ノーベル文学賞受賞、ピュリッツァー賞4回受賞などの輝かしい功績を残した、アメリカ近代劇作家、ユージン・オニールの遺作となった『夜への長い旅路』。DISCOVER WORLD THEATRE の第10弾として6月7日(月)上演を迎えた。
オニール自身の青春時代における、凄惨な家族の姿を描いた自伝劇といわれ、彼の死後、妻によって発表され、4度目のピュリッツァー賞を獲得し、悲劇的な家族の歴史を、人間の真実を突く普遍のドラマに昇華させ、自らの人生に“赦し”を与えたオニールの代表作だ。
本作の演出を手掛けるのは、シアターコクーンでの舞台作りは5作目となるイギリス演劇界のトップランナー、フィリップ・ブリーン。人間を深く見つめ、物語を繊細に紡ぎ出すことで定評がある。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、イギリスより来日できなかったため、稽古は演出家と稽古場をリモートで繋いで実施となった。
ある家族の、夏のある一日の物語。心揺さぶる濃密な会話劇
世界中で繰り返し上演されている本作だが、キャストには、モルヒネ中毒に冒されて常に精神が不安定な母メアリーに大竹しのぶ、アルコールに溺れ、父親の脛をかじって放蕩を繰り返す長男ジェイミーに大倉忠義、結核を患っている次男エドマンドに杉野遥亮、アイルランド系移民で、金銭に対して異常な執着を持つ俳優の父ジェイムズ・タイロンに池田成志、一家の女中に土居志央梨の面々が顔を揃えた。
オニール家をほぼ忠実に再現したとされるタイロン家の、夏のある一日の物語。オニール自身が投影された次男エドマンドの視点のみならず、母、兄、父、家族 4 人の個々の内面が深く掘り下げられ、それぞれの抱える哀切や怒り、後悔や絶望、そして家族間の愛憎、確執が、巧みな会話で創られた家庭劇。
初日を迎えたキャストからコメントが到着した。
キャストコメント
大竹しのぶ(おおたけ・しのぶ) 1957年7月17日生まれ 東京都出身
ある日の稽古場で、画面越しに初舞台の(杉野)遥亮くんにアドバイスするフィリップの言葉を聞いて、気が付けば私が深く頷いていたり、稽古場最終日、稽古が終わり「まだまだダメだ」と落ち込む遥亮くんに「私も一緒だよ」と慰めていたら、それを見ていた大倉くんが「俺もだよ、どうしよう」と三人でため息を吐いていると、もうモニターを切ってもいいのにフィリップがまたマイクを ON にしてくれて「どうしたの?」と聞いてくれる。
6,000マイル離れていても、いつもそこにいてくれるんだと思えた瞬間でした。
思っていた以上に大変な戯曲であることが分かり、そして毎回のことですが、フィリップの戯曲の深い理解に感動しながら、稽古を重ねてきました。
それぞれが苦しみや、悲しみや絶望を感じていても、それぞれが大きな愛を持っている。だからこそ切なくて、そして美しい物語です。こんな状況の中でも来て下さることに、本当に感謝です。
大倉忠義(おおくら・ただよし) 1985年5月16日生まれ 大阪府出身
段々と家族のような絆が生まれていくような感覚を味わいながらも、馴れ合いではないプロの役者さん達の集中力で稽古が進んでいったことが思い出深いです。そして、稽古を経ても、まだまだこの戯曲の大きさ・深さに驚かされています。
愛憎劇という、なんでこんなに愛しているのに悲しいことばかり起こるのか...と思いながら演じています。こんな形の家族を見て、お客様へ何でもいいので何か宝物になるような経験を持って帰っていただけるように頑張りますので、どうぞ愛を持って見守ってください。
杉野遥亮(すぎの・ようすけ) 1995年9月18日生まれ 千葉県出身
皆さんと稽古をする中で、演技とは芸術で、俳優とは芸術家なんだと学ぶことができました。俳優や演技に対する自分の中の意識がガラッと変わりました。何もかも初めてのことで、こんなに長い時間役と向き合うことが今までになかったから、自分と役との境目がわからなくなったこともありました。自分がどこにいるのかわからない時もあって、これが役に向き合うということなのか・・・初舞台で毎日素敵な経験をさせていただいています。
劇場に入り初めて舞台上から客席を見た時はすごくワクワクして、もっともっと稽古をしたいという気持ちもあるけれど、早く観ていただきたいという気持ちも湧いてきました。物語はとても暗く、残酷にみえますが、そんな物語を今この時代に、この瞬間に上演することに意味があり、希望があると思っています。一緒に楽しんでください。
池田成志(いけだ・なるし) 1962年9月27日生まれ 福岡県出身
演出家と海を挟んだ遠く離れてのリモート稽古で、空気感などがお互いうまく伝わっていない部分もあったなとも感じていて、もっと稽古をしたかった...。
僕の役は、奥さんのモルヒネ中毒や、息子の病気という心配事が多いので、単純な苛立ちに感情をフォーカスしがちになってしまい、治る、きっとうまくいく、というような家族としての基本的な気持ちになかなかたどり着くことができなかった。作品を通して、家族って単純ではないんだな、難しいなと改めて感じました。
この作品は台本が分厚くてものすごい情報量です。身に染みたとか、わからないとか、ここが響いたとか、観てくださった方それぞれに、色々な感情がわいてくると思います。それだけ複雑な内容なんだと僕たちも実感しています。とても苦しくなると思うので、休憩中にいっぱい深呼吸してください(笑)。終わったら、少しだけ気が晴れるような作品にもなっていると思います。
STORY
1912年、夏のある日の朝。俳優ジェイムズ・タイロンの別荘の居間で、家族が朝食後の団欒を楽しんでいる。しかしその会話から徐々に明らかになるのは、彼らの実像、家族を覆う暗い陰である。父ジェイムズは異常な吝嗇家であり、母メアリーは麻薬の常習者、長男ジェイミーは酒と女にだらしない放蕩息子で、次男エドマンドは肺を病んでいる。メアリーは昔、幼い息子ユージンを亡くしたことで罪の意識にさいなまれていた。その後にエドマンドを出産し、産後の病気をきっかけにモルヒネ中毒に陥ってしまったのだ。家族の確執が次第にあぶり出されていく中、再びモルヒネに手を出したメアリーが幻覚に襲われ始めて......。
COCOON PRODUCTION 2021
DISCOVER WORLD THEATRE vol.10 『夜への長い旅路』
作:ユージン・オニール
演出:フィリップ・ブリーン
翻訳・台本:木内宏昌
美術・衣裳:マックス・ジョーンズ
出演:大竹しのぶ 大倉忠義 杉野遥亮 池田成志
土居志央梨
【東京公演】 2021 年 6 月 7 日(月)~7 月 4 日(日) Bunkamura シアターコクーン
【京都公演】 2021 年 7 月 9 日(金)~18 日(日) 京都劇場
【お問合せ】(東京) Bunkamura 03-3477-3244 www.bunkamura.co.jp/cocoon/
(京都)キョードーインフォメーション 0570-200-888 http://www.kyodo-osaka.co.jp
【企画・製作】 Bunkamura
【重要】緊急事態宣言延長に伴う「夜への長い旅路」公演の開催について
5月28日に発表されました東京都の緊急事態宣言延長に伴い、「夜への長い旅路」公演では、政府並びに東京都の
方針(※)に基づき、6月7日から6月20日までの公演につきまして、以下の通り公演を実施させていただきます。
※「基本的対処方針に基づく催物の開催制限、施設の使用制限等に係る留意事項等について」
https://corona.go.jp/news/pdf/ikoukikan_taiou_20210528.pdf
◎開演時間について
予定通りの開演時間にて実施いたします。
◎チケット販売について
緊急事態宣言延長期間中の 6月7日(月)〜6月 20日(日)15 公演につきましては、5月31日(月)18:00をもって、前売り券の販売を停止し、当日券の販売も中止いたします。
今後、政府並びに東京都の判断により状況に変更が生じた場合は、その指示に基づきご案内させていただきます。予めご了承ください。
弊社におきましては、新型コロナウイルス感染症対策を徹底し、お客様、出演者、運営スタッフならびに従業員の健康と安全の確保に努めてまいります。
ご来場のお客様におかれましても、引き続き安全な公演の実施に向け、ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。