新型コロナウイルス感染症のあおりで映画館経営が厳しさを増す現在、映画館に人々が集う意義を再確認するとともに、映画の持つパワーを映画館という場所から捉えなおす機会ともなる展示会「日本の映画館」が東京・京橋の国立映画アーカイブにて2022年7月17日(日)まで開催中。

映画館の歴史を総まくり

シネコン全盛の現在だが、かつては繁華街に大型映画館があり、どの都市の街角にも小さな「町の映画館」があったもの。それらはいつしか姿を消していったが、ファンたちの脳裏には「何度も通ったマイ映画館」が今でも思い浮かぶかもしれない。
この展覧会「日本の映画館」では映画館の写真、プログラム、雑誌・書籍、ゆかりの品々を通じて映画館の誕生から隆盛期、ミニシアター発生の時代まで、シネコンが登場する以前の「観客たちの映画史」に迫る。映画館の歴史に興味があるとしたら、これは見逃せない好機だ。

画像: 千日前OSスバル座(1953年) 『シェーン』上映中

千日前OSスバル座(1953年) 『シェーン』上映中

画像: テアトル東京(1952年)『風と共に去りぬ』上映中

テアトル東京(1952年)『風と共に去りぬ』上映中

最初のコーナー「映画常設館の誕生」では1903年に浅草で開業した日本初の映画常設館・電気館の初期を捉えた写真、当時の浅草六区の模型、活動写真弁士の番付表、浅草遊楽館など劇場ごとのチラシなど初期の映画館や興行界の様子が伝わってくる資料の数々がズラリと並ぶ。

画像: 浅草六区活動写真街模型(東京都江戸東京博物館所蔵)

浅草六区活動写真街模型(東京都江戸東京博物館所蔵)

第2章「関東大震災復興から戦時期へ」では1923年の関東大震災による興行街の壊滅状態から即座に復興が始まり、再び賑わいを取り戻していく様が手に取るようにわかる写真やポスター、資料を展示。1930年当時の浅草大勝館、冨士館などの写真、大勝館製作の『コングの復讐』(33)宣伝用羽子板といったレアグッズも。『椿姫』(神田日活館)『キートンの結婚狂』(松竹座)などモダンなデザインの映画ポスターも当時の雰囲気を感じさせる。

画像: 浅草 冨士館(1930年ころ)

浅草 冨士館(1930年ころ)

第3章「新たなる復興から戦後映画黄金期へ」では、第2次大戦終了直後からすぐに動き出した映画興行界の躍進ぶりがわかる、映画以上に記憶に残る大型劇場の写真、ポスター、チケットなども展示され、このコーナーに懐かしさを覚える人も多いかもしれない。さらにかつては免許制だった映写技師の仕事にも注目。
また現在川崎市で映画館をメインとする事業を展開し、今年100周年を迎える株式会社チネチッタ(旧美須興行)をクローズアップする「東京から川崎へ~映画館『チネチッタ』の100年」と、北九州市の映画・芸術資料館松永文庫が所蔵する貴重な資料で構成される「北九州と興行主・中村上」が特別コーナーとして設置される。

画像: チネチッタ開館時の新聞広告

チネチッタ開館時の新聞広告

第4章「名画座とアート系劇場」では、名画座やミニシアターなど大型映画館とは違う役割を担った新たな劇場の登場を紹介。人世座、並木座など伝説の名画座のプログラムや、新宿文化、岩波ホールなどアートシアター、ミニシアターの先駆けの劇場を取り上げたり、シネマスクエアとうきゅうなど80年代にブームを呼んだミニシアターのパンフレット・コレクションなどが、当時の文化の在り方を振り返らせてくれる。

画像: ポスター:岩波ホール『大樹のうた』

ポスター:岩波ホール『大樹のうた』

「日本の映画館」
国立映画アーカイブ展示室(7階)
2022年7月17日まで(月曜、5月24~27日は休館)

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