太平洋戦争末期の精神病院を舞台に、病院内との対比で外界の狂気を問うテーマを、シリアスなだけではなく、ユーモアとサスペンスとファンタジー要素も織り交ぜ描き絶賛された創作舞台「ハオト」が映画化。戦後80周年を迎える2025年夏にいよいよ劇場公開となる。そこで、本作で看護師・真関智世役を演じたAKB48の倉野尾成美、21世紀の男性と伝書鳩で交信しているという不思議な少女・真行寺藍役を演じた村山彩希にインタビュー。AKB48を今年6月15日に卒業した村山にとって、今回の倉野尾との再会は、とても楽しみな出来事だったそうだ。

撮影/久保田 司
インタビュー・文/辻 幸多郎

画像1: 倉野尾成美(AKB48)×村山彩希:映画『ハオト』インタビュー

こういう時代を乗り越えて今があるということを改めて思うような作品だと思います

──倉野尾さんは、映画初主演作である前作『いちばん逢いたいひと』に続き、丈監督作品への出演となります。オファーをいただいた時の率直なお気持ちは?

倉野尾「監督が“もし次映画を撮ると決まったら、また声をかけるね”みたいな感じで、前作の時おっしゃってくださったんです。でも、本当に形になるとは思わなくて。だから、びっくりしました。実際、出演者の方のお名前を見た時、皆さんすごい俳優さんばかりで緊張していたんですけど、こういうは機会なかなかないですし、前作の時に(母親役で)すごく優しくしてくださった高島礼子さんもいらっしゃったので、“挑戦するからには頑張ろう!”という気持ちでクランクインに臨みました」

──村山さんは、映画初出演だと思っていたら、実際はそうではないんですよね。

村山「いや、ほぼ初です。たぶん私、(キャスティングされた当時は)演技をするというイメージがなかったと思うんですよ。だけど、丈さんが(AKB48)劇場に来てくださった日に、たまたま私が(AKB48)劇場にいたということがあって」

──見つけていただいた。

村山「はい。歌って踊って表現するのと演技で表現するのはまた違うと思うので、“丈さんはなぜ私に決めてくださったんだろう……”とは思ったんですけど、ありがたいお話ですし、このご縁は大事にしていきたいなって思いました」

──本作は〈戦後80年平和祈念作品〉となりますが、ご覧になっての感想はいかがでしたか?

村山「令和の今だからこそ観ていただきたい作品だと思いました。80年前って、令和に生きるほとんどの人が知らない世界で、私も生きていたわけではないから、(自身が演じた)藍ちゃんという役を通して知ることがすごく多かったんです。こういう(戦時中の悲惨な)時代を乗り越えて平和な今があるというのもそうですし、当たり前だと思っている幸せは、昔は当たり前ではなかったんだって。今のありがたみがわかるという意味で、本当に幅広い方に観ていただきたい作品だなって、改めて思います」

倉野尾「戦時中の物語で、しかも精神病院の中での話だけど、意外とコミカルに描かれている部分もあるなと思いました。というか、私が出ているシーンって結構コミカルなシーンが多くて、私はコミカル担当みたいな感じで。恋心が描かれていたり、てんやわんや一生懸命に看護師を務めているシーンがあったり」

──でも、そのコミカルなシーンがあるから、戦時下を描いた作品ではあるけれど、重すぎないんですよね。

倉野尾「私も自分のシーンが箸休めみたいになったらいいなとすごく思います。そういう平和なシーンがある分、時折鳴り響く銃声の音だったりが戦時中の恐怖を際立たせている。戦争って、死と隣り合わせにいるんだって。こういう時代もあったんだとか、それを乗り越えて今があるということを改めて思うような作品だなと思います」

──それぞれの役柄についても教えてください。

村山「藍ちゃんは、(精神病院の)患者なんだって不思議に思うぐらい普通の女の子で、同じ病院の患者さんに寄り添ってあげたりする優しさがあるんです。でも、伝書鳩を飛ばして未来の人と交信している辺り、藍ちゃんが一番闇深いかもしれない。純粋無垢な子が“誰か私を見つけてください”って言うところに、私は重みを感じました」

──倉野尾さんは看護師の真関智世役。

村山「すごいよね。私より年上の役だもんね」

倉野尾「そうなんですよ。そう見えていたらいいなってぐらい、顔が幼すぎるんですけど(笑)。(真関は)婦長に一生懸命ついていこうとしている、突っ走ってなんでもがむしゃらにやりますみたいな看護師さんで、とにかく何でも全力で、恋も“それだけ?”とか言っちゃうような役どころなんですけど(笑)、コミカル担当な感じがするし、“やりすぎぐらいでもいいよ”と監督に言われたので、思い返すと、結構楽しんで撮影していたのかもなって思います」

画像: こういう時代を乗り越えて今があるということを改めて思うような作品だと思います

誰かに恋をしている顔、初めて見ました(笑)

──お互いの演技についてはどうですか?

倉野尾「藍ちゃんという役の雰囲気がちょっと独特というか、鳩とずっと一緒にいたり、周りが男性の中で一人ポツンといる。でも、その存在感の強さがゆいりさんにぴったりで。不思議ちゃんテイストだから(雰囲気を)醸し出すのって結構難しいと思ったけど、表情の柔らかさを含めてゆいりさんとマッチしているなと勝手に思っていました。ニコニコしているシーンも、逆に何かあるニコニコなんじゃないかなって勘ぐっちゃうような表情をしていて。すごく含みのある演技だなと思いました。素敵でした」

──逆にどうですか?

村山「私、なるちゃんが誰かに恋をしている顔、初めて見ました」

倉野尾「そこですか!?(笑)」

村山「いや、なんかそういう要素ないじゃない。前作が一人の少女みたいな感じだったから、“なるちゃんってこんな顔するんだぁ”って。メンバーのなるちゃんじゃなく、一人の女を見ました(笑)。でも、本当にすごいなと思って。私が幼い役だったからこそ、なるちゃんがめちゃめちゃ大人に見えましたし、大御所の役者さんたちに囲まれながらもそこについていく姿を見て、私はシンプルに尊敬していました。一発で決めなきゃいけないシーンも、本番一発で決めて、もう拍手でした」

──NGを出せないシーンがあったんですね。

倉野尾「どうしようと思いました。でも私、そういう時はいつも“人生100年”って考えるんですね。“そしたら一瞬だ”って思って、一度自分の気持ちを軽くするんです」

──撮影は2年前とのことですが、同じAKB48のメンバーが一緒にいる現場というのはどうでしたか?

村山「でも、意外とすれ違いだったんです。なるちゃんは連泊が多かったけど、私は日帰りが多くて。いつも一人で新幹線に乗っていました」

倉野尾「長野で撮影だったんですけど、私はバッて一気に撮っちゃうことが多かったですし、同じ病院内でも、患者側と看護師側でシーンが分かれていたので、そういうこともあってか一緒に撮影することは少なかったです」

村山「一度、ほぼ全員での撮影の時に、なるちゃんに触ってもらった瞬間があったんです。看護師として“大丈夫?”みたいな感じで。それがすごくほっとしたのを覚えています」

──メンバーがいるって、やはり違う。

倉野尾「全然違いますね。私も安心していました。存在だけで“ゆいりさんがいるから大丈夫だ”みたいな」

画像: 誰かに恋をしている顔、初めて見ました(笑)

元気がなくなったら劇場に行くね

──村山さんは6月15日にAKB48を卒業されたから、今日は久しぶりに一緒の現場?

倉野尾「そうですね。2週間ぐらい前にちらっと会ったんですけど、ガッツリという意味では久々です。私、さっきビックリしちゃって。卒業してもう1カ月も経っているんですよね。ゆいりさん、全然変わらないからまだ卒業された実感がないというか、劇場に来そうな感じがしちゃう(笑)。でも、時折感じますね。“あれ? いないな……”って」

村山「私も感じる。“いないな……”って」

倉野尾「いやいや、ソロでやられているわけですから(笑)」

村山「私、卒業後、ちょっと落ち込んでいたんですよ。“この先どうしよう……”みたいな感じで、どこにも行けないぐらい悩んでいて……」

──痩せましたよね。

倉野尾「私も思いました」

村山「めちゃめちゃ痩せました。それもあって、元気をもらいに行こうと思って(AKB48)18期生のコンサートを観に行ったんです。その時になるちゃんと“今後、元気がなくなったら劇場に行くね”っていう話をして。本当に行きます」

倉野尾「いつでもみんな待ってます」

村山「今日も楽屋に入った瞬間、知ってるメイクさん、衣裳さん、マネージャーさん、なるちゃんがいて、もうパワースポットかと思いました(笑)。こんな空間が当たり前だったんだっていうのが嬉しすぎて、なんか白米3杯ぐらい食べた感じ(笑)」

倉野尾「すっごい笑顔で入ってきたんですよ(笑)」

村山「今日の取材日、本当にありがとうって思っています。嬉しすぎる」

──それぞれの近況も聞かせていただきたいのですが。村山さんは初主演舞台「新・幕末純情伝」が8月8日より新宿・紀伊國屋ホールにて上演されます。

村山「この映画の公開日と舞台の初日がどん被りしているんですけど、2年前の自分と最新の自分が観られるということで、ぜひ見較べていただきたいなと思います。正直、この取材を受けている段階(7月上旬)では、自信を持ってお届けできると言えるにはまだまだなんですけど、1カ月後、自信を持って“楽しかった!”と言っているゆいりーを見据えて、ぜひ舞台も楽しみにしていただきたいなと思います」

──倉野尾さんは総監督を務めるAKB48としての話題が盛りだくさんかと思います。

倉野尾「はい。8月13日にAKB48 66枚目のシングル「Oh my pumpkin!」が発売されます。20周年イヤーのシングルになるので、海外のメンバーだったり、卒業生だったり、総勢22名の選抜メンバーで盛り上げていくんですけど、全国ツアー(「AKB48 20th Year Live Tour 2025
〜PARTYが始まるよ〜」)も8月16日からスタートするので、12月8日の20周年の日まで、AKB48としても頑張っていきたいなと思います」

──では最後に、メッセージをお願いします。

村山「この映画に触れた時、“こういう感情を知っておいてよかったな”って絶対になる映画だと思うので、ぜひ一度、この作品に触れていただいて、私もAKB48を卒業して感じましたけど、当たり前だった環境がどれだけありがたかったのかっていう感情を抱いていただきたいなと思います。そして、1回目は戦時の話に触れていただいて、2回目はコミカルなシーンを楽しんでいただけたらなって思うので、ぜひ何度も観ていただけたら嬉しいです」

倉野尾「観てくださった方の心に絶対何かが残ると思うし、物語の中でどこに感情移入するかによって見え方が変わってくるんじゃないかなと思う作品なので、ぜひ何度も観て、いろいろ発見していただけたらと思います。戦争って、自分も経験はしていないけど、だからこそこういう作品を通さないと感じられない部分、知らない部分ってあると思うんです。メッセージ性が強いからこそ、ぜひ映画館という集中して観られる空間で、この作品を観てほしいなと思います」

画像: 元気がなくなったら劇場に行くね

PROFILE

画像: PROFILE

倉野尾成美 NARUMI KURANOO

2000年11月8日生まれ。熊本県出身
AKB48メンバー。2024年よりAKB48グループ4代目総監督となる。2023年に主演映画『いちばん逢いたいひと』及び『ガールズドライブ』が公開された。

画像: 倉野尾成美 NARUMI KURANOO

村山彩希 YUIRI MURAYAMA

1997年6月15日生まれ。神奈川県出身
2021年、舞台「マジムリ学園-LOUDNESS-」でトリプル主演。2025年6月、AKB48を卒業。革命ミュージカル「新・幕末純情伝」で舞台単独初主演を果たす。

作品紹介

画像2: 倉野尾成美(AKB48)×村山彩希:映画『ハオト』インタビュー
画像3: 倉野尾成美(AKB48)×村山彩希:映画『ハオト』インタビュー
画像4: 倉野尾成美(AKB48)×村山彩希:映画『ハオト』インタビュー

『ハオト』

初夏のある日、警察署に90歳を超えた一人の老人が甥っ子の刑事宛に訪れ、「人を殺した」と告白。老人は、太平洋戦争末期の特殊施設の話を始める。
表向きには精神病院と称されていた特殊機密施設。患者は、戦争や軍を批判し精神病扱いをされた元エリート海軍兵の水越(原田龍二)、原子爆弾開発間近に解離性同一障害となった荒俣博士(片岡鶴太郎)、虚言症と診断されたが戦況を語るその虚言が100%当たる「閣下」(三浦浩一)、21世紀の未来の男性と交信していると伝書鳩を飛ばし続けている藍(村山彩希)ら。貝瀬婦長(高島礼子)、梶谷医師(植松洋)、真関看護師(倉野尾成美(AKB48))が患者を担当している。
この施設は、陸軍将校の森本(木之元亮)が指揮していたが、指揮権が海軍の将校・蓬(長谷川朝晴)に移行。蓬は、ハワイ生まれの日系人である米国の諜報員・津田(バーンズ勇気)を二重スパイとして雇い、施設に連れてくる。蓬は、ソ連に仲介してもらい、和平交渉を進めようと、日系ソ連人のソ連大使と陸軍将校の森本を施設に招こうと画策。方や米国は、津田の存在を怪しみ、同じく日系ハワイ人の田中(金城大和)を送り込む……。

監督・脚本:丈
出演:原田龍二 長谷川朝晴
   木之元亮 倉野尾成美 村山彩希 三浦浩一 二瓶鮫一 植松洋 マイケル富岡 金城大和 バーンズ勇気
   片岡鶴太郎 高島礼子 
配給:渋谷プロダクション
8月8日(金)池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

©JOE Company

画像5: 倉野尾成美(AKB48)×村山彩希:映画『ハオト』インタビュー

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