この世界には、誰のためにあるのかわからないルールと、悪い冗談みたいなことばかりがあふれている。誰もが自身を偽り、まるで仮面の生活を強いられているかのように……。そんな、弱者ほど生きにくいこの時代に翻弄されている一組の母子がいた。
哀しみと怒りを心に秘めながらも、わが子への溢れんばかりの愛を抱えて気丈に振る舞う母。その母を気遣って日々の屈辱を耐え過ごす中学生の息子。果たして、彼女たちが最後の最後まで絶対に手放さなかったものとは何なのか。もがきながらも懸命に生きようとするその勇気と美しさに、心を揺さぶられ涙する。社会のゆがみがいよいよ表面化している現代なればこそ生まれ得た、激しくも深い魂の軌跡。あなた自身の現実、今日を生きる私たち自身の物語。
監督を務めたのは、『舟を編む』(13)、『ぼくたちの家族』(14)、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(17)など手掛けた監督・石井裕也。
そして物語の主人公となる多難の時代に逆風を受けながらも自身の信念の中でたくましく生きる母親・田中良子を、尾野真千子が演じる。
良子の13歳の息子・純平を演じるのは和田庵(『ミックス。』(2017))。
その純平が憧れを抱く良子の同僚・ケイを片山友希(『あの頃。』(21))が、そして、交通事故で命を落とす夫・陽一をオダギリジョー、良子とケイを見守る風俗店の店長を永瀬正敏が演じる。
監督、共演者が大絶賛する女優・尾野真千子の魅力とは!?
主人公・田中良子を演じた尾野真千子について
石井裕也監督
「田中良子役には尾野真千子さんしか考えられませんでした。芝居を本気でやることの崇高さ、俳優がうなされるほど考えて見せる芝居の熱量、その素晴らしさ。たとえば、普段の会話のときよりも、夢中になって芝居をしている尾野さんに僕は「尾野真千子」を感じます。その芝居に真実が見えてくる。誠実にお芝居をし ている人の姿は「祈り」のように見えるときがあります。こちらが引くくらいに演じる役を信じようとする。尾野さんのそんな姿は、僕に とってはそのまま希望につながるものでした」
息子・純平役を演じた和田庵
「撮影前、尾野さんには怖い人というイメージがあったけれど、実際はそんなことはなくて優しくて 明るくて面白い人でした。本当の親子のように接してくださって、僕も自然に演技ができました」
良子の同僚ケイ役を演じた片山友希
「撮影中は尾野さんの明るさには救われました。すごく包容力のある方で、共演のプレッシャーみたいなものを全然、感じさせないんです。きっと尾野さんは私ができるまで待ってくれたんだと思います。すごくありがたかったです。尾野さん、メチャクチャかっこいいです。尾野さんみたいになりたい」
交通事故で命を落とす夫・陽一役を演じたオダギリジョー
「もし陽一の存在が作品を通じて強く感じられているとしたら、それは尾野さんの表現力のおかげです。当たり前のことです が、それはもう尾野さんの底力ですし、そのすごさ、ですね」
風俗店の店長・中村役を演じた永瀬正敏
「尾野さんはいろんなものに立ち向かっていました。それでいて、現場ではみんなを包み込んでいた。良子さんのように「まあ 頑張りましょう」という感じで現場をハグされていましたね。コロナ禍という特別な状況下で作品を作っているという部分を含めて、とても見事で立派な主演の姿だったと思います。時に明るく、時に締めて。この作品をちゃんと背負っている感じがありました」
あらすじ
悪い冗談みたいなことばかり起きるこの世界で母ちゃんも、僕も、生きて、生きる。
1組の母と息子がいる。7年前、理不尽な交通事故で夫を亡くした母子。母の名前は田中良子。彼女は昔演劇をやっていた経験があり、お芝居が上手だ。中学生の息子・純平を ひとりで育て、夫への賠償金は受け取らず、施設入所している義父の面倒もみている。経営していたカフェはコロナ禍で破綻。花屋のバイトと夜の仕事の掛け持ちでも家計は苦 しく、そのせいで息子はいじめにあっている。数年振りに会った同級生にはふられた。社会的弱者―それがなんだというのだ。そう、この全てが良子の人生を熱くしていくのだか らー。はたして、彼女たちが最後の最後まで絶対に手放さなかったものとは?
映画『茜色に焼かれる』
5月21日(金)より全国公開
尾野真千子
和田 庵 片山友希 大塚ヒロタ 芹澤興人 笠原秀幸 泉澤祐希 前田 勝 コージ・トクダ
前田亜季 鶴見辰吾 嶋田久作 / オダギリジョー 永瀬正敏
監督・脚本・編集:石井裕也
製作:五老剛竹内力
ゼネラルプロデューサー:河村光庸
エグゼクティブプロデューサー:飯田雅裕
プロデューサー:永井拓郎 神保友香
共同プロデューサー:中島裕作 徳原重之 長井龍 『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ:朝日新聞社RIKIプロジェクト製作幹事:朝日新聞社
制作プロダクション:RIKIプロジェクト
配給:フィルムランド 朝日新聞社 スターサンズ 主題歌「ハートビート」/ GOING UNDER GROUND(ビクターエンタテインメント)
©2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ
2021年/日本/144分/カラー/シネマスコープ/5.1ch R-15+
公式サイト:akaneiro_movie.com