お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹の爆発的な大ベストセラー「火花」に続く、第2作目の小説「劇場」の実写映画化である本作。4月17日(金)の公開を前に完成記念イベントが報道陣のみの無観客で3月25日に行われた。
写真左から:原作者・又吉直樹、松岡茉優、山﨑賢人、寛 一 郎、行定勲監督

本作は、劇作家を目指す主人公・永田と、彼に恋をして必死に支えようとする沙希の、生涯忘れることができない恋を描いた恋愛小説。監督を務めるのは、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)『ナラタージュ』(2017)等、時代ごとに新たな恋愛映画のマスターピースを贈り続けてきた行定勲監督。恋愛における幸せと背中合わせのどうしようもない葛藤や矛盾を真っ向から描いており、令和の時代に新たな恋愛映画の傑作の誕生を感じさせる。

主演を務めるのは、山﨑賢人。演劇に身も心も捧げながら、実生活では社会や周囲の人々とうまく協調できない不器用な青年・永田を、撮影前に何度も監督とエチュードを重ね役を作り上げたという山﨑は、これまでに見たことのない表情で挑んでいる。ヒロインを務めるのは、『万引き家族』(2018)で世界に認められた若き実力派女優、松岡茉優。葛藤や迷いを抱えながらも、純粋に彼を愛そうとする健気な沙希を、儚くも愛しく演じている。更に『下忍 赤い影』(2019)で主演を務めた寛 一 郎、「全裸監督」(2019)、「映像研には手を出すな!」(2020)など話題作への出演が続く伊藤沙莉、ドラマ「あなたの番です」(2019)での刑事役で話題となった浅香航大、そして昨年紅白出場も果たした人気バンド「King Gnu」のボーカル井口理ら、多才な顔ぶれが集結している。

完成記念イベントの模様

画像1: 左から:原作者・又吉直樹、松岡茉優、山﨑賢人、寛 一 郎、行定勲監督

左から:原作者・又吉直樹、松岡茉優、山﨑賢人、寛 一 郎、行定勲監督

3月25日(水)に完成記念イベントが実施された。主演の山﨑賢人松岡茉優寛 一 郎、メガホンをとった行定勲監督、そして原作者の又吉直樹が登壇し、コロナウイルス拡散防止の観点から無観客で行われ、映画『劇場』のタイトルにかけて、劇場客席にてトークを行った。

完成した映画の感想

山﨑 初めて原作を読ませて頂いたときに絶対永田を演じたいなと思いました。いざ撮影をさせて頂いて、永田の人間としての弱さや愚かさが自分の中で魅力的で共感できますし、映画としての“劇場”がいい作品になったなと思っています。
松岡 最初にお話しを頂いて台本を読んだときに、言いたい台詞がたくさんありました。誰かを想ったことがある人には必ず響く作品になっていると思います。ご自身の大事な人やモノと重ね合わせながらこの物語を観てくれたらと思います。
寛 一 郎 お客さんがいない中での舞台挨拶って慣れないですよね。なんか会見みたい(笑)原作は出演が決まる前から読んでいて、永田と共通する部分は無いはずなのに彼の感情の機微が痛いほど分かるんです
又吉 『劇場』は大切にしている小説でして、映像化されたものを観たときに、すごく原作を大切にしてくださっているのを感じると共に、僕自身が分かっていなかったことが映像を見ることで発見出来たりもしたので、原作を読んでくださった方にも観て頂きたいですし、自信をもってお勧めしたいと思います。
行定監督 すごく思い入れのある作品になりました。原作が出版されてすぐに読んで、読み終わったらこの映画のラストシーンが思い浮かんだんです。これは他の人には撮らせたくない!と思ってプロデューサーにすぐ電話したのを思い出します。

《ここは絶対観て頂きたい!という推しシーン》について

山﨑 ラストは絶対観て欲しいのですが、松岡さんを後ろに乗せて自転車で二人乗りするシーンですかね。すごく頑張ったので(笑)。
松岡 私を後ろに乗せながら自転車を漕いで4ページ分ぐらいのセリフがあって、更に長回し一本撮り。しかも噛まないんですよ。信じられない!
又吉 松岡さんはセリフが無いのに態勢だけですごく感情が伝わってくるんですよね。あそこは是非観て頂きたいですね。
永田と沙希が二人で部屋にいるシーンはどれも好きなんですけど、沙希が壁にもたれてベッドに座ってパンを食べているシーンがヤバいですよね(笑)あの空間と二人の距離と関係性というのが大好きですね。
行定監督 あのシーンの撮影の頃になると僕は松岡茉優に指示を出さないって決めていて。最初のうちは指示していたんだけど悉く松岡が違うことやってくるんです。それが面白いわけですよ(笑)どこに座りたいって聞いたら『なるべく離れたところ』って言ってあそこに座ったんです。僕はもうちょっと近くてもいいだろうと思っていたんですけど、これが女性の気持ちなんだなと思いましたね。そこに対する永田の距離感も絶妙です。

「生涯忘れられない恋」を描いた恋愛映画というコピーにかけて、《生涯忘れらない〇〇》について

山﨑 学生のころに自分で釣りをして捕った魚を民宿のおじさんが焼いてくれた味が忘れられない。
松岡 15、6歳の時にオーディションで読んだ台本で、悲しいことがあって泣きながらうどんを食べるシーンがありまして。泣きながら何か食べると味が変わると思うんですけど、台本を読んでいた時に、その味が浮かんだんですよ!泣いているときに食べるうどんの味はこれだ!って思って、そのシーン絶対やりたいと思ってオーディションに挑んだんですけど落ちてしまったんです。忘れられない台本というかト書きでしたね。
又吉 1作目の火花を書いたときに、中国でも出版されることになって上海に行ったんです。そしたら色んな報道陣の方が来てくださって、熱心に質問して下さって本の内容を話せたので嬉しかったんですね。そしたら翌日通訳の方が、昨日僕が話したことが新聞に載っていると教えてくれて、『何て書いてあるんですか』と聞いたら『又吉さんの髪の毛はラーメンみたいだった』と(笑)なんでそんなことを書いたんだろっていうのは生涯忘れないですね(笑)。

画像2: 左から:原作者・又吉直樹、松岡茉優、山﨑賢人、寛 一 郎、行定勲監督

左から:原作者・又吉直樹、松岡茉優、山﨑賢人、寛 一 郎、行定勲監督

行定監督と親交の深いポン・ジュノ監督から『劇場』を鑑賞した感想が記載された手紙(MC代読)のサプライズ

成長と克服に関する物語で、はてしなく長く、終わりの見えないある時期を乗り越えていく物語ですが、青春期の男女の感情の繊細な調律師である行定監督ならではの熟練した、老練な腕前(力量)を再確認させてくれる作品でした。
山﨑賢人さんは不確かな天才から醸し出される不安感、不確かな天才に向けて沸き起こる憐憫、そのすべてを可能にしました。松岡茉優さんは天使の安らぎと、反対に天使からもたらせる息苦しさの両面を見事に表現していたと思います。
二人の俳優の演技が素晴らしく、本当によかったです。この作品はまさに行定監督にしか作り得ない、長くも繊細な愛の物語であるという点で非常に印象深かったです。またこの映画は、クリエイターあるいは芸術家が抱く不安や苦痛、偏狭さや卑怯な一面をリアルに描いており、その否定的な感情を乗り越え、成長に導いていく自己省察と忍耐までも描かれています。それは同じ作り手という立場にとって、一層胸に迫るものでした。 
奉俊昊(ポン・ジュノ)

最後に主演の山﨑賢人から

この映画は観終わった後、大切な人を思い浮かべる作品になっていると思います。生きていく中で上手くいかないこともたくさんあると思うんですけど、最後にはいい方向に向かっていくんじゃないかと思える作品になっているので、公開まで魅力を伝えていけるように頑張りたいと思いますと

映画『劇場』

2020年4月17日(金)全国ロードショー

出演:山﨑賢人 松岡茉優
寛 一 郎 伊藤沙莉 上川周作 大友 律 / 井口 理(King Gnu) 三浦誠己 浅香航大

原作:「劇場」又吉直樹 著(新潮文庫)
監督:行定勲
脚本:蓬莱竜太
音楽:曽我部恵一
配給:松竹 アニプレックス
公式 twitter・Instagram:@gekijyo_movie
©2020「劇場」製作委員会

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