『クリード 過去の逆襲』で三度アドニス・クリード役を演じる上に、ついに監督業にも進出したマイケル・B・ジョーダン。初演出にして共演者たちからも賞賛される腕前を見せた彼のインタビューをお届けするとともに、これまでの道のりを振り返ってみましょう。(文・田中雄二/デジタル編集・スクリーン編集部)

マイケル・B・ジョーダンが歩んできた道

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マイケル・B・ジョーダン

いまやハリウッドを代表するような人気アクターとなったマイケル・B・ジョーダン。ここに至るまでの道のりはどんなものだったのでしょうか。デビュー時代から現在までを振り返ります。

12歳の時に子役スターとしてTV・映画デビューを果たす

マイケル・B・ジョーダンは、1987年2月9日、三人兄弟の次男として米カリフォルニア州サンタアナで生まれ、ニュージャージー州ニューアークで育った。父は元海兵隊員、母はハイスクールのカウンセラーで、ミドルネームはスワヒリ語で“高貴な約束”を意味する「バカリ」。ちなにみにNBAのスター選手だったマイケル・ジョーダンとの関連はない。

キッズ・モデルを経て、12歳の時にビル・コスビーに見いだされ、シットコム「コスビー」(1999)に出演。同年『ブラック&ホワイト』(日本未公開)で映画初出演を果たした。

その後、数々のテレビドラマに出演。特に「THE WIRE/ザ・ワイヤー」(2002)でのウォレス役、2009年から出演した「Friday Night Lights」で演じた高校アメフト界のスター選手、そして「Parenthood」(2010)でのアルコール依存症を克服する青年役は評判となった。

ロサンゼルスに移り、数本のインデペンデント映画やミュージックビデオに出演した後、超能力を得た青年を演じたジョシュ・トランク監督のSF『クロニクル』(2012)、第2次大戦下の陸軍航空部隊の一員を演じたジョージ・ルーカス製作の『レッド・テイルズ』(2012・日本未公開)などで、徐々に重要な役を得るようになる。

画像: 数々の賞を受賞した『フルートベール駅で』のライアン・クーグラー監督と Photo by Getty Images

数々の賞を受賞した『フルートベール駅で』のライアン・クーグラー監督と

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そして、ライアン・クーグラー監督の『フルートベール駅で』(2013)のオスカー・グラント役で一躍ハリウッド期待の若手俳優として注目を浴びる。白人警官が黒人青年を殺害した実際の事件を描いたこの映画は、サンダンス映画祭で審査員賞、観客賞を受賞した。

 続いて、『ファンタスティック・フォー』(2015)では再びトランク監督とコンビを組み、ジョニー・ストーム=ヒューマン・トーチを演じたが、映画は不評でシリーズ化はならなかった。

大好きな日本アニメの手法を初演出作に取り入れる

だが、またしてもクーグラー監督がブレークの機会を提供する。シルヴェスター・スタローンの代表作「ロッキー」シリーズの新章『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)で、ロッキーの盟友アポロの息子アドニス・クリード役に起用したのだ。肉体改造をして臨んだジョーダンは、ボクシングシーンも見事に体現し、続編の『クリード 炎の宿敵』(2018)も製作された。

画像: 『ブラックパンサー』の共演者ルピタ・ニョンゴ、故チャドウィック・ボーズマンと Photo by Getty Images

『ブラックパンサー』の共演者ルピタ・ニョンゴ、故チャドウィック・ボーズマンと

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一方、クーグラー監督との3度目の共同作品となったマーベルの『ブラック・パンサー』(2018)で演じた悪役エリック・キルモンガーも評判となり、続編の『ブラック・パンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022)にも出演した。

加えて、ジョーダンは『黒い司法 0%からの奇跡』(2019)やデンゼル・ワシントン監督の『きみに伝えたいこと』(2021・配信公開)などで製作も兼任したが、最新主演作『クリード 過去の逆襲』(2023)ではついに監督業に乗り出した。

スポーツ映画では初となるIMAX認証デジタルカメラでの撮影や、大好きだという日本のアニメの技法をボクシングシーンに生かすなど、シリーズに新風を吹き込んだ。

183センチの長身で、ハリウッドでもトップクラスといわれるファッションセンスの持ち主のジョーダンは、雑誌「ピープル」で「2020年の最もセクシーな男性」に選ばれたが、さまざまなチャリティー活動にも従事している。

【インタビュー】周囲の人たちも僕が3作目を監督するのが最適だと感じてくれたようだ

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マイケル・B・ジョーダン

─『クリード 過去の逆襲』では監督も務めていますね。どういう経緯だったのでしょうか。

前作の撮影が終わったばかりのころ、監督をやりたいという決心を固めていたんだ。僕がアドニスを演じ始めて8年くらい経つんだけど、アドニスは僕の人生の大きな部分を占めている。彼も僕も同じような勢いに乗っていたということを周囲も感じていたようで、3作目を演出するのは僕が最適だと思ってくれたんだ。

僕にはアドニスについて語りたいことがたくさんあった。それにこれをオリジナルストーリーにして、続編であり3部作にしたかった。そこで彼のトラウマに立ち返ることが重要と考えて、旧友デイミアン・アンダーソン(デイム)との交遊関係を描くことにしたんだ。

1作目ではアドニスが自分の名前のことをよく理解していなくて、受け入れたくないと考えている時期を描いた。2作目は父アポロの陰から抜け出したアドニスが描かれた。そして3作目ではアドニスと家族のことを描くのが唯一適切だと思えた。前進するフランチャイズだからね。

─二つの重責を担うことでどんな苦労がありましたか。

いつもは俳優として監督に演技指導を受けたりするんだけど、自分が両方をやるときは自分の直感を信じなくてはいけない。でも周囲のスタッフや共演者の意見も大事だ。彼らはとても良い相談相手になってくれた。

僕は映画の細部にこだわるんだけど、最終的に映画が報われるためには、あまりに細かくなりすぎないようにすることを心掛けた。一つのことだけで悩んでいたのではだめなんだ。報われない結果になるから。

─デイムを演じた初共演のジョナサン・メジャースはいかがでしたか。

彼は驚異的だったね。彼の作品をいくつか見たんだけど、そこからインスピレーションを受けた。話した時にわかったのは、彼はなんでも本気で話す人だから信じられると思った。そこで僕たちは何か特別なことができるんじゃないかと感じた。二人でデイムの肉体を作り出すのはとても楽しかったよ。

それと彼はセットにやってくるときスピーカーを持って音楽をかけながら現れるんだ。だから撮影中の僕は『今のテイクはここまで。雑音が入って使えないから』とみんなに言うんだ(笑)。それ以外の彼は楽しかったよ。

─このシリーズを通して観客に伝えたいことは何でしょうか。

僕らが『ロッキー』シリーズで愛しているもの、そして『クリード』シリーズで愛しているもの、それは負け犬(勝ち目のない弱者)たちの見せる根性だと思う。好きなキャラクターがいくつもの障害や苦難などを乗り越え頂点に立つのを見るとき、辛い人生を送る自分にも同じことができるのではないかと彼らには思える。これが映画の魅力で、『クリード』のような映画を力強いものにしていると思うんだ。

『クリード チャンプを継ぐ男』【2D字幕】&『クリード 炎の宿敵』【2D字幕】グランドシネマサンシャイン池袋にて2023年5月19日(金)から25日(木)まで1週間限定リバイバル上映(各日1作ずつ)

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『クリード 過去の逆襲』
2023年5月26日(金)公開
アメリカ/2023/1時間56分/配給:ワーナー・ブラザース映画
監督・主演:マイケル・B・ジョーダン
出演:テッサ・トンプソン、ジョナサン・メジャース、ウッド・ハリス

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