映画人の王冠、または勲章のように例えられるアカデミー賞。必ずしも受賞した人のすべてが後に大成功を収めるわけではないけれど、業界で一目置かれ、その後のキャリアに大きな違いが生じるというもの。となれば、まずは受賞者になりたいというのがほとんどの映画関係者の本音だろうが、ほしくてもなかなか受賞できないのがアカデミー賞。実力が保証されていても、大ヒット作をいくつも放っていても、最終的には運が味方してくれなければオスカーはゲットできない。そんな運にまだめぐりあっていない映画人は星の数。その意外な顔ぶれを探ってみよう。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
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男優篇

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トム・クルーズ (ノミネート4回)『トップガン マーヴェリック』の製作者として作品賞にノミネート!

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今回(第95回)の候補者、候補作の中で見ると、いまだにオスカー無冠の大物で気になる人はやはり『トップガン マーヴェリック』のトム・クルーズだろう。噂された久々の主演男優賞候補にはなれなかったが、製作者として作品賞にノミネートされている。ブラッド・ピットも助演男優賞を撮る前に『それでも夜は明ける』(2014)で製作者としてオスカーを受けているので、そういう形でウィナーになることもありうるかもしれない。以前はトムもオスカーを狙ったような演技に重きを置く作品に時々出演することもあったが、今は振り切ったのかアクション娯楽作が先行しているので、本人の中で賞は二の次、という心境に変わったのかも。でも彼の映画界への貢献度からして、いずれは特別賞を受賞することは間違いない存在だ。

トムのように、大ヒット・エンタテインメント作に出演するようなマネー・メイキング・スターはなかなか受賞しにくいというジンクスも聞かれる。大物で言えばジョニー・デップも3度主演賞候補になったが、いまだ無冠だ。『アベンジャーズ』シリーズのロバート・ダウニー・Jr.なども若手時代に『チャーリー』(1992)で主演賞候補になったが、アイアンマン役を終え、今後は演技メインの作品に本腰を入れて念願の受賞につなげるかも。マーベル仲間のクリス・エヴァンス、クリス・ヘムズワース、クリス・プラットらもこれまでオスカーに縁がなく、彼らの中で誰が最初にオスカーを受賞するか。

他にも例えば『マトリックス』(1999)『ジョン・ウィック』(2015)などアクション主流のキアヌ・リーヴスも候補になったことはないが、アクション・スターがオスカー・ウィナーになることも難しいかもしれない。シルヴェスター・スタローンは『ロッキー』(1977)で主演賞と脚本賞に、『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)で助演賞候補に挙がったがいずれも逃してしまったのが惜しい。

同系列と思しきアーノルド・シュワルツェネッガーや、ブルース・ウィリス、ドウェイン・ジョンソンらも皆そろって候補に挙がったこともない。『007』(1962)シリーズでジェームズ・ボンドを演じた英国俳優では、ショーン・コネリーがボンド引退後、必死に演技派路線にイメージチェンジして『アンタッチャブル』(1987)でようやく助演賞を受賞したが、ロジャー・ムーア、ティモシー・ダルトン、ピアース・ブロスナン、そして今のところダニエル・クレイグも含め、ノミネートされた人はいない。

オスカーが嫌う? タイプはコメディ・スターも同様で、ビル・マーレイは『ロスト・イン・トランスレーション』(2004)で主演賞に、エディ・マーフィは『ドリームガールズ』(2007)で助演賞候補になったが、受賞には至らなかった。ジム・キャリーは『トゥルーマン・ショー』(1998)で絶賛されながら候補に上がらず、他にアダム・サンドラー、ジャック・ブラックといった人気者もいい線まで行きながら今のところ空振り。ウディ・アレンのように知的な笑いはいいが、ハチャメチャはオスカーに好かれないのか? スティーヴ・マーティンが名誉賞を受賞したことは貴重かも?

一方でベテラン実力派、個性派といわれる俳優たちでもなかなか受賞に至らない人も多い。英国俳優でさえ、リーアム・ニーソン、レイフ・ファインズ、ジュード・ロウ、ティム・ロス、イアン・マッケラン、テレンス・スタンプ、ベネディクト・カンバーバッチなどの名優が候補までいったが受賞はしていないし、ヒュー・グラント、ユアン・マクレガー、トム・ヒドルストン、ジェームズ・マカヴォイのような名だたる俳優でもノミネート・ゼロ。こういう状況を見てもオスカーを受賞することはかなり狭き門だと言えそうだ。

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