射事件を引き起こした犯人を正面から描き、若き名脇役ケイレブ・ランドリー・ジョーンズを主演男優賞に導いた。

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