神徳幸治監督
1974年、大阪府出身。2004年に「加藤家へいらっしゃい!〜名古屋嬢っ〜」(メ〜テレ)で初演出。テレビドラマを多数手がけたのち、17年『ピーチガール』で映画監督デビュー。翌18年には『honey』が公開。主な作品に「警部補 矢部謙三」(10/EX)、「天の方舟」(12/WOWOW)、「あぽやん〜走る国際空港」(13/TBS)、「リバースエッジ大川端探偵社」(14/TX)、「MARS〜ただ、君を愛してる〜」(16/NTV)など。映像作品のみでなく、2006年には「劇団ROUTE30」を立ち上げ、4回の舞台公演を作・演出。2018年に制作され、脚本も手がけた映画『さかな』がAmazonプライム・ビデオ他で配信中。
恋愛だけではなくて、若い時に抱える夢だったり、
友情も見てもらいたいです。
──『ピーチガール』(2017年)、『honey』(2018年)に続き、人気恋愛コミックの映画化となりますが、本作ではどのようなことに意識していたのでしょうか。
「『ピーチガール』や『honey』に比べると、派手さはなく本作は少し地味というか、おとなしい感じの高校生の感情を描いています。しっかりと登場人物の中に入って、ちょっとした感情の揺らぎを丁寧に描いた作品だし、そこがすごくこの作品の良さでもあります。あまり過剰な表現をしないで、しっかりと原作にある世界観を丁寧に撮っていこうと考えました」
──“胸キュン”シーンで拘って描いた部分を教えていただけますか。
「『ピーチガール』を撮影する前に女子高校生に取材したことがあり、『びっくりするような距離感でキュンキュンする』と言われたんですね。“胸キュン”シーンを描くときは漫画原作の構図や表情を見直したり、一人でいろいろなことを確認しながら撮っていて、距離感を大事にしています。ふだん話している距離よりももう一歩踏み出し近づいて話す感じというか。恋愛漫画の“胸キュン”シーンはありえない距離で近いのでその世界観や、光の入れ方にも拘り、そのカットは時間をかけて撮影しています」
──キャスティングについてですが、普段の天真爛漫なラウールさんとは違い、界は落ち着いた声のトーンでクールなイメージですよね。
「ラウールさんがこんなキャラクターだったんだっていうことを知ったのが実は最近なんです(笑)。本読みをしたときから界を作り上げてきていたので、『普段はこんなにあどけないの?』と思いました」
──セリフや頭ポンポンなど“キュンキュン”するようなシーンがたくさんありますが、そのようなシーンの撮影のとき、ラウールさんはどのような様子でしたか?恥ずかしがったりしていましたか?
「お芝居の稽古をしているときから『ラウールさんとして言うのではなくて、界として言うんだよ。自分の中で役に切り替えて』というのはラウールさんに伝えていて、現場では恥ずかしがったりはしていなかったです。撮影して編集したものを僕が現場で見ていたりすると、それを見るのは恥ずかしがっていて、ずっと下を向いていましたね。『自分が演っているのが恥ずかしくて見られません。Snow Manのメンバーとだったら見られます』と言っていました(笑)」
──ラウールさんから演じるにあたり何か提案はありましたか?
「本読みのときに物語の最後のシーンをどう言うかというのは二人で考えましたね。ちょっとした語尾だったりちょっとした言い方だったり。撮影現場では、感情の見え方をディスカッションしながら確かめ合って撮影をしました」
──ラウールさんは本作が単独で初主演映画となりますが、クランクインとクランクアップの日の成長はいかがでしたか?
「音感がいい子は芝居もできるので、あとはどのように気持ちの作り方などを教えればいいかと思っていました。ラウールさんは自分なりに界という役を考えてきている努力もあって驚くぐらいに成長していて、どこに出ても恥ずかしくないぐらいの役者になりましたね。現場にも馴染んできて、いろいろなことを吸収していたと思います。クランクインの前にラウールさんに『会うたびにワクワクする。クランクアップまでワクワクさせてほしい』と言っていたのですが、毎日成長が見えてワクワクしました」
──夏にピッタリな爽やかな恋愛映画となっていますが、メッセージをお願いします。
「恋愛だけではなくて、若い時に抱える夢だったり、友情も見てもらいたいです。見てくださる方が、少しでも一歩踏み出してくれるような勇気などを感じてもらえると作って良かったと思います」
──好きな恋愛映画やドラマを教えてください。
「これを恋愛映画というのか分かりませんが…レオス・カラックスの『汚れた血』(86)です。愛に対する疾走感の映像が良かったです。あとは、『Love Letter』(95)とか、 “月9”世代なので、『東京ラブストーリー』(91)などを見て育ちました。“月9”の物語の最後に出てくる回想シーンが好きで、僕が映画を作るうえで走馬灯のように回想シーンが出てくるのは、月9に影響された作り方ですね」
text/丸山あゆみ
ABOUT MOVIE
全国公開中『ハニーレモンソーダ』
配給:松竹
監督:神徳幸治
出演:ラウール(Snow Man)、吉川愛、堀田真由、濱田龍臣、坂東龍汰、岡本夏美
©︎2021「ハニーレモンソーダ」製作委員会 ©︎村田真優/集英社
集英社「りぼん」連載作品。累計発行部数700万部突破の大ヒット少女コミック「ハニーレモンソーダ」の実写映画化。原作は2020年9月号の雑誌「セブンティーン」(集英社)で、“読者が選ぶ好きな少女マンガ&実写化してほしいマンガランキング1位”を獲得した人気作。中学時代“石”と呼ばれていた自分を変えるため、自由な高校に入学した石森羽花(吉川愛)。そこで出会ったのはレモン色の髪色をした三浦界(ラウール)。実は、彼こそが、羽花がその高校を選んだ理由だった。界はなぜか自分を“石森係”と呼び、羽花の世話を焼いてくれるように。距離が近づいた2人は想いを伝え合い、幸せな毎日を送っていたが、実は界には羽花には伝えられていない秘密があって…。