「事故物件」とは、殺人・自殺・火災による死亡事故等があった“いわくつき”の部屋のことを総称してそう呼ばれている。松原タニシ氏は、2012年から様々な事故物件を渡り歩き、現在も事故物件に住み続け、その物件数は10軒にも及ぶ。本作の原作者である松原タニシが、テレビ番組「北野誠のおまえら行くな。」の企画で事故物件に住み、それをきっかけに著書「事故物件怪談 恐い間取り」を出すに至り、映画化となった心境や事故物件について、そして事故物件の魅力などを語ってくれた。
――テレビ番組の企画からノンフィクション書籍の出版に至り、映画化が決まった時の周りの方からの反響や反応はいかがでしたか?
「テレビ番組の鎌倉泰川監督からは“よくやったな!”という感じでした。北野誠さんは喜んでいましたね。僕を事故物件に住ませた張本人なので、“なんであんなひどいことを後輩にするんだ”とたまに叩かれることもあるようです。誠さんは番組スタートした時点で、いずれ映画までとは言わないですけど、ドラマ化くらいは運が良ければあるんではないかと思っていたみたいです。ただ本作の主演が亀梨くんとは思わなかったようで、そこはビックリしたと言っていました。」
――松原さんのその時の心境は?
「映画化が決まった時は、信じられないという気持ちが大きかったです。」
――ご覧になってみていかがでしたか。
「おもしろかったです。今でも自分の体験が映画になってるということがまだ実感が湧かないです。もしかしたら夢じゃないかと。長い夢を見ているんではないかと(笑)。」
――松原さんは事故物件に住む前から、心霊体験や霊感などあったんでしょうか。
「ほぼないですねー。中学生の時にプロレスが好きで、みちのくプロレスに新崎人生というレスラーがいるんですけど、体にお経を書いているレスラーで。そのコスプレをしてスキー合宿に行った時に、金縛りにあいました。南無阿弥陀仏~と心の中で唱えたら直ったというそれくらいです。」
――体に書いたお経は本物のお経なんですか?それとも適当に漢字を並べた感じだったんですか。「親父が、僕が中学校に入るちょっと前に、元々キリスト教だったのに、光が見えたと言って浄土真宗に改宗して、今は坊さんになっているんですけど、家に浄土真宗の正信偈(しょうしんげ)というお経の本があって、本物のお経を書いてコスプレして、写真を撮ったら金縛りにあったんです。これお化けかもと思いましたね。」
――では中学生の金縛りにあって以来2012年の番組で事故物件に住むまでは、心霊現象などとは無縁だったんですね。
「なかったですね。」
――そもそも事故物件に住むということに、抵抗感はなかったですか?
「ありました、ありました。恐いですし……。んー、興味はあるんですけど、オカルトマニアでもないですし、ただ学生時代に北野誠さんのラジオをよく聴いていて、憧れの先輩で、誠さんの心霊番組に携われるっていうことのほうが僕の中では大きかったんです。テレビのレギュラーがまったくなかったので、誠さんの番組に出られるということで、何か結果を残さないといけないと言いますか、住み続けるということが番組の企画ということで、リタイアはできないなというところです。」
――これまで10軒の事故物件に住んでらっしゃいますが、事故物件に住む際に必ず行っていること、儀式的なものはありますか?
「映画の中で亀梨さん演じる山野ヤマメが、何軒目かの物件で白昼にお邪魔しますと言うシーンがあるんですけど、その気持ちは確かにあるというか、そこで住んでた人が亡くなっているのが事故物件なので、よろしくお願いしますという気持ち・敬意のようなものを表しています。敵じゃないですよという感じです。」
――松原さんが事故物件を選ぶにあたっての条件とは何ですか?
「当初は経済面と立地です。大阪の中心のミナミに近くて、安いところ。5万円以内4万円を切ったらうれしいという感じでした。その中でも、珍しい物件、殺人もそうですし、自殺もです。孤独死が事故物件の大多数なので。最近は孤独死の物件ばかりに住んでいますね。最初の頃に、殺人と自殺と立て続けに住みまして。今は孤独死と首つりです。東京と大阪に借りています。あと沖縄に別荘を。」
――周りの人からは“住むのをやめたほうがいい”というような助言はありましたか?
「最初にありましたね。周りの芸人ですとか知り合いの飲み屋でこういうことがあったという話をすると“絶対やめとき”と言われましたね。2軒目の時に親父を部屋に呼んで、番組でお経を唱えてもらうという企画があったんです。親父とほとんど話すことなかったんですけど、撮影を始める前に、親父が僕に“幽霊って本当にいると思っているのか”と問いかけてきて、“正直1軒目でこういうことがあったからいると思うよ”と答えると、“浄土真宗では亡くなった時点で浄土へ行くという考えだから、幽霊はいたらおかしいということになって、供養とかで読経はできない”と言われて、”撮影やからお願いしたいんやけど”とお願いしても、“でも霊を成仏させるための読経はできない”と、はじめて親子喧嘩になりました。カメラが回ってないところですけど(笑)。親父にとって、事故物件に住んで本を書くことは、怪談というよりもレポートだと思っています。」
――最後になりますが、松原さんにとって事故物件に住むこと、事故物件の魅力とは何ですか?
「自分を強く鍛えられる場所です。鍛えすぎて、あんまり効果はなくなってきているかもしれないですけど(笑)。でも恐いと思っていたことが当たり前にできるようになった時に、誰に対しても偏見を持たずになれると言いますか。事故物件を住めるようになったら、そこで亡くなった方のことを恐いと思わずに住めたということになるので、忌み嫌うものに対して、ふたをするのではなくて、向き合える精神力を持てるようになるのかなという気がします。」
松原タニシ氏著書が原作の映画『事故物件 恐い間取り』 は、8月28日(金)全国ロードショー
松原タニシ TANISHI MATSUBARA
1982年4月28日生まれ。兵庫県出身。松竹芸能所属のピン芸人。現在は「事故物件住みます芸人」として活動。2012年よりテレビ番組「北野誠のおまえら行くな。」(エンタメ~テレ)の企画により大阪で事故物件に住みはじめ、これまで大阪、千葉、東京、沖縄など10軒の 事故物件に住む。日本各地の心霊スポットを巡り、インターネット配信も不定期に実施。事故物件で起きる不思議な話を中心に怪談イベントや怪談企画の番組など多数出演する。著書に「事故物件怪談
恐い間取り」「異界探訪記 恐い旅」「事故物件 恐い間取り2」(二見書房刊)がある。
STORY
売れない芸人が、「事故物件」に住んでみた―
芸人の山野ヤマメ(亀梨)は、中井大佐(瀬戸)とお笑いコンビ<ジョナサンズ>を組んでいたが、全く売れず、結成から10年目となり、これ以上続けても無理だと感じた中井から、コンビを解散し放送作家になると告げられる。
突然ピン芸人となり途方にくれるヤマメは、番組プロデューサーの松尾雄二(木下)からTV番組への出演を条件に「事故物件に住んでみろ」と無茶ぶりされ、殺人事件が起きた物件で暮らすことに。そこは一見普通の部屋だったが、初日の夜、撮影した映像には白い“何か”が映っていたり、音声が乱れたり、様々な怪奇現象が。
OAした番組は盛り上がり、ネタ欲しさにさらなる怪奇現象を求めるヤマメは、不動産屋の横水純子(江口)に新たな事故物件の紹介を依頼。その後も様々な怪奇現象に遭遇し、ヤマメは“事故物件住みます芸人”としてブレイクしていく。
一方、<ジョナサンズ>のファンで、メイクアシスタントの小坂梓(奈緒)は、人気が出るほど危険な状況に陥っていくヤマメを密かに心配する。だがレギュラー番組も決定したヤマメは、次なる事故物件を求めて再び不動産屋・横水の元を訪れる。
そしてある事故物件で、ヤマメの想像を絶する恐怖が待っていた―
映画『事故物件 恐い間取り』
2020年8月28日(金)全国公開
■原 作: 松原タニシ「事故物件怪談 恐い間取り」(二見書房刊)
■出 演: 亀梨和也
奈緒 瀬戸康史
江口のりこ MEGUMI 真魚 瀧川英次 木下ほうか
加藤諒 坂口涼太郎 中田クルミ 団長安田 クロちゃん バービー
宇野祥平 高田純次 小手伸也 / 有野晋哉・濱口優(友情出演)
■監 督: 中田秀夫
■脚 本: ブラジリィー・アン・山田
■音 楽: fox capture plan
■企画・配給: 松竹
■公式HP: movies.shochiku.co.jp/jikobukken-movie
■公式Twitter/Instagram: @jikobukken2020
©2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会
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