この日、第33回東京国際映画祭 特別招待上映の舞台挨拶に登壇したのは、W主演の柳楽優弥、田中泯とメガホンをとった橋本一監督、企画・脚本 河原れんの4名。
2020年2月に新たに刷新された新パスポートや2024年度から使用される千円札のデザインに採用されるなど、代表作「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」で日本のみならず世界的に有名な葛飾北斎。
2020年で生誕260周年を迎えた葛飾北斎は、19 世紀にヨーロッパでジャポニズムブームを巻き起こし、マネ、モネ、ゴッホ、ゴーギャンなど数々のアーティストに影響を与え、西洋近代絵画の源流となった。世界で最も有名な日本人で、米 LIFE 誌“この 1000 年で偉大な功績を残した 100 人”にも唯一の日本人として選ばれている。
その北斎の知られざる生涯を初めて描く映画『HOKUSAI』が2021年5月に公開されることが決定した。主人公となる葛飾北斎の青年期を演じた柳楽優弥と、老年期を演じた田中泯が、二人一役を務めている。
冒頭の挨拶
柳楽優弥「本日はお越しいただき、ありがとうございます。葛飾北斎役で最も興奮したことは、時代劇であるのに刀を使ったチャンバラのような殺陣をやるのではなく、アーティストを演じさせていただいたということです。これは本作の魅力のひとつだと思うので、楽しんでご覧いただきたいです」
田中泯「北斎の老年期の役ということで、自分もご覧の通りの年齢ですが、嘘偽りなく年齢を感じながら演じさせていただきました。本当に光栄な役でした。小さいころから北斎に触れることの多い人生でしたが、その北斎を身をもって演じることができたのは、この上ない幸せな撮影の日々でした。楽しんでご覧いただければと思います」
河原れん「北斎生誕260年という年ですが、北斎が生まれた江戸、東京というこの町の東京国際映画祭のクロージング作品に選んでいただいて光栄です。皆様に楽しんでご鑑賞いただければと思います」
橋本監督「一年以上も前に撮影して、ようやく皆様の前にお披露目できる日がきて嬉しいです。最高のスタッフ、キャストと共に作り上げた一本です。特にこの主演のお二人の”目”の素晴らしさには、カメラ越しに見ながら抱きしめたくなる時が何回もありました」
公開に際しての心境
柳楽優弥「僕自身、北斎の絵は知っていたのですが、北斎の人生についてはあまり多くのことを知らなかったんです。特に青年期の情報はあまり残されていないこともあり、僕たちの北斎像というものを監督と作り上げていきました。見ごたえのある作品にできたのではと思います。期待していただきたいです」
田中泯「この映画は撮影中から好きで、撮影が終わってから時間が経ちますが今でも好きな一本です。こんなにも世界中に知られている北斎ですが、この映画が語っていることを観ていただくことで、北斎が絵を描いた理由が少しは伝わるんじゃないかと思います。北斎もこのタイミングで観てもらうことで、喜んでくれているんじゃないかな」
多方面に影響を与えた北斎
葛飾北斎の人生や人物像については史実も少なく未だに謎に包まれているが、世界で最も有名な日本人として知られており、最近では『鬼滅の刃』の主人公が使う技、”水の呼吸”も北斎のあの波をイメージされている。
柳楽優弥「北斎が『鬼滅の刃』にも響いているなんて、すごいですよね。僕は俳優をやらせていただいていて、絵を描き続けた北斎とは少し違いますが、同世代の(東洲斎)写楽や(喜多川)歌麿ら当時のスター達が台頭していく中で、悔しいとか、もっと上手くなりたいという気持ちは、僕と同じなのではないかなと思いながら演じさせていただきました。北斎が何故そこまで”波”に感動し、こだわって描いていたのかという理由を撮影していく中で見つけたいなと思っていたのですが、撮影が近づいていくにつれて、北斎はこの波の絵に(で成功できなかったら)人生を諦めるくらいの覚悟と情熱を込めて、向き合っていたのでないかと思いました」
田中泯「北斎はすごい昔の人です。今の世の中にはいないし、産まれてきた環境も地球も今のようではなかった。ものすごく大きな時間の開きがあるのにも関わらず、世界中で皆さんが絵をみて何かを感じる。有名な名前だけが継承されていっているのではなく、絵を見たときにその凄さが向かってくるのが本当に羨ましいです。北斎は『こんな世の中、おかしい』、『もっといい世の中がないのかな』と口癖のように言う人でしたが、僕もその台詞にとても同調して、震えるように言葉を発することができて嬉しかったです。僕も子供のころから『なんで大人はああなんだろう?』、この年になっても『大人のせいかな?』と思ってしまうことがしばしばあるので、北斎と似ているのかもしれないですね。」
北斎を題材に映画化するにあたって
河原れん「葛飾北斎という人は、江戸時代に 90 年も生きた人で、そんな人の人生をわずか 2 時間にまとめるのは不可能な話なんです。90 回以上引っ越したとか、30 回以上名前を変えたとか、3 万枚以上の作品を残したとか、逸話は沢山ありますが、これをまとめるだけではただのダイジェスト映画になって面白くないなと思いました。そこで、本当に何を描きたいのかなと思ったときに、やはり北斎が描いた”絵”に焦点を当てて、どんな絵を描いたのか、その絵を描いたときに、北斎は誰と出逢い、どんな気づきがあったのだろうか、影響を受けた北斎の次の絵はどんな風に変わったのかと、私なりに考えながら作品を作り上げました。柳楽さんと田中さんのお言葉を聞いて改めて、北斎の”美しい不器用さ”を描きたかったんだなと感じました。きっとそういう一面があり、愚直に自分の作品を作り上げて、世に何かを伝えようとしていたんじゃないかなと思います。他にもこの作品に込めたメッセージや、今の時代にだからこそ見てほしいという意味も、ご鑑賞いただいて感じていただきたいです」
橋本監督「この映画を作る際に、なぜ北斎はここまで世界中で認められて、人気があるのか。特に波の絵は見ただけで沸き上がってくる気持ち、あのワクワク感はどうやって創り出したのかという答え探しを目標にしていました。ただその答えは僕自身も見出してないし、作品の中にも答えはないかもしれませんが、観ていただいた方はそれぞれの答えを感じとれるかと思います。そして言葉のない絵と同様に、日本語が分からない、言葉が分からない人が見ても伝わるような映画を目指しました」
最後にメッセージ
柳楽優弥「僕は 10 代のころから日本映画に関わらせていただいています。今、このような時期で気を付けるべきことは多いと思いますが、日本映画ファンとして、また皆さんに元気をお届けできるような俳優でありたいと思います。楽しんでください!」
田中泯「ヨーロッパやアメリカ、世界中で映画が見られていない状況の中で、今日これから上映されるということは本当に特別な時間を体験なさるということだと思います。是非、大切に観ていただき、そして正直な感想を持っていただきたいです。今は映画どころではないという人達が世界中にいるかと思いますが、作る側も夢中で作った映画です。是非、宜しくお願いします!」
イントロダクション
これは、抑圧に負けず、信念を貫いた絵師の傑作誕生秘話である。
時は江戸。表現者たちが幕府によって自由を奪われていた時代に、自分の道を貫き続け、世界を変えた一人の絵師がいた。
天才絵師、葛飾北斎である。ゴッホ、モネなど名だたるアーティストたちの脳髄を刺激し、世界に影響を与え続けた北斎。
その生き様とはいかなるものだったのか?およそ 200 年経った今もなお、色褪せることなく人々の心を掴んで離さない“あの波”誕生の瞬間とは?
常識に捉われずにに生きた北斎の、誰も知らない物語が今、明かされる。
STORY
腕は良いものの食うことすらままならない生活を送っていた北斎に、ある日、人気浮世絵版元(プロデューサー)蔦屋重三郎が目を付ける。
歌麿や写楽の台頭で自分の絵を見失う北斎だったが、重三郎の後押しによって唯一無二の独創性を手に入れ、その才能を開花させる。
そんな中、北斎の盟友で偽作者・柳亭種彦が、幕府の禁に触れ討たれたという報せが入る。信念を貫き散った友のため、怒りに打ち震える北斎が描いた命がけの作品とは・・・?
映画『HOKUSAI』
2021年5月TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
■出演:柳楽優弥 田中泯
玉木宏 瀧本美織 津田寛治 青木崇高
辻本祐樹 浦上晟周 芋生悠 河原れん 城桧吏
永山瑛太/阿部寛
■監督:橋本一
■企画・脚本:河原れん
■配給:S・D・P
©2020 HOKUSAI MOVIE
■公式サイト:www.hokusai2020.com
■公式SNS:@hokusai2020
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