上段左から:神宮寺勇太 中山美穂
下段左から:篠塚 勝 木村靖司 加藤 忍 渋谷はるか 佐藤みゆき 金井菜々
国内外で評価の高く全八編の短編戯曲から成る三島由紀夫の代表作「近代能楽集」。その中の『葵上』『弱法師』二編を東京と大阪で上演する。
三島由紀夫は、小説家としての活動にとどまらず、劇作家としても『鹿鳴館』や『サド侯爵夫人』など数多くの作品を生み出し、早くから謡曲にも親しんでいた。「近代能楽集」は【能楽の自由な空間と時間の処理や、露わな形而上学的主題などを、そのまま現代に生かすためにシチュエーションを現代化】したといわれる作品だ。能の物語を現代の設定へと落とし込みながら、現実世界を超越した能の幽玄さが違和感なく融合する独特の世界観が、 演劇的にも最大の魅力となっている。
その中の一編『葵上』は、「源氏物語」を原典に、能楽、そして近代劇へと移り変わりながらも時代を超えても変わることのない、嫉妬や欲望、情念など、心の内に秘められた闇を生々しくも幻想的に描いた作品。三島自身が「一番気に入っている」と語る魂魄の劇。
そして『弱法師』は終末観に腰を据えた青年が、いかに大人の世界に復讐するかを軸に、滑稽にも見える両親とのやり取りと、主人公がこの世の終わりを語る長台詞、現実的なもの全てに対する敗北を表す最後の台詞が印象的な作品。この二作品を連続上演する。
演出を担当するのは、ストレートプレイからミュージカル、近代古典など多方面にわたる作品を手掛け、確固たる演出力で作品を創り上げてきた宮田慶子。これまでトークイベントやリーディング形式の上演で「近代能楽集」の作品を紐解いてきた宮田が、この独特の作品世界をどう表現するのかにも注目したい。
本作で主演を務めるのは、舞台単独初主演かつ、ストレートプレイ初挑戦となるKing & Princeの神宮寺勇太。 神宮寺は19、20年に上演された『DREAM BOYS』で、主人公の親友でありライバル、そして病を抱える難しい役柄を見事に演じきり、好評を博した。『葵上』では美貌の青年・若林光役を演じ、『弱法師』では戦火で視力を失った二十歳の青年・俊徳役という、これまで数々の名優たちが演じてきた役に挑む。
共演には、2016年の『魔術』以来5年ぶりの舞台出演となる中山美穂が、『葵上』では光のかつての恋人・六条康子を、『弱法師』 では俊徳を救おうとする調停委員・桜間級子を演じる。
更に『葵上』には、佐藤みゆき、金井菜々、『弱法師』には篠塚 勝、木村靖司、加藤 忍、渋谷はるかといった個性豊かなキャストが揃った。
演出の宮田慶子、そして神宮寺勇太と中山美穂のコメントが届いた。
あらすじ
『葵上』
深夜の病院の一室。 若林光は入院する妻・葵の元を訪ねる。看護婦から、真夜中になると見舞いにやってくるブルジョア風の女のことを聞かされる。光が病室にいると、かつて光と恋仲であった六条康子が現れた。毎晩、葵を苦しめていたのは康子の生霊であった。康子の生霊は、再び光の愛を取り戻そうと昔の思い出を語り出す。次第に、光は葵のことを忘れそうになるが、葵のうめき声で我に返り、康子を拒絶する。康子の生霊は消えていったが・・・
『弱法師』
晩夏の午後。家庭裁判所の一室。2組の夫婦が、俊徳の親権を争っている。高安夫妻は俊徳の生みの親である。俊徳が戦火で両親とはぐれ、火で目を焼かれて失明し、物乞いをしていたところを川島夫妻に拾われた。それぞれに権利を主張するも、俊徳はそれを嘲笑し、育ての親は奴隷、生みの親は救いがたい馬鹿だと言い放つ。 平行線をたどる話し合いに業を煮やして、調停委員である桜間級子が俊徳と二人だけで話をすることになり・・・
【スタッフ・キャスト プロフィール・コメント】
【演出】宮田慶子 (みやた・けいこ)1957年7月7日生まれ
美しく格調高い台詞で織り上げられた三島由紀夫氏の戯曲は、同時に人間そのものに対する、冷徹で、時に辛辣なまでの深い洞察力に貫かれています。能の謡曲をもとに、その特色である「自由な空間と時間の処理」を生かして書かれた「近代能楽集」は、時を越 えてなお、その演劇的輝きを失いません。 『葵上』と『弱法師』は、どちらも魂の自立を求めて揺れ続ける青年がドラマティックに描かれます。一筋縄でいかないこの二人の青年 に、神宮寺勇太さんが挑戦します。純粋さと毒気を描き出してくださることを楽しみにしています。そして両作品を、魅力あふれる中山美穂さんが支えてくださいます。時空を行き交う、感性を揺さぶる舞台にしたいと思います。
プロフィール
1980年劇団青年座(文芸部)入団。83年青年座スタジオ公演『ひといきといき』の作・演出でデビュー。青年座公 演ほか、松竹、新国立劇場、ホリプロ、パルコ作品など創作劇、翻訳劇、ミュージカル、オペラと多方面にわたる 作品を手がける一方、演劇教育、日本各地での演劇振興、交流にも積極的に取り組んでいる。(社)日本劇団協 議会常務理事、日本演出者協会副理事長。2010年9月~2018年8月新国立劇場演劇芸術監督。2016年4月よ り新国立劇場演劇研修所所長。近年の主な演出作に『赤シャツ』(21)、『DNA』『北斎漫画』『クイーン・エリザベ ス』(19)、『消えていくなら朝』『砂塵のニケ』(18)、『同郷同年』『君が人生の時』『わが兄の弟』(17)、『月こうこう・ 風そうそう』『オーファンズ』(16)、『パッション』(15)などがある。主な受賞歴に、紀伊国屋演劇賞個人賞、芸術選 奨文部大臣新人賞、毎日芸術賞千田是也賞、読売演劇大賞最優秀演出家賞など。
【出演】神宮寺勇太(じんぐうじ・ゆうた)1997年10月30日生まれ
今回、初めて単独での主演舞台をやらせて頂く事を聞いた時、心臓のビクン!とする音が聞こえました。主演として舞台に立たせていただける喜びと、自分にどこまで出来るのかな?という思いが同時に駆け巡りました。ストレートプレイに挑戦させて頂くのも初めてですし、色んなことが初めてづくしな作品になります。 『葵上』と『弱法師』の2作品の役を演じる事は、決して簡単ではないと思いますが、この2つの作品を演じ切ることができた後に演じる事の楽しさや、表現の幅が広がっているように、全身全霊で稽古に臨みたいと思います!来ていただけるお客様に今まで見た事のない、神宮寺勇太を大放出したいと思いますので、よろしくお願いします!
プロフィール
2018年に“King & Prince”のメンバーとして「シンデレラガール」でCDデビュー。18年『部活、好きじゃなきゃダメですか?』(NTV)でドラ マ初主演を果たす。ほかテレビドラマや映画、バラエティ番組などに出演し、幅広く活躍。現在、出演ドラマ『准教授・高槻彰良の推察』(東海テレビ・WOWOW)が放送中。近年の主な出演作は、【舞台】『DREAM BOYS』(19、20-21)、『JOHNNYS’ IsLAND』(19)、 『JOHNNYS’ King & Prince IsLAND』『JOHNNYS’ Happy New Year IsLAND』(18)、【ドラマ】『准教授・高槻彰良の推察』(21・東海 テレビ・WOWOW )、『部活、好きじゃなきゃダメですか?』(18・NTV)、【映画】『うちの執事が言うことには』(19)など。
【出演】中山美穂(なかやま・みほ)1970年3月1日生まれ
長い芸能生活の中で、お芝居の舞台というのは1度しか経験が無く、正直不安でいっぱいです。古典文学から近代劇にされた三島作品2作ですから、尚更歴史の重みを感じています。人間の奥深い感情を、ストレートに演じることになると思うのですが、演出の宮田さん、キャストの皆さんと丁寧に思いを込めて演らせて頂きます。何より、足を運んで下さるお客様に満足頂ける『葵上』、『弱法師』をお 届け出来るよう、努めて参ります。よろしくお願いします。
1985年にテレビドラマで女優デビュー。同年歌手デビューも果たし、日本レコード大賞、ゴールデンアロー賞で最優秀新人賞を受賞するなど、歌手として絶大な人気を博す。また、主演映画『LOVE LETTER』(95)、『東京日和』(97)両作品の演技が高い評価を得て数多くの賞を受賞し、女優としても確固たる地位を築く。16年にはデビュー30年にして初舞台『魔術』に出演するなど、幅広いジャンルで 活躍している。近年の主な出演作は、【ドラマ】『ザ・ハイスクールヒーローズ』(21・EX)、『警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室 〜SEASON5』(21・TX)、『彼らを見ればわかること』(20・WOWOW)、【映画】『Last Letter』(20)、「108~海馬五郎の復讐と冒険~」 『愛唄-約束のナクヒト-』(19)、『蝶の眠り』『ママレード・ボーイ』(19)など。
『葵上』『弱法師』 -「近代能楽集」より-
作:三島由紀夫
演出:宮田慶子
出演:神宮寺勇太(King & Prince) 中山美穂
篠塚 勝 木村靖司 加藤 忍 渋谷はるか 佐藤みゆき 金井菜々
公式HP https://www.aoinoue-yoroboshi.com
【東京公演】
公演期間:2021年11月8日(月)〜28日(日)
公演スケジュール≪全25回公演≫
会場:東京グローブ座
チケット料金 :S席9,000円 A席8,000円 B席6,000円(全席指定・税込)※未就学児童入場不可
お問合せ:東京グローブ座 03-3366-4020
【大阪公演】
公演期間:2021年12月1日(水)〜5日(日)
公演スケジュール≪全7回公演≫
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
チケット料金:9,000円(全席指定・税込)※未就学児童入場不可
お問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888 (11:00〜16:00 ※日祝休業)
主催・企画製作:東京グローブ座