最新インタビューを通して編集部が特に注目する一人に光をあてる“今月の顔”。今回は人気アイドルから演技派へと着実な成長を見せてくれるクリステン・スチュワート。新作『スペンサー ダイアナの決意』では今も多くの人の記憶に残るダイアナ元妃を演じて初のオスカー候補になりました。
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ある時期のダイアナはとても孤独な状態だったんです

子役時代から数えると20年以上のキャリアを持つクリステン・スチュワートは、『トワイライト』シリーズのベラ役で有名だが、その後は、どちらかというとインディペンデント系の作品に多く出演し、演技力にさらに磨きをかけているようだった。

その一つの到達点と言えそうなのが、今回の『スペンサー ダイアナの決意』での名演だ。アメリカ人の彼女が演じるのは英国王室で史上最も愛されたプリンセスと言われるダイアナ元皇太子妃。当時プリンセスであり、2児の母親であった彼女が、一人の人間としての選択を決断した3日間に迫る注目のドラマだ。クリステンは見事この演技で初のアカデミー賞主演女優賞候補に挙がった。最高の評価を受けた本作に賭けた彼女の想いを聞いてみよう。

“私にダイアナ役をオファーした監督はクレイジーなの?と思いました(笑)”

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クリステン・スチュワート プロフィール

1990年4月9日カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。TV製作者の父、脚本家の母の元、9歳から子役として活動。映画はジョディ・フォスターの娘を演じた『パニック・ルーム』(2002)で知られる。大ヒットした『トワイライト』シリーズ(2008~12)で人気女優に。『アクトレス 女たちの舞台』(2014)ではフランスのセザール賞助演女優賞を受賞するなど実力を発揮。最新作はデヴィッド・クローネンバーグ監督と組んだ『Crimes of the Future』(2022)。

── ダイアナのように人々に愛され、今も鮮烈に記憶に残っているような人物を演じることを依頼されて、どう感じましたか?

パブロ(ラライン監督)はクレイジーなのかと思いました(笑)。でも彼には確信のようなものがあったんです。私自身は、もちろんダイアナを美しくクールな人物と思っていましたし、亡くなった時の騒ぎも幼かったけど覚えています。

依頼を受けた時、「ザ・クラウン」のファンだったし、それなりに印象もありました。あまりに魅力的なオファーだったから基本的に「ノー」と言えなかったので「イエス」と答えてしまいました。とにかくやってみなくてはと思ったんです。

間違った言葉を使いたくないんですが、王室の人たちは特異な世界に置かれていて、私たち一般の者には共感することが難しい。部外者としての視点から彼らについて知りたいという熱意がダイアナを特徴づけていたのではないかしら。おそらく彼女は王室で最も普通の感覚を持った人だったから人々に親密さを感じさせ、そんな力を持つ彼女が人々と接すると世界が広がって美しい場のような感覚が生まれたのでは? でもある時期の彼女はとても孤独だったんです。これはやりたかった理由のうちの一つですけどね。

地雷がたくさん隠された大地を歩いているような感じですね

── 演じるうえで心掛けたのはどんな点ですか? 外見的なこと? 内面的なこと?

画像: 地雷がたくさん隠された大地を歩いているような感じですね

その両方です。彼女に関するものすべてを読み、すべて見ることが重要でした。それで彼女の気質や些細なふるまいなどすべてを吸収するんです。でもそれを忘れることも重要で、後はその瞬間瞬間をできるだけ楽しもうとしました。全身でそれを表現しなくては、作品にも私にもダイアナにも悪影響を与えてしまうから。

彼女はどんな時も生命力に溢れていて、全身全霊で演じなくては完璧にそれを再現することはできません。それは私にはできませんでした。なので私たちふたりを組み合わせた人物像になったということになるかしら。

── 英国の人にとって非常に繊細で特別なテーマのこの作品で、これまでなかった視点を得ることができました? または気をつけなくてはと思ったことは?

気をつけなくてはと思っているのは今です。撮影中は自分のベストを尽くすのみでしたし、その場に応じて正直になるしかありませんでした。この題材は回顧録もあり、誰もがそれぞれの捉え方がありますが、実際本当のことは誰にも分りません。ダイアナは救世主のような存在だったから、人々は彼女に思い入れが強いのだと思います。私も自分なりに思い入れや意見を持っています。他の人々もそうでしょう。とても複雑なテーマなので地雷がたくさん隠されている大地を歩いている感じがします。でも駆け抜けるだけですね。

スペンサー ダイアナの決意
2022年10月14日(金)公開

監督: パブロ・ラライン
出演: クリステン・スチュワート、ジャック・ファーシング、ティモシー・スポール、サリー・ホーキンス
配給: STAR CHANNEL MOVIES

没後25年となる“史上最も愛されたプリンセス”ダイアナ元英皇太子妃が、未来の王妃の座を捨て、女性として、母として、一人の人間として生きていく道を選んだ“決断の3日間”を実話を基にして描く『ジャッキー/ファーストレディ最後の使命』(2016)のパブロ・ラライン監督最新作。葛藤するダイアナを演じるクリステン・スチュワートはこの演技でアカデミー賞主演女優賞に初ノミネートされた。共演はジャック・ファーシング、ティモシー・スポール、サリー・ホーキンスら。

Photo credit:Pablo Larrain

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