“家族とは何なのか”。23年前に土星から調査に来て、地球人に成りすましていた宇宙人が妹、弟にその事実を告白し、事情を知っていた兄も含め、みんなで残された時間を家族として奮闘する。映画『宇宙人のあいつ』はドラマ「REPLAY & DESTROY」(2015年)の緩いノリで中村倫也、伊藤沙莉、日村勇紀、柄本時生が4兄妹弟を演じたハートウォーミングなコメディです。企画を立ち上げ、脚本を書いた飯塚健監督にキャストや作品に対する思いを語っていただきました。(取材・文/ほりきみき)

「絶対にここでロケをしたい!」と思わせた高知の景色

──“中村倫也さんと伊藤沙莉さんで何かオリジナル作品を”ということで撮られた作品とのことですが、なぜこのお二人だったのでしょうか。

倫也と沙莉とは10年くらいの付き合いになります。2人とも「REPLAY & DESTROY」(2015年)に出てくれたこともあって、定期的に集まったり、お互いに近況報告をしたりしていました。そんな中で“オリジナルで一緒に映画を作ろう”という話になり、それをプロデューサーの柴原(祐一)さんに伝えたことがきっかけでした。柴さんは「REPLAY & DESTROY」にプロデューサーとして関わっていただけでなく、『ステップ』や『榎田貿易堂』『笑う招き猫』など、これまで最も多くの作品を共につくってきていたので、自然の流れでした。

画像: 飯塚健監督

飯塚健監督

──それで「REPLAY & DESTROY」のようなノリの作品になったのですね。

この話が出た頃、『ステップ』、『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』と真面目な路線の作品が続いていました。どちらも企画から関わり、思い入れのある作品でしたが、世の中がコロナ禍で鬱屈している時期だったので、むしろ何も考えずに楽しめる作品も必要なのではないかと思ったのです。柴さんも「REPLAY & DESTROY」のノリ全開でいいんじゃないかと言ってくれたので、「だったら、そっちのスイッチを久しぶりに入れましょう」という感じで始まりました。

画像: 日出男(中村倫也)

日出男(中村倫也)

──宇宙人を主人公にしたホームドラマという大胆な設定に驚きました。

まずは“何でもあり”ということにして、いろいろとアイデアを出し合う中で宇宙人が出てきました。特に理由はなく、ほとんどノリでしたね。舞台を高知にすることが後押しになったかもしれません。高知って実は宇宙人の目撃情報が多いんですよ(笑)。

画像: 想乃(伊藤沙莉)

想乃(伊藤沙莉)

──舞台を高知にすることは最初から決まっていたのですか?

この作品のプロデューサーをされている古味竜一さんは高知の実業家で、地方の経済を回すことに尽力されています。以前、市原隼人さん主演で映画を作ったことがありました。その古味さんが柴原さんに「何か高知で作れる映画はないでしょうか」と相談したことがベースとしてあったのです。まだプロットを叩いているタイミングでシナリオハンティングとして高知に招いていただきました。

コロナ禍でなかなか出掛けられない時期だったこともあり、古味さんに見せていただいた景色に癒されました。四万十川を見に行って、沈下橋に寝そべったときには「絶対にここでロケをしたい!」と思い、「ここならどんなシーンが書けるか」ということをひたすら考えました。そういうピースがいくつも繋がって、6~7割くらいできていた物語が完成していったのです。今回はロケーションに助けてもらった気がします。

──長男の夢二が経営する焼肉屋さんのロケーションも素晴らしかったですね。

1年くらい前に閉店した韓国系の焼肉屋さんがあったのです。居抜き(設備や什器備品、家具などがついたまま)でお借りできたのでラッキーでした。何もないところに排気口から作っていたらとんでもないことになっていたと思います。

──シナリオハンティングに行くまでに脚本を6~7割くらい書かれていたとのことですが、そこまでの執筆具合はいかがでしたか。

「REPLAY &DESTROY」寄りのスイッチを久しぶりに入れたので、めちゃくちゃ難航しました。何を以てして普通と呼ぶのかわかりませんが、普通はこうなったらこうなるということを予測しながら見たり、読んだりしていると思いますが、それを「えっ?」という風に覆していきたい。無茶苦茶なところで話を展開できたらいいなと思っていたので、そりゃ難航しますよね。

しかも、何も書けていない頃から、倫也と沙莉にはスケジュール感も含めて、待ってもらっていたので、2人が今までに見せたことがないような表情が撮れる話にしたいということが念頭にありましたし、2人とも「REPLAY & DESTROY」的な作品を待っているのがわかっているので、自分の中でどんどんハードルが高くなってしまったのです。

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